「琥珀の夏」に続いて「闇祓」読みました。
この二作は,かつての辻村作品のように人間のダークな面を描いたもの。
僕は辻村作品の魅力の一つとして,きれいにまとまっていないところにあると思ってます。
人の醜い部分を描いている以上,それは美しい文章表現にしてしまったら,ダイナミックでなくなってしまいます。つつけば隙があるような表現こそがふさわしいと思います。
この本の帯には「あいつらが来ると,人が死ぬ 初の半角ホラーミステリー長編」とあります。
確かに登場する神原家は得体の知れない闇を振りまき死を呼び寄せるもので,それはホラーの部分でしょう。しかし,それは誰にでも忍び寄る悪魔の囁きです。その囁きを聞いてしったら,人は闇に落ちていきます。善意に基づく結果としての悪意。さしずめ同調圧力などはその一つでしょう。
そんな怖い物語です。
この本の表表紙裏に
ヤミーハラ【闇ハラ】
ヤミーハラスメント【闇ハラスメント】
という言葉の解説がのっています。
そして,最後のページには,それに
ヤミーハラカゾク【闇ハラ家族】
ヤミーハラ【闇祓】
とあります。
闇ハラを祓う闇祓の二つのことばが同音というところに怖さがあります。
祓うこと自体もハラスメントなんだという,救いがない世界。
辻村深月さん,怖い仕掛けですね。

僕としては,2021年終わり間近ですが,今年読んだ中では3本の指に入ります。