訳者は柴田元幸さん。以前にも書きましたが,柴田さんの訳は僕は好きです。
そんな柴田さんが,この本を訳した時点で「これまで訳した中で最高の一冊」と言わしめた本です。
その通り,訳もいいですし,ダイベック自体も素敵です。
この本は,日曜日にFMで放送している小川洋子さんのPanasonic Melodious Libraryで,短編集であるこの本に収められている「冬のショパン」が以前に紹介されました。平野啓一郎さんの「葬送」を読んで以来,ショパンを聴くようになった僕は,それで読んでみました。
ハードボイルドな本です。。。 シカゴを舞台として,そこで生きる人々が語られています。
特に秀逸なのは,「夜鷹」ナイト・ホークスです。すごく,散文詩的です。巻末で,柴田さんが,ダイベックは詩人でもあり,ナイト・ホークスは,その詩を元にして書かれてると述べてました。
シカゴ,ナイト・ホークス というと,あれです。
エドワード・ホッパーの「ナイト・ホークス」です。僕の好きな絵。南佳孝さんもジャケットに使った絵
この絵のままに,物語にしてます。
もともと何かの影であったとしても,その何かとのつながりを断ち切ってしまった影たち。いまではもう,夢を見ている人間から逃げ出した夢のように,あたりを自由にさまよっている。
そんな影に満ちているシカゴ。ニュー・ヨークが「ビッグ・アップル」と言われるように,シカゴはWindyCity「風の街」というニックネームがあるのだそうです。
それから,ダイベックは,川端康成さんを敬愛してるようで,この本のいくつかは康成の「掌の小説」のショートショートに触発されてるということです。