周五郎と片岡義男の作品を読むことは,僕のライフワークみたいなものです。
前に読んだ周五郎の「虚空遍歴」に「人間の真価は何を為そうとしたかではなくて、何を為そうとしたかである」というロバート・ブラウニングの言葉が出てきて,この作品もそれに関するものということで読んでみました。
周五郎にしては珍しい現代もの。現代ものと言っても,戦中戦後で,財閥解体を背景にした物語。実際にあった三井財閥で起こった事件をもとにして書かれたものだそうです。
登場人物は,山本周五郎を想像させる山本周平を始め,小滝(尾崎士郎)室生獏星(犀星)などなど あと知らない人ばっかだったんで 省きますが,実存した人物を連想させる人々が出てきます。
物語は日本最大の財閥,御池家の庶子である康彦が,財閥解体の中で別人にしたてられ,財閥生き残りのため戸籍も変えられ別人にされた上に殺されそうになる。彼を救うのは,御池家に仕えていた運転手夫婦の娘の夏子。ただ,夏子の母は,その当時の当主と康彦とに深い関係があった。
エンディングは,周五郎らしいハッピーエンド的な終わり方です。