「それから」で親友の結婚相手を奪い取った代助。親から感動され働かなければならぬと決心したところで終わってました。
その続きが「門」。ただ,登場人物などはまったく別人となります。
この「門」の主人公は宗助。親友の奥さんを略奪婚した先には,幸せがあるのかという物語です。
親友の相手を奪い取ったということでは「こころ」があります。「こころ」は親友の死そして先生の死。それと比較するとこの「門」では,代助は何事につけても結論を先に延ばしていきます。とうとうよんどころない事情となり,寺の門をくぐることになります。しかし,そこでも。。。
死という結末をみないこの「門」ですが,その最後は
御米は障子の硝子に映る麗かな日影をすかして見て,
「本当に有難いわね,漸くの事春になって」と云って,晴れ晴れしい眉を張った。宗助は縁に出て長く延びた爪を剪りながら,
「うん,然し又じきに冬になるよ」と答えて,下を向いたまま鋏を動かしていた。
「それから」「門」とここのところ漱石の作品を続けて読んでみました。人の心の弱さということの描き方はすごいですね。
宗助と御米の二人つついてこう書いています。
彼等の生活は広さを失うと同時に,深さを増した。・・・・彼等は大きな水盤の表に滴たった二点の油の様なものであった。水を弾いて二つが一所に集まったと云うよりも水に弾かれた勢で,丸く寄り添った結果,離れる事が出来なくなったと評する方が適当であった。