第 1 問
 Aは,工作機械(以下「本件機械」という。)をBに代金3000万円で売却して,引き渡した。この契約において,代金は後日支払われることとされていた。本件機械の引渡しを受けたBは,Cに対して,本件機械を期間1年,賃料月額100万円で賃貸し,引き渡した。この事案について,以下の問いに答えよ。
 1  その後,Bが代金を支払わないので,Aは,債務不履行を理由にBとの契約を解除した。この場合における,AC間の法律関係について論ぜよ。
 2  AがBとの契約を解除する前に,Bは,Cに対する契約当初から1年分の賃料債権をDに譲渡し,BはCに対し,確定日付ある証書によってその旨を通知していた。この場合において,AがBとの契約を解除したときの,AC間,CD間の各法律関係について論ぜよ。

第 2 問
 Aは,Bに対して,100万円の売買代金債権(以下「甲債権」という。)を有している。Bは,Cに対して,自己所有の絵画を80万円で売却する契約を締結した。その際,Bは,Cに対して,売買代金を甲債権の弁済のためAに支払うよう求め,Cもこれに同意した。これに基づき,CはAに対して80万円を支払い,Aはこれを受領した。この事案について,以下の問いに答えよ。なお,各問いは,独立した問いである。

 1  甲債権を発生させたAB間の売買契約がBの錯誤により無効であったとき,Cは,Aに対して80万円の支払を求めることができるか。Bに対してはどうか。
 2  甲債権を発生させたAB間の売買契約は有効であったが,BC間の絵画の売買契約がBの詐欺を理由としてCによって取り消されたとき,Cは,Aに対して80万円の支払を求めることができるか。Bに対してはどうか。

第 1 問
 X株式会社は,公開会社でない取締役会設置会社であり,その保有する建物及び用地(以下「本件不動産」という。)において「リストランテL」の名称でレストランを営んでいる。X社の貸借対照表の資産の部に計上されている金額は,そのほとんどすべてが本件不動産の帳簿価格で占められている。なお,X社の代表取締役はAであり,また,X社においては特別取締役制度は採用されていない。
 これらを前提として,次のそれぞれの場合について,問いに答えよ。
 1  Aは,Y株式会社に対し,本件不動産を5000万円で譲渡し,その所有権移転登記手続を了した。Y社は,取得した本件不動産の建物を改装して,電化製品の販売店を営むことを予定している。Aは,この取引に先立ち,X社の取締役会の承認も株主総会の承認も得ていない。その後,Aに替わってX社の代表取締役に就任したBは,Y社に対して本件不動産の所有権移転登記の抹消を求めることができるか。
 2  Aは,Y社に対し,本件不動産を厨房設備とともに7000万円で譲渡した。Aは,この取引に先立ち,X社の株主総会の承認を得ている。Y社は,「リストランテL」の名称を引き続き利用し,X社が行っていた従来のレストラン事業を営んでいる。この取引の結果,X社は事実上すべての活動を停止したが,Aが売却代金7000 万円を持ち逃げして行方不明となってしまったため,X社にはみるべき資産がなくなった。X社に対してレストランの運転資金を融資していたCは,Y社に対してその返済を求めることができるか。