このシリーズ3作目。待っていた文庫本がやっと出たので買った。なぜ、文庫本かというとハードカバーと表紙の絵が違うから。文庫本のマツリカさんの方が、物語に登場するマツリカさんのイメージに合うだよね。
主人公の柴山佑樹に対し、ツンデレに接するんだけど、それが魅力的。
柴山佑樹は、マツリカさんに亡き姉のイメージも重ねている。
で、僕は、ひょっとかしたら、マツリカさんは、柴山のイメージの産物で、実存しないのではないか、と先の2作では思ってたんだけど。。。
この作品では、マツリカさん 柴山と会う廃墟から飛び出し、とうとう皆の目の前に姿を現す。あっ、マツリカさん 本当にいたんだ! と僕は叫びそうになった。なんか、小中学生の感想文みたいだけど。。。
今回は、短編集ではなく、長編。密室殺トルソー事件が起き、過去の事件と併せて、二重密室ミステリ。
著者の相沢さんは、鮎川哲也賞を受賞してるほどのミステリ作家さん。とうとう、本屋大賞の候補作にあがっている「medium」で、殺人を犯してしまったわけだけど。今回も、ある意味、殺人事件じゃないので、トルソーが密室で発見されるという謎を解いていく。
「語られなかった言葉を探している」
このフレーズ好き。僕は、このシリーズを自分のことと関連付けて読んでいる。
「思い出に、囚われてはいけないわ。それはおまえを縛り付けて、同時に前へ進ませることもするのでしょう。けれど、いつまでも囚われ続けていたら、それは呪いになってしまう」
「幸せだった思い出を、呪ってはいけないわ」
「わたしが、それを祝福に変えてあげましょう」
「言ったでしょう。命題として共に考えてあげるとー。おまえのその渇望は、おまえを成長させてきた。だから、思い出は呪いにせず、美しい祝福として胸に刻みなさい。なにも証明する必要はないわ。おまえは、ここにいる。おまえの価値は、わたしが知っているのだから」
なにも証明する必要はない。
過去を悔やんで、過去に囚われて。
自分にだって、生きている意味があるはずなんだと。
身体を折り曲げ、嗚咽を漏らしながら生きる必要なんて、きっとどこにもない。
一人では、どうしようもなくなったときがきたら、声を聞かしてほしい。それは羞恥や悪意に隠されて、どこかしら怪談めいた謎になってしまうかもしれない。それでも、大切な人が声を上げたのなら、懸命に耳を傾けて、絶対に聞き逃すことはしないから。
まだまだ、マツリカさんは謎に満ちた人だ・・・