デュマ・フィスの本名はアレクサンドル・デュマ。あの「三銃士」「モンテ・クリスト伯」の著者の息子。フィスは息子の意味だそうです。
前に読んだ「悪女入門」という本に紹介されていたものです。悪女とされるのがパリの高級娼婦マグリット。そのマグリットに恋してしまった青年アルマン。
ストーリーとしては「マノン・レスコー」と同じような流れです。物語の中でアルマンはマグリットにこの本をプレゼントします。
ただ,このマグリットは悪女ではありません。運命を狂わす女としてのファム・ファタルなのです。
読んでいてアルマンのうぶな言動は多少イラっときます。
欲望は尽きず,日々その欲望を満たし続けることが,生きることであり,魂はもはや巫女(みこ)として,恋の聖なる炎を維持する任を果たしているだけなのです。
マグリットはアルマンのために身を引き,やがて病死してしまいます。
後半は読んでいて悲しくなります。悲愛物語です。そして,物語は語り手のこの言葉で終わります。
もういちど言う。マルグリットの話は例外的なものだ。だが,それがありふれた物語だったら,わざわざこうして書き残す必要もないだろう。