クレハがもう一撃脇に蹴りを入れた!

だが同じ手は喰らわない、アタシはするりと身をかわす。

リングサイドへ走り、その反動でクレハに身体ごと突っ込んだものの、

マトリックスのように上体を反らしかわされた。

体操をやってただけありクレハ、その体の柔らかさと身のこなしでバク転する。

観客席から拍手が起こった。

互いに睨み合い、手を伸ばし相手を牽制しながらリングの中央を移動する。

その均衡を破ったアタシはクレハの肩にパンチを喰らわせた。

だが逆にその腕を掴まれ、アタシの身体は転がされてしまった。

その勢いのままリングの外に転がり出る。

すぐそばから口笛の音とクレハへの歓声が起こるが、

アタシはリング外からクレハを見据え、ゆっくりと歩きながら挑発する。

 

ヒールにはヒールの戦い方がある。

 

じらされて熱くなったクレハは自らリング外に出て、アタシを追いかけてきた。

はっ、思うツボだ!

前列観客席の客の足を軽く払い、パイプ椅子を持ちリングに素早く駆け上がる。

「おい!椅子使うな!」

怒声を浴びせる橋本めがけ、その椅子を投げつけた。

背後からリングに上がってきたクレハ、

アタシは転がった椅子を立て直し、わざとゆっくりした動作で腰掛け大きく足を組み、

クレハに向かいあっかんべーをした。