頭が。
 全く働いてなかった。


「あたしを……刺した……隊長が……?」


 ならば、あの態度。

 あたしを心配して。
 謝っていた。

 すまない、すまない、と。
 何度も。

 あの、強気な隊長が。


「嘘……」


 何度思い返しても。
 脳裏に浮かぶのは、刺された雛森の姿。

 隊長は悲鳴のように叫んで……。

 あたしじゃない。
 あたしじゃなかった。

 現に今も傷が治らず。
 十二番隊で治療を受けてるのは雛森。
 藍染と思って刺した者は。
 藍染ではなかった。

 雛森だったのに。
 あたしに見えたなんて…そんな事が有り得るんだろうか。

 でも、卯ノ花隊長の言葉が。
 偽りにも思えない。


「あたし……」


 どうしたら良いのかが。
 もう解らなかった。

 隊長のあの言葉が辛くて。
 あんなにも、雛森を大切にしていたのだと。
 思い知らされた。

 散って逝くギンの、最期の希望さえ。
 叶えてあげれずに。
 隊長の言葉に傷付いて。
 隊長の事しか考えてなかった。

 あれほど酷い裏切りはない。
 あたしの為にギンはあんなに必死に。
 ひたむきに、命を使って。

 そんな事を望んでなんかいなかったのに。
 あたしの為にだけ生きて。

 なのに、隊長の事しか。
 あたしは考えてなかった。
 ギンの最期の瞬間ですら。


「隊長……」


 呼んだら。
 ガタンと。
 まるで応えるように。
 病室の窓枠が鳴った。
 ガチャンとも。


「……………た……」


 音に振り返ると。
 窓を割る勢いで開けて。
 いや、割って。

 現れた隊長の姿。


「…………」


 言葉が見つからない。
 もう動けるようにとか。
 何で窓からとか。
 どうしてここにとか。
 何を隊長は見たの。
 見せられたの、藍染に、とか。

 掛けるべき言葉ば沢山あるはずなのに。


「……どーすんですか、窓割っちゃって……」


 よりによって、言えた言葉はこれだった。


「修理すりゃ済む……お前、もう動けるのか?」


 窓から上半身だけ入り込んで来た隊長は。
 すごく思い詰めた顔をしてたけど。
 あたしの言葉があまりにも間が抜けてたからか。
 ふっと、肩の力を抜いたようだった。


「いえ、あまり、まだ……」


 何とか寝台で、身体を起き上がらせる事は出来るけど。
 支えがないと、まだ立てない。


「そうか……卯ノ花が言ってたのは、本当なんだな……安心した」


 容態が聞かされてた通り悪いからって。
 安心するって何だろう。


「お前に会いたいっつっても、あいつ許可しねぇから……会いたくないのかと、思ってた……」


 それは当たってる。
 だけど、それも今は。
 混乱してて言えない。

 ただでさえ混乱してたところに。
 隊長が現れて。
 ますますあたしは、混乱してる。

 隊長は当たり前だけど死覇装を着てなくて。
 四番隊が用意した、あたしと同じ寝着だろうけど。
 白いはずなのに。
 所々が、紅い。


「隊長、傷が……」


 開いてるのは明らかで。
 首筋は傷も赤もなかったけど。
 動いて良い許可が出てるようには見えなかった。


「開いたな……いつまでも、いつまでも、卯ノ花が許可出さねぇし、抜け出て来た」


 そうは言いながら。
 隊長は窓に疲れ果てたように掴まってて。
 中には入って来ない。


「隊長、取り合えず中に……」


 何だろう。
 何でこんなに、穏やかに呑気に。
 隊長に接してるんだろう。

 隊長はあたしと思ってた。
 そう卯ノ花隊長から聞いてなかったら。
 絶対に違ったはず。

 窓から、突き飛ばしてでも。
 動けない身体を無理矢理動かして。
 顔も見たくないと、叫んでたかも知れないのに。

 今はそんな気持ちがなかった。
 混乱してたからだけじゃない。
 もしかしたら、もしかしたら。
 そう考えて。

 あんなに心が引き裂かれるような。
 辛い痛みを味わったのに。
 あたしは、まだ。
 隊長を愛してる。


「入りてぇがな……お前見たら気が抜けて、身体が動かん……」


 隊長もどこか呑気で。
 困ったように、あたしに笑い掛けてた。

 落っこちないように窓枠に掴まって。







 続
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 はーい!(イクラちゃん風)←何で?
 大変お待たせしました。
 もうメロンメロンしかいませーん。(°∀°)b