2年後の制度改正がどのような方向で行われるのか。1月21日に開催された介護保険部会から、見通しを探ってみます。すでに述べましたが、今回の制度改正には2つの大きな前提があります。一つは、社会保障制度改革推進法が、制度改革への大きな枠組みになっていること。もう一つは、同法によって設置された社会保障制度改革国民会議での議論が、介護保険部会の議論を実質的に左右する点です。

その国民会議で掲げられている「介護施策」に関する方針に目を移してみます。まず注目したいのは以下の点です。「医療の課題と介護の課題を一体として議論すべき」としたうえで、例えば自己負担について「医療ではすでに3割負担になっていることを踏まえ、介護でも一定以上所得者の自己負担の議論を進めるべき」という文言が見られます。これは、一定以上所得者の自己負担を引き上げるというだけでなく、介護保険のあり方を医療保険と統合していくという流れが見て取れます。

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ここで国民会議の検討項目にあがっている2つのキーワード、「介護サービスの範囲の適正化」と「介護サービスの効率化および重点化」を絡めたとき、どのような方向が浮かび上がってくるでしょうか。前回改正でも、介護保険が医療に引っ張られる形で「療養保険」化しつつある点を指摘しました。その方向がさらに色濃くなることが予想されるわけです。

そのうえで、今回の介護保険部会で提示されている「介護分野の課題」をチェックしてみます。今後の方向性における「介護給付の重点化・効率化」の部分では、最初に検討事項として上がっているのが、「軽度者に対する給付の重点化」であり、具体的には「予防給付の内容・方法の見直し」となっています。

「軽度者の給付見直し」というテーマは前回の改正でもたびたび上がっていました。例えば、予防給付の対象である要支援者を介護保険から外すといった議論は、再び浮上する可能性が高いといえます。加えて、「介護保険の療養ニーズへの特化」が強調されるなら、要介護認定の審査基準も、医療にかかる情報が今まで以上に重視される可能性があります。

つまり、要介護認定において、「している生活の機能」よりも「提供されている医療・看護の状況」が、より強調される方向が垣間見えるわけです。このことは、ケアマネジメントのあり方にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。あり方検討会で提示された新プラン様式案への現場からの意見でも、課題抽出シートの「予後予測」という名称が「医療を連想させる」という声があがっています。

ケアマネジメントでは、「している生活」の先にある「その人の社会参加の姿」の方向を見出すことが重要な流れです。この部分について、「提供されている医療・看護の状況」から「予後予測のビジョン」へとつなげる流れが強化される可能性はないでしょうか。仮にその流れが強まれば、ケアマネが利用者を見るべきポイントも微妙に変わりかねません。

国民会議では、「単に生活保障を削るのではなく、老後の暮らしの質を良くする観点から医療と介護をどう連携させるか」という方針も示されています。ここでは「生活を見る」という視点は維持されるように思われますが、注意したいのは「単に生活保障を削るのではなく」という文言には、すでに「重視すべき生活ニーズを絞りこむ」という前提が垣間見えることです。見方によっては、療養ケアを前提とした「狭い意味での生活の質」を指しているようにも見てとれます。

介護の概念そのものが大きく変えられていく──そんな鳴動が少しずつ高まっています。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)