※オリジナル席官達が出て来ます※
詳しくは熊猫設定(鰤)の記事をご覧下さい。

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「……………」


 乱菊は答えなかった。
 出て来ない言葉の代わりに。
 一滴、ツっと音も無く涙が、乱菊の頬を伝って落ちて。
 それが全ての答えだと、冬獅郎に伝わる。


「俺が……お前を、傷付けてる、のか?」


 そんなつもりは、冬獅郎にはなかった。
 だからと言って傷付けていない事にはならない。
 冬獅郎と離れて、現世へと行きたいと望むほど。
 乱菊は離れたがっているのだから。


「隊長のせいではありません。あたしの身勝手です……」


 頬の涙を拭う事はせず、それ以上泣く事もなく。
 乱菊は静かに言った。


「だが、原因は俺にあるんだろう?それ程までに……俺の傍をお前が離れたいと願う程に、俺はお前を傷付けてるのか……?」


 ふるりと、揺られる金の糸。


「違います……その逆なんです…。隊長のお傍に居たいから……ずっとお傍に居たいから……今は隊長から離れて居たいんです……」

「俺は……お前をそんなに傷付けたのか……」


 現世行きを勝手に決めた事よりも。
 俺から離れて行くのかと思えば、冬獅郎の心は苛立ち。
 その原因は市丸にあるのではと考えたら。
 とても冷静ではいられなかった。
 頑なな部下の性格が解るからこそ、感情を荒げず。
 冷静さを装えば装うほど、冷たい態度になった。

 まさかこんなにも。
 己が傷付けてしまっていたとは、思いもせずに。
 離れて行こうとする乱菊を、無意識下で責めて。

 繋ぎ止めたい一心で。

 動揺し、酷く冬獅郎は混乱していた。
 傷付けたいなどと思うものか。
 傷付ける事を願うものかと。
 誰よりも大切にしたい、一秒も手放したくない者を。


「すまない……」

「……隊長………」


 混乱する思考の中。
 紡げる言葉は謝罪だけ。

 そんなつもりはなかったのだと。
 伝える事しか出来なかった。


「お前を傷付けている事さえ、俺には気付けなかった。今も、どうして傷付けてしまったのかは情けねぇが解ってない……だが、お前を傷付けたくはない。傷付けたいと思った事など一度もない」

「……あたしに、謝ったりなんてしないで下さい。隊長のせいではないんです……あたしの感情が、解りきっている事にどうしても着いて行かなくて……そんな自分がイヤで、辛いだけなんです」


 ずっと傍に居たいから。
 今は離れていたい。
 醜い感情に飲み込まれてしまう前に。
 傍を少しだけ離れて。
 自分自身と向き合いたかった。
 それが乱菊の本心。


「ならば、現世へは俺が行こう。お前は残れ……俺と離れたいとお前が望むなら、叶えよう。だが危険だと解っている場所に、お前が行く必要はない。そんな場所に、お前だけを行かせる事は出来ない」

「……ありがとうございます。ですが、あたし…どうしても行きたいんです。あたしの存在が、この世界に必要なんだとも、あたし自身に証明したいんです。ギンが気紛れで拾って、救ってくれた命……それは偶然なんかじゃく、必然だったんだと、あたしは納得したい。単なる身勝手ですけど、存在理由をこじ付けたいんですよ」

 
 それに、と。
 乱菊は続ける。


「隊長は今、尸魂界を離れるわけにはいかないはずです……雛森の傍に、居てあげなくちゃ」


 そう言って微笑んだ。
 瞳は今も濡れ、けれど泣く事はなく。
 真っ直ぐに冬獅郎を見つめて。


「俺にはお前が必要だ。雛森よりも、他の誰よりもお前の存在が必要だ……それがお前の存在理由にはならないか?」

「隊長……」

「松本っ?」


 一筋で止まっていた乱菊の涙が。
 ポロポロポロポロと音も無く零れ落ち。
 無数の雫が、床へと落ちて行く。

 その静かな、突然の涙に冬獅郎が驚き。
 慌てて立ち上がると、乱菊の手を引いて。
 長椅子へと座らせた。

 乱菊の前で右膝を付いて跪き、見上げれば。
 音もなく、静かに零れ落ちて行く涙。
 乱菊が瞬きをする度に、大粒の雫が溢れ出る。


「そんなに静かに泣くな……どうして良いか、解らなくなる……」
















 

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 そろそろメロメロ隊長しか居なくなります。笑

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