「お前は市丸に刃を向ける。俺の為に……それで充分だろ?」

「……知りませんでしたけどね。あいつが何を考えてるのか、最後まで解らないままでした」

「だろうな。それもそれで辛かっただろう……」


 それはあたしへの、言葉だと思った。
 ギンに裏切られて、辛かっただろうと。
 隊長は労ってくれているのかと思った。


「お前を置いて行くのは…辛かっただろうと思うぜ……」


 それはギンの気持ちを。
 代弁する言葉だった。


「ま、さか……」


 それこそ、あたしは知らない。
 ギンの気持ちなど、解るはずもない。
 気紛れにあたしを拾って、置いて行って。
 何事もなかったかのように、会えば笑い掛けてきて。
 昔と変らない言葉で、態度で、あたしに笑う。

 置いて行くのはいつもギンで。
 追い掛けないのは、あたしだった。


「もう解らねぇけどな……お前を大事にしてた。それだけは俺にだって解るさ……」


 どうして解るんだろうか。
 あたしには、何一つ解らないのに。


「お前が辛そうだと、いっつもものすげー目で俺を睨んでた。あんなに感情の解らないふざけた野郎が、
お前に関してだけは感情を顕にする瞬間がある……解るなって方が無理だ」

「そんなの、気付いた事ありませんでしたよ?」

「ああ。だろうな……たまに気の毒になって思う時もあったしな」


 クっと、隊長は短く笑って。
 そんなのお互い様だと、独り言のように呟いた。

 お互い様って、何?


「……俺だって市丸と変らねぇ……」


 ポカンとしているあたしを見て、また笑って。


「気の毒さでは似たリ寄ったりだ」


 そう言った。
 ますますワケが解んない。


「お前はつれない女だって事さ…」


 傍に居ろっつっても、ふらふらと現世にまで行きやがる。
 心さえ置いていかねぇと、あっさり言いやがる。
 攫って行くと言やぁ、きっぱり断わりやがる。

 俺は俺自身が気の毒で仕方ねぇ。

 隊長は、そんな事を、笑顔でブツブツ文句言う。


「気の毒って……」

「ああ!?気の毒じゃねぇなら何なんだ。お前、俺が酔狂でンな事言う奴だと思ってんのか?」

「だって、攫われたって迷惑なだけじゃないですかっ。隊長と逃げて何処に行くって言うんです。
一人でならまだしも、隊長なんか連れて行ったら、追っ手が増えるだけじゃないですかっっ」


 あたしも何言ってんのか、解らなくなってきたわ。
 論点そこかと、自分に突っ込んでみたり。


「迷惑言うな……へこむ……」


 だって迷惑なんだもの。
 隊長が一緒に居てくれるなら、逃げる必要なんてないし。


「やっぱり気の毒だ、俺……市丸も同じ気持ちだったのかと思うと、少し同情するな」

「もう、何言ってんですか、隊長…さっきから……」

「お前を置いて行くのは、さぞ市丸には辛かっただろう…手を差し伸べようと、きっと何度もしたんだろうが、
お前には通じなかったし取り合っても貰えなかった。恐らくそんなところだと思うがな……」


 そんな事、あたしは知らない。
 ギンが何を考えているのか、知らなかった。
 解ろうとも、思わなかった。







 

 18を読む

 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 まだ続くんかいっっ!!長いっ!!--;
 と、自分で驚愕してます。orz