アタシは夜の街をただひたすら走る、
脳内に流れる映像を追い払うためだ。
その中には、
「社長はひどすぎます!日奈子さんにヒールさせるなんて」
辛そうな表情のマイカや、憐れむようにアタシを見る涼子の顔もあった。
ああ、そうか、
そうだったんだ。
クレハと橋本のこと、知らなかったのはアタシだけ。
馬鹿か。
まるで17歳の乙女じゃねえか!
来年37だよ、図々しいにも程がある。
「…ハハ、ハハハハハ!」
もう笑える。
橋本がアタシを特別な存在だと思ってくれてる、
そんな勘違いがアタシのモチベーションになってたなんて。
「日奈子さん!」
部屋の扉の前には蓮人がいた。
あの日以来うちには上げてない。
時々稽古を覗いてるのは知っていたが、アタシから話しかけることはしなかった。
なぜなら。
「これ、差し入れです!
スタミナたっぷり肉丼と、プロテインも持ってきました!」
紙袋をガサガサして、
「それと…あのう、
これ日奈子さんみたいだと思って、思わず買ってしまいました」
蓮人が出したのは、赤いポインセチアの植木鉢だった。