この本の副題であるソドムとゴモラは,旧約聖書において不道徳故に神に焼かれた街。
この物語の場合は,同性愛についてのことです。現在のLGBTの視点からすると,この本の評価は,ヨーロッパではどうなっているのか知りたいところですね。
再び避暑地のバルベックに戻った主人公の「私」。そこで,前回祖母と二人で訪れたことを思い出します。
われわれの心の総体というものは,いつなんどき考察しても,いかに心の豊かさをあれこれ教え上げても,ほとんど架空の価値しかもたない。あるときはこれこれの豊かさが,またあるときはべつの豊かさが,使わずにいるからだ。
・・・つまりはようやく祖母を見出したことによって,祖母を永久に失ったことを知ったからにほかならない。永久に失ったのだ。
・・・いや,ぬぐい去ることができないのは,むしろ私の心の苦しみなのだ。
なぜなら忘却は,否定以外のなにものでもなく,人生の真の瞬間を再創造できず,そのかわりに型どおりの愚にもつかぬイメージを提示するだけの,思考の衰退以外のなにものでもないからだ。
このような心のうちの記述は,プルーストは素晴らしいです。