俺らが驚いて発した短い問いの声に。
 父さんはキョトリとしてる。


「……何だよ。小せぇ頃から言ってたじゃねぇか。結婚するんだって」


 父さん頭大丈夫か?


「クソチビ、声に出てんぞ」


 やべ。


「……ガキん頃の戯言真に受けんなよ……」


 本気だったが。
 今でも許されるなら。
 気持ちは変わらないけど。
 そうは言えない…よな?


「何だよ、冗談だったのか?あいつとも、やっぱりなと言ってたんだが……」


 あいつって、母さんだよなぁ……。

 そう言えば、いつも黙って頷いてたな。
 反対なんかしなかった。
 ガキ特有の、身近なもんに言う戯言だと。
 思ってんだろうと解釈してたが。
 どうも違うようだ。

 まさか、真に受けてたのか?
 まさか、な。


「違ったのか……」


 何で残念そうだ?


「あー…父さん、姉弟は結婚出来ないって、知ってる…よな?」


 父さんは無茶苦茶博識だ。
 天才と言って、言い過ぎじゃない。
 俺もそうは呼ばれるが。
 父さんには全く敵わない。

 世界中の言語を自在に操り。
 記憶力も抜群に良い。
 知識は広く深く。
 何だって知ってる。

 化け物みてぇな頭脳の持ち主だ。
 なのに父さんは。
 こんな初歩的な常識に。
 「マジか?」と驚いて、固まってる。


「あー……双子でもか?」

「そりゃそーだろ」


 ……まさか知らないとかか?
 姉弟はマズイのに双子なら良いとか有り得んだろ。
 何か?
 頭良すぎんのに、世間の常識に疎いってオチか?
 父さん、頭大丈夫か?


「お父さん、頭大丈夫?」

「チビ乱までもかっ。つーか、チビ。またお前も漏れてんぞ」


 漏れもするってんだ。
 疎過ぎだろ。


「第三親等内の婚姻は認められてない。常識内の法律だぞ?」

「知るか、げ…日本の小せぇ法律なんざ」


 日本人だろっっ!?
 げ、って何だよっ!?

 しかも小さくねぇしっ。


「そうか……まずったな……」


 おいおい、それこそマジか?
 黙ってた方が良かったんじゃないのか……。
 俺らの悩みは一気に半減しただろうに。
 言っちまった後だよ。

 今更、冗談とも言えん。

 父さんは顎に手をあてて。
 暫くじっと考え込んでた。


「……しまった……」


 などとポツリ。
 戸籍を届ける時に解ってればな…とまで言う。
 もしかしてと期待するだろ?


「俺ら……実は父さんと母さんのそれぞれの連れ子とか、か?」


 こんだけソックリなんだ。
 父さんと俺は、母さんと乱菊は。
 間違いなく血が繋がってるはずだ。
 残る希望は、連れ子か?

 だが、かなり昔から互いに片想いし合ってて。
 大恋愛の果てに結婚したと聞いた事あるからな。

 しかも十七と十八ん時の子供だ。
 いつ、連れ子を作る余裕がある?
 連れ子同士の可能性は極端に薄いが。
 取り合えず、聞いてみよう。

 あれ?
 結婚する前から上司と部下だった…よな?
 一体、いつ。
 父さんは母さんに、仕事を勧誘されたんだ?

 いや、それより重要なのは連れ子同士か、否か、だ。
 超小せぇ…赤ん坊の時から、写真には俺ら揃って写ってるから。
 どうにも有り得ないとは思うが、一応聞くだろ。


「ンなわけあるかっ。チビ、お前な、それ母さんに言ったら、目ん玉飛び出るほど、殴られっぞ」


 遠慮したい……死ぬ。


「あらあら、殴るなんて物騒ですねぇ……何の話ですか?」

「お母さんっっ!!」


 乱菊が久しぶりに会う、優しさの溢れるその姿に。
 すごい勢いで飛びついた。

 すっごい羨ましい光景だなぁ、おい……。
 ボヨーンと、大きな乳同士がぶつかってる。


「おい、おい、その間に入りてぇな」


 やっぱ俺……こん人の息子だ……。
 発想が一緒だよ。
 チクショー。


「何を言ってるんですか、隊長。ちゃんと伝えました?この子達に」


 しっかり乱菊を受け止めて。
 俺へと柔らかく、母さんは微笑んだ。
 二人とも、また大きくなったわね、と。
 柔らかい声と一緒に。


「一応な」


 父さんは驚いててそれどころじゃなかったと。
 肩を竦めてた。
 帰って来たは良いが。
 また直ぐに仕事に戻る事を、二人は言ってるみたいだ。


「ごめんね、ラン、シロ…久しぶりにあんた達とゆっくり出来ると思ってたんだけど……」


 ふぅ…と。
 母さんの吐息は重たかった。


「お母さん、疲れてるんじゃないの?」


 乱菊が心配気に聞く。


「総隊長がねぇ、人使いが荒くてねぇ……」


 それって、父さんの事だよな?


「俺だってチビチビ達と、たまにはノンビリしてぇってんだっ」

「だからっ、昨日の内に来ましょうって言ったじゃありませんかっ!無茶苦茶するからっ」

「久々の休みの前日にはまず何よりも最優先だろがっ」

「限度ってものがあるでしょっ!」

「あるわけねぇだろっ」


 結局、休みが休みじゃなくなったらしいってのは解る。
 夫婦で白熱して言い合ってるが……一体、何の話だ?










 続
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 ラブラブです…親も。笑