不思議顔の乱菊に、冬獅郎は囁く。


「お前の為に生きてやる。お前が望むなら、井上じゃなくても、他の奴を先に助けてやる。だが勘違いするな……助けたいのはお前だけだ」

「隊長……」

「…出来るなら、お前を見捨てかけるような状態には、なって欲しくはない。だから気を付けてろ。まず井上とは泳いだりすんな。
あいつは水溜まりで溺れても不思議はない。一種の才能だろ、あのドンくささは」


 ふはっと乱菊が吹き出した。


「酷いですねぇ、隊長……大丈夫ですよ!あたしだって織姫を守りますから」

「や、そう言う事を言ってんじゃねぇよ。俺にンな選択をさせるなと言ってるんだ」


 まだ笑っている乱菊の、鼻先にカプリと噛み付き。
 真っ直ぐに乱菊を見つめ。
 命令だ、と。
 冬獅郎は伝える。


「はい…、隊長」


 ニッコリと笑顔で乱菊は頷くけれど。
 解ってはいないと、冬獅郎には解る。

 まぁ、仕方ない。
 そう諦める。
 乱菊らしさを、否定は出来ない。

 ついでに。
 乱菊は一度言い出したら、簡単には諦めない。
 それも良く知っている冬獅郎だった。


「来年はまたあいつらとキャンプか……」


 かなりウンザリしたように、溜息混じりの音。


「隊長!!」


 両の手を繋いだまま器用に。
 乱菊は冬獅郎に伸しかかる。
 嬉しい、絶対ですよと。
 満面の笑みで。


「おい……」


 むにゅんと柔らかい感触が胸に訪れ。
 同時に唇にも柔らかい熱。


「……もっと眠れなくしてやろうか?」

「ダメでーす。今のは来年の約束のちゅうですから」

「よし、ンなら再来年も連れて来てやろう」

「それじゃぁ約束ですね」


 柔らかく触れるだけのキス。
 俺が眠れなくなると、冬獅郎が苦笑した。


「明日も朝は早いですよ?早く寝ないと」

「お前が眠れんっつって、起こしたんだろうがっ」


 文句を言って。
 ハッと冬獅郎が気付く。

 ガッチリ両の手は繋がれていて。
 最初に胸を触っていた手に。
 触れて来たのは乱菊だったが。
 繋いでしまったのは冬獅郎。


「謀られた……」


 不満気な音に、クスクスと返る軽やかな音。


「隊長がお傍に居て下さるだけで幸せです」


 隊長は違いますか?
 そう聞かれたら。
 手も出せない。


「俺もだ……」


 謀られ、翻弄されている気もしたが。
 紛れも無い真実で。

 冬獅郎は頷き。
 胸に乗る乱菊をそのままに。
 目を閉じる。

 乱菊も続いた。

 手を繋ぎ。
 温もりに抱かれて。
 二人、眠る。

 目を閉じれば、すぐに睡魔は訪れた。

 戦いとは完全に切り離された休暇ではなかったが。
 日頃の喧騒と変わりなく、騒がしい一日でもあったけれど。

 傍にいれる幸せに、寄り添う。

 まどろみながら、やはり乱菊こそが賢者だと。
 冬獅郎は思う。
 弓親が言った意味の。

 そして自分は、織姫が言っていた賢者だろうと。

 どちらでも構わなかったが。
 そう感じた。
 夏の夜に。


 賢者二人は、手を繋いで眠る。
 片方の賢者に謀られて。
 温もりに寄り添い合って。
 来年の夏もまた同じかと。
 夢の端で未来を予期しながら。









 終
 20100820
 ■□■□■
 うーん…
 大変楽しみながら書かせて頂いたのですが。
 何だか最後がしっくりこなくてですね…←いつも?

 何度も何度も、読み直してたら、余計にわけが解らなくなりました(>_<)

 Mちゃん、お待たせしてごめんなさいっ!
 メロメロ隊長なんだけど(いつも)、あまり発揮されてないような…
 少しでも楽しんで頂けたなら幸せです。orz

 33333HIT&リクエスト、ありがとう^^
 次のリクエストも気合い入れて、書かせて頂きますねw
 明後日の方向に行かないよう、願ってて下さい(>_<)


 お付き合い下さった皆様、ありがとうございます^^