リュウトは即答できる音楽を持ち合わせていなかった。小学校の頃、好きで聴いていたのは
アバとか、カーペンターズとかだったが、なぜか即答できなかった。
「最近はとくに聴いてるのないから探しにきた。お前は?」
「じゃこれ聴いてみて」
中村が飛び跳ねるように見つけに行ったCD。部屋に戻って、リュウトは勧められるまま、真っ白なまま聴いた。
オジー・オズボーンのアルバム、ブリザード・オブ・オズ。この瞬間から目の前の景色が変わった。
中でもクレイジー・トレインにはびびった。これまでにはない全く別の感覚が注がれていく感じがして、
見る景色がすべて変わって見えた。初めて目に映る光がそこらじゅうに揺らいでいるようだった。
「最高だろ」
中村のキラキラした目がさらにリュウトをわしづかみにする。中村が別人に見えるのにも合点がいった。実際、円周率を唱えていたあの時の中村は別の中村だった。
「俺、バンドやりたいいんだよね。ブラバンに入ったから、音楽室使えるし」
「楽器やってるの?」
「うん。ドラム」
リュウトはそこらじゅうに揺らいでいる正体不明の光の脈をかき集めて、中村に飾り付けたくなった。
「じゃやろうぜ、バンド。俺ギターで」
つづく
