佐々木俊尚氏著「ヒルズな人たち~IT業界びっくり紳士録」読了。
ホリエモン、楽天の三木谷氏、ご存知奥菜恵の旦那の藤田晋氏、yahooの孫さんなど、いわゆる勝ち組IT業界社長の面々。
光通信(重田氏)やらクレイフィッシュ(松島氏)などの時代の寵児ともてはやされつつ、ひっそりと消えていった初期の起業家のまだまだ終わるわけにはいかない泥まみれのリベンジマッチ。
はたまた、前述の藤田晋氏のサイバーエージェントを大出資者として支えたUSENの宇野氏。ホリエモンに自分の会社を高値で売り払いミリオネアになった今、大真面目に宇宙に行くため仕事を一時中断している榎本氏。在日韓国人として差別やアイデンティティの確立に苦しみ抜き、だからこそ人との本当のコミュニケーションを求め続けるオーケーウェブの兼元氏などなど。
いわゆるひとつのIT業界「ヒルズな人たち」のジェットコース人生を追った渾身の書き下ろし作である。
一夜にして長者に、また一夜にしてホームレスに。
激しい人生ゲームのボード上に乗ってしまった男の人生はかくも激しくかくも厳しいものか。
ネット起業家たちには2つの世代に大きく分けられる。
1つはバブルを謳歌した1960年代生まれ。
当時、その享楽的な姿勢はやや揶揄的に「新人類」と呼ばれたそうだ。
三木谷、孫、宇野、重田などの世代だ。
もう1つは1970年代前半の団塊ジュニア世代。
浅田彰が「しらけつつノリ、ノリつつしらける」と命名したまさに私たちの世代。
ホリエモン、藤田、榎本、松島がこの世代にあたる。
私たちの世代は就職期、まさに過渡期だった。
就職氷河期と言われたものの、必死で内定をつかみ、一流企業と言われる会社にうまくもぐりこみ、うまく上に取り入ったり、かわいがられたりした者もいた。しかし自らの会社人生はどこまでいってもグレーであることはすぐに分かった。ポストは限りなく少なく、そのパイの奪い合いに激しく疲弊させられた。
就職氷河期の荒波に挑む気力もわかず、戦わずしてフィールドを降りた者もいた。
「小さくまとまりたくない」が彼のお得意のフレーズだった。
30代となった彼は今、小さくまとまらなかった自分をどう思っているのか。
どうにもこうにも”小さくまとまる”しかない現状に苛立ち、そこに光明のように浮かび上がったインターネットの可能性に賭け、先達がいない業界、すなわち自らが先達となれる業界に背水の陣で飛び込んだ男達がいた。
それがヒルズな人たち、だ。
ヒルズな人たちの後ろには、おそらく失敗し全てを失った挑戦者がその何百倍もいるに違いない。
我々は、60年代のバブリーな享楽的な世代にひそかに憧れ、そして「何かになれること」を期待し、そして裏切られ、「何かに期待すること」をやめた世代。期待するだけ無駄だと知ってしまった世代。
我々の下の世代は多分、最初から何も期待してない世代なんだろうな、と思う。
この本の筆者の佐々木さんは毎日新聞の記者を経て、アスキーの記者に転じたあとフリーのジャーナリストへ。1961年生まれ。
今、ジェットコースター人生は「ヒルズな人たち」のだけのものではなくなった。
一流企業と思っていた企業が一夜で傾き、青い顔をした男女が町に溢れる。
望むと望まざるとに関わらず誰も彼もがジェットコースター人生。
ニッポンはまたいつか、牧歌的で温かい心が溢れる社会に戻れるのだろうか・・・。
ヒルズな人たち―IT業界ビックリ紳士録