この本は、決して 大野君が登場する話ではありません。
頭の中にある鍵がかかった部屋。
ポール・オースターのニューヨーク三部作の最後の作品。前二作がけっこう前衛的だったんで、今回は、どのような展開になるか・・・
今回は、幼馴染のファンショーが姿を消し、主人公の「僕」が彼の美しい妻から探してほしいという依頼を受けるところから始まる。ファンショーは、たくさんの著作を残しており、批評家であった「僕」は、彼の妻への思いもあり、出版に携わる。そして、消息不明のファンショーから、「僕」の元に突然手紙が届く。やがて、「僕」とファンショーの妻は結婚する。「僕」ファンショーの伝記を書くことになり、ファンショーの行方を追うのだが。。。このあたりから、少々、「僕」の意識は揺らいでいくので、どういう展開になるか・・・ でした
前の二作と比較して、割と読みやすい内容です。

何ものも僕たちをつかまえることができないほど、遠く、深く落ちていったということになるだろう。これもまた比喩にすぎない。でもおそらく比喩でかまわないのだ。僕がそれについて語ることができようができまいが、実際に起きたことの真実さが変わるわけではないからだ。要するに、そのときのキスはいままでのキスとはまったく違っていた。

ポール・オースターの文章表現が好きです。訳者の柴田元幸さんの訳が分かりやすいからかな。