第9回ブログでは、
商標とは、「お客さんが思い出してくれるチカラ=識別力」をもった名前やマークなどであって、努力してためてきた信用を守るしくみであることを紹介しました
そして、その名前やマークなどの「など」には、さまざまなものが含まれることがわかりました!
第10回ブログの中のお話は、第9回のお話のつづきになります
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クッキー屋さん 太郎くんの悩み<後編> ~おはなし~
キャッチフレーズやメロディが商標になることを知った太郎くんは、
「もっと早く知っていれば、パッケージの形や色にも工夫できたのに…」と、少しだけ後悔しました。
それ以来、太郎くんは考えるようになりました。
「今のお店で、お客さんにもっと思い出してもらえるようなことって、どんなことがあるのかな?」
そこで、「今のお店で名前や音以外にも、守れるものってあるのかな?」と、
クマ先生にもう一度尋ねに行きました。
すると、
「たとえばね、色の組み合わせや、形、動きなんかも、お客さんが『あのお店だ!』って思い出してくれるなら、商標として守れることがあるんだよ。
そして、あるコンビニでは、オレンジ・赤・緑の3色を使った看板の色の組み合わせが、それだけで『あのお店だ!』って思い出してもらえるから、商標として登録されているんだ」
「あのコンビニだね!ぼくでもすぐわかったよ。あと他にはあるかな?」と太郎くんが尋ねると、クマ先生は、
「たとえばね、チキンがおいしいファーストフードのお店をつくった人の像も、お店の前に立っている形そのものが、商標として登録されているんだよ」
「えっ、あの人形が…?」と太郎くんがおどろくと、
「そう。長年、お客さんが見て『あのお店だ!』って思い出してくれるようになったから、その立体的な姿かたちに信用がたまっていたんだね」とクマ先生は言いました。
太郎くんは、ふと自分のお店の入り口を思い浮かべました。
「ぼくのお店にも、星の妖精のキャラクターが立ってるけど…いつか、あの子の形が“太郎くんのお店だ!”って思ってもらえるようになったら、立体商標として守れるようになるかもしれないんだね!」
クマ先生はうれしそうにうなずきました。
「そうだね。お客さんに思い出してもらえる工夫を続けていけば、きっとその日が来るよ」
太郎くんは、お店に帰ってきて星の妖精を見つめながら、
「もっとお店を大きくして、たくさんの人におぼえてもらえるようにがんばろう!」と、
やる気にあふれるのでした。
~おしまい~
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このお話を読んで、「うちのお店でも、何か守れるものがあるかも…」と思った方もいるかもしれませんね
では、実際にどんなものが商標として登録されているのでしょうか?
太郎くんのように工夫を重ねてきた会社の事例を、いくつか紹介していきます!
その前に、第9回ブログの内容をおぼえていますでしょうか?商標法という法律の中で、
「商標とは、商品やサービスについて使われる、文字・図形・記号・立体的な形状・色・音・動きなどのマークのこと」
(商標法第2条第1項より一部抜粋・やさしく要約)
と、商標がどのようなものか示されていました。
そして今日、紹介するのは
は、その中でも、色彩商標、立体(的形状の)商標、位置商標、動き商標です。
どんな商標なのかイメージしながら、見ていきましょう!
1.色彩商標
色彩の商標とは、特定の色や色の組み合わせが「この商品・サービスだ」と思い出してもらえる場合に、その色を商標として守るしくみです。
例:セブン‐イレブンの3色ストライプ
日本初の「色彩のみからなる商標」として登録されました
登録番号:第5933289号 ※リンクをタップすると登録情報が見られます
※商標図面はJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)より引用
出典:J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)
教育・解説目的で、商標登録情報の一部を引用しています。画像の著作権・商標権は登録者に帰属します。
2.立体(的形状の)商標
立体的形状の商標は、商品の形やキャラクターの人形など、立体的な姿かたちそのものが「この商品・サービスだ」と思い出してもらえる場合に、その姿かたちを商標として守るしくみです。
例:ケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダース人形
登録番号:第4153602号 ※リンクをタップすると登録情報が見られます
※商標図面はJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)より引用
出典:J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)
教育・解説目的で、商標登録情報の一部を引用しています。画像の著作権・商標権は登録者に帰属します。
3.位置商標
位置の商標は、マークや模様などが、商品やパッケージの決まった場所にあることで「この商品だ!」と思い出してもらえる場合に、その“場所もふくめて”商標として守るしくみです。
例:日本ハム株式会社のシャウエッセンのパッケージ
登録番号:第6914670号 ※リンクをタップすると登録情報が見られます
※商標図面はJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)より引用
出典:J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)
教育・解説目的で、商標登録情報の一部を引用しています。画像の著作権・商標権は登録者に帰属します。
4. 動き商標
動き商標は、時間の経過にともなって図形や文字などが動いたり変化したりすることで「この商品・サービスだ」と思い出してもらえる場合に、その動き自体を商標として守るしくみです。
例:ワコール株式会社のロゴがつぼみ状の図形が花のように開き、最終的に「W」の形になる動き
登録番号:第5804316号 ※リンクをタップすると登録情報が見られます
※商標図面はJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)より引用
出典:J-PlatPat(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)
教育・解説目的で、商標登録情報の一部を引用しています。画像の著作権・商標権は登録者に帰属します。
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これらの事例に共通することとは?
ここまでで、色や形、位置や動きなど、さまざまな商標の登録例を見てきました。
さて、これらの事例に共通していることがあるのですが……それは何かわかりますか?
それは、商標として守られているのは、「見た目」そのものではなく、お客さんが“あのお店だ!”と思い出してくれるチカラ=識別力であるということです。
そして、そのチカラがたまたま色に宿っていたり、形に宿っていたり、位置や動きに宿っていたことを理由に、商標として登録がなされています。
そのようなしくみであるため、色彩や位置の商標は、見た目がシンプルであるぶん、識別力(思い出してくれるチカラ)があることを証明するのがむずかしいのです。
たとえば、ありふれた赤い線や、よくある模様が特定の場所にあるだけでは、「あのお店だ!」と思い出してもらえるとは限りません。登録されるためには、長いあいだ同じ使い方を続けて、お客さんの記憶にしっかり残っていることが大切です。
その証拠に、今日のブログでみた商標はどれもすぐにわかりましたよね?
きっと、太郎くんのお店の「星の妖精」も、これからたくさんの人に覚えてもらえるようになれば、いつかその姿かたちや色、動きが商標として守られる日が来るかもしれませんね。
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第9回、そしてこの第10回のブログで「商標」を身近に感じてもらえたでしょうか?
次回は、同じく身近な「著作権」を紹介します
第11回ブログをお楽しみに!
ではまたね







