里山と熊鈴と私(東黒森山・山形県山辺町) | 里山と熊鈴と私

里山と熊鈴と私

朝寝坊と山を愛するあなたへ。日帰り、午後のゆるゆる登山。

 本当は、白鷹山(994m)へ行こうと思っていたのだ。

 だけど、県民の森を抜けたあたりで、立て看板があり、白鷹山は登山道が崩落し、頂上まで行けませんとのこと。(現在は復旧済みです)

 

 あらま。そんなこと、知る由もなく。

 仕方がなく、その隣の東黒森山(766m)に登ることにする。

 

 ものすごく良い天気である。

 台風10号が北上しつつあって、その影響なのかもしれない。まだ、風が強くなってはいない。

 

 途中、ポッコリお山が2つ並び、手前の田んぼと何とも言えない、「正しい日本の田舎」を体現している景色があって、思わず車を止めて見入ってしまった。

 県民の森中央広場には、家族連れ、そしてバイクツーリストの姿がちらほら。

 やたら沢山あるトイレ。なるべく木陰に駐車し、そそくさと準備を済まて、大沼の方向へ歩きだす。13:02。

 湖面の向こうにポッコリした東黒森山が見える。わが県で言えば、薬莱山(553m)くらいの位置づけなのかもしれない。

 えーと、車道を右に折れて、みこくぼ林道に入る。

 程なく西登山口着、13:16。

 わあ、登りやすい道。小さなお子様でも楽々、登れるでしょう。

 今日の脳内BGMは、コリーヌ・ベイリー・レイ(Corinne Bailey Rae)のファーストアルバム、その名も『Corinne Bailey Rae』。井森美幸のファーストアルバム、『井森美幸』みたいなもんか。

 

 しかし、このアンニュイな歌声。「すいません。寝坊しました。」って、定時を過ぎてから電話を寄こす、某女子社員並みの気だるさ。

 

 これ、ジャンル的にホントにソウルなのかな、ってくらい、オーガニックで温度が低い。「さとり世代」って、こういうことか。って思っていると、ようやく、3曲目の「Put Your Records On」や「Trouble Sleeping」のサビでチラチラと、ソウルの炎が灯り始めるのが、良い。

 

 山の話でしたね(笑)。

 

 木の葉でふかふかしていた山道は、段々石混じりになる。つづれ坂を何度か折り返していたら、あれっ?と思うくらい、あっさり頂上に。13:34。

 

 ふーむ。眺望は、・・・ない。

 ガイドブックによると、立派な展望台があるはずなのだが、どこにも見当たらない。

 木製の小屋はあるのだが…。後で調べたら、破損したため撤去されたようだ。

 茂みの間に、コンクリの土台が残るばかり。今日、2回目のがっかりである。

 

 もう、山頂滞在時間1分程度で、下山開始。直進して、東登山口方面に。

 これまた、全く危険のない道で安心である。ところどころ、それこそ薬莱山ばりに木製の立派な階段がついている。

 

 13:50、家族広場の看板が見え、登山口着。

 結局、無補給・無休憩でひと山歩いてしまった。

 そのくらいカジュアルなお山である。

 

 ここは、みこくぼ沼っていう沼のほとりが整備されていて、休憩所やトイレなんかがある。

 じつに見事に整備されていて、気持ちの良いところである。

 幼い子を連れた若い夫婦が、のんびり過ごしていた。

 他には誰もいない。

 

 邪魔しないように、静かに沼のほとりまで降りてみる。

 沼を反時計回りに巡る道もあるようだが、誰も歩かないようで、茂みが濃い。

 あきらめて反対方向に。

 

 誰もいない。大沼に比べ、実に静か。良いところである。

 日差しは強く、ミンミンゼミの声が喧しい。

 

 林道に出て、このまま歩けば大沼方面に出ると思っていたのだが。

 10分程度歩いたところで、あら?何かおかしい。

 

 グーグル先生に聞いたところ、このまま歩いても沼方面に行けなくもないが、とんでもなく遠回りである。仕方なく、来た道を戻る。今日3度目のがっかり。

 

 なつかしい、みこくぼ沼まで戻り、ちょっと休憩。木陰のベンチで遅い昼食。

 そういえば、あんまりがっかりしたんで、頂上で昼食を食べるのをとんと忘れていたのだった。

 さっき、途中のカワチで仕入れたウーロン茶でのどを潤す。

 

 標識に従い、沼の右側にある山道をちょっと登って、井守沼方面へ。

 途中、大沼を周回する舗装道路に出る。

 オッチャンがほとりでワゴンの脇にテーブルを並べ、静かに涼んでいた。

 

 と、「展望台」なる看板に誘われる。再び山道に入り、しばし登る。

 踏み跡はあるのだが、道の真ん中に蜘蛛の巣が張っていて、しばらく人は歩いていない様子。

 

 途中、道は2手に分かれていて、完全に勘で右の道を選ぶ。

 どうやら正解だったようで、20分弱で、展望台、着。

 展望台…。木製の展望台があるのだが、老朽化のためか使用禁止。それに、周囲の木立が元気に育っていて、たとえ登れたところで、十分な展望は望めなかっただろう。

 今日、4度目のがっかり。今日は万事、この調子か。

 

 こんな、素晴らしく気持ちの良いホリデーにしては、人影はさほどでもない。

 もはや、県民の森なんていうのは、オワコンなのかもしれない。

 

 考えてみれば、県民の森とか、少年自然の家なんていうのは、小学校高学年の時に、義務的に合宿させられて、いつ果てるとも知れぬオリエンテーション、生木を燃しちゃったんで目鼻を直撃する大量の煙、たいして仲の良くない奴と組まされて作らされるしょっぱいカレー、軍隊なみにやたらと厳重に指導される布団の畳み方、などなど、どちらかというと、二度と来たくない、そんな場所なのではなかろうか。

 

 そこに現れて、喜んで山道を行ったり来たりしている、県外ナンバーのオジサン1名。山形県民には、たいそう奇妙な存在に映ったかもしれなかった。

 

 しきりに井守沼広場への案内看板が誘うもので、右に折れてちょっと向かってみる。

 だけど、どうしても沼の姿は発見できなかった。

 

 その代わり、この道からの大沼、そしてその向こうの山の姿があまりにも美しく。寄り道してよかった。

 サイクリングロードを歩く。歩いてよいのか、良く分からないが、他に道が見当たらない。

 

 誰も走っていないし。この道も、かなり厚く苔むしていて、滑る。ここをチャリンコが走るのは、かなり危険なんじゃないかなあ、と思わせる。

 

 16:04、大沼神社着。まずはお参りを済ませ、左側に湖畔に降りられるところがあるようだ。ブロック塀の下に、湖面ギリギリまで降りられる足場を見つけ、ソロソロと。スマホ、あるいは自らを湖中に投下しないよう、慎重に進む。これ以上、「がっかり」はしたくないものである。

 

 ふーむ。ここからの景色も美しい。

 すでに傾いた日差しが、キラキラ湖面に光をまき散らす。

 しずかだ。

 

 なんだか調子が狂っちゃったことが多い旅であった。でも、青空と水、緑が織りなす「美」を堪能できたので、まあ、よしとしましょう。

 

 山形側でもう1泊しようかとも思ったけれど、台風の影響がちょっと気になるし、第一、くたびれた。このまま、おとなしく関山峠を戻ることにいたしましょう。

(2020.9.6)