「副隊長、よろしいですか?」
「うん、鷹宮、どーぞ」
春の近付いた頃。
珍しい事でもない、いつもの当り前の三席鷹宮の訪れ。
「失礼致します。人事の件でご相談がありまして」
「もうそんな時期よね。今年は希望者は居た?」
院を卒業する新卒の死神達が。
希望を提出する季節。
昨年は希望者は十三人。
優秀な新卒が、隊長不在のうちにしては入ってくれた。
宇治も一昨年、十番隊に来てくれたけど。
隊長が不在だから今もまだ無席。
それでもよく頑張ってくれてる。
本当に優秀な子で、人当たりも良いし優しいし。
そして真面目だわ。
宇治と一緒に十番隊に配属された宿利って子も。
無席だけど、いきなり席官になっても大丈夫な素質を持ってる。
宇治と同じように、班首として隊士達を纏めてくれてるし。
他にも八人の新卒隊士が配属されたけど。
皆、真面目で優しい良い子達だわ。
希望者は全員、無条件で受け入れるってわけでもなくて。
席官、とは言ってもうちはまだ二人しか居ないけど。
鷹宮と大鋸の御眼鏡に適った子だけが、あたしへと報告される。
勿論、全員の経歴書はあたしが一番先に目を通すけど。
十番隊基準はとてつもなく厳しいから。
鷹宮と大鋸が可としないと、難しい面もある。
昨年は高部、須佐って子が席官候補になりそうな力量を持った子で。
他の十一人も無事に配属された。
どんな基準で選ぶのか疑問なとこもあるんだけど。
二人の御眼鏡に適っただけあって、全員がとにかく真面目。
しかも真面目なだけじゃなくて明るくて良い子。
二人の目は確かだわ。
今年は、多分、冬獅郎が希望を出してくれてるはずなんだけど。
一番隊の席官に配属せよって総隊長から直々に命令が下ったらしい。
それを聞いて、あたしはとにかくガッカリしたんだけど。
一番隊に新卒で配属って、それだけで将来をどれだけ有望視されてるか解る。
宇治も、一番隊に配属される話を蹴飛ばしてうちに来た。
彼の場合は貴族出身だから許されただろうけど。
冬獅郎の場合は難しいかもね…。
優秀過ぎて、総隊長が許可しそうにない。
「今年は例年より多く、三十五名でございます」
「…何があったわけ?多くない?」
毎年、十人から十五人の間だわ。
隊首不在の隊は、滅多に討伐要請が入らないし。
入ったとしても、背後に控えてくれる安心出来る存在がないのは痛い。
あたしは副官の中では強い方でも、隊首には遠く及ばない。
鷹宮も大鋸も副隊長レベルの強さだけど。
隊首不在の穴は、三人でも埋められない大きな穴。
そんな隊に三十五人も配属希望が出るなんて。
理由がないとまずおかしい。
「どうしても十番隊に所属したいと願書には書かれておりますが、理由は副隊長の下で働きたいとしか書かれておりません」
「あたし?」
講師にもあれから一度も呼ばれてないし。
今年卒業の院生の中で、知り合いになった子は居ない。
知ってる院生は冬獅郎だけだもの。
「我々の選考基準でお伝えさせて頂きますならば、全員問題はございません」
「三十五人全員?」
どんな選考基準なんだろ。
「ねえ鷹宮、一番重要な選考基準って何なの?」
一度聞いてみたいとは思ってたのよね。
間違いがないから、今まで聞かなかったけど。
「副隊長を心からお慕い出来てお仕え出来るかどうかが最重要基準でございます」
お茶飲んでたら噴出してたわ……。
お慕いって…。
「不埒な意味ではござません。命を懸けてお守りし、お仕えする事が出来るかどうかでございます」
「あ、そー言う…」
あー、ビックリした。
ファンクラブじゃないんだから、そんな理由で入れる隊ってイヤだわ。
でも、鷹宮と大鋸だものね。
来客でさえ厳しいんだから、新卒の選考はもっと厳しいはず。
続
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こうして異様な隊士達がどんどこ増えて行くわけです。