ビートニック・ジェネレーションの作家の一人であるブローティガンの代表作です。
ブローティガンらの前の世代のロスト・ジェネレーションの作家のヘミングウェイに「スペインの鱒釣り」というものをもじったようです。
僕が持ってるヘミングウェイの文庫の中には見つかりませんでした。ただ,釣りなどを扱ったヘミングウェイの作風と比べると,まったく違います。また,フォークナーの狩猟を扱った「熊」ともまったく違います。
自然との共生というより,自分の人間のあるがままに生きるというものです。
この本の表紙の写真の如くです。
この本の訳者の藤本和子さんは,ブローティガンとも知り合いで研究本なども書いておられるようです。この藤本さんの長い訳者あとがきで,こう書いています。
ブローティガンのことなは幻想的だ。幻想は,人工的に現実を完成させない,と思う。むしろそれは,現実を逆探知する回路なのだ。そして探知された現実は,わたしたちの思想を完結させるものとしてあるよりは,完結しがちなわたしたちの洞察を揺さぶるものとしてある。人工的に現実に終止符を打てると予定する想像力を敵にまわして,ブローティガンはアメリカを描いてみようとしたのだろう。かれの心を惹きつけたのは,アイデアではなく現実だった。現実に近づけば近づくほど,かれの語り口は幻想的になるようだ。
なんか難しいですが,ベトナム戦争終結間際のアメリカの現実。終止符を打てない現実。そんな現実を目の当たりして,ブローティガンは日常の現実を感じるままに書いていったんでしょう。