リカは前列の女性に声を掛けた。

「『パスワードを教えてください』

キミコ、これを英語で言うと~」

「ええと、Please teach me the password.」

「惜しい!

間違っていないんですよ、直訳すると教えるはteach。

でもこの場合はtell なんです。

ではキミコ、say again!」

「Please tell me the password」

「Good!

ただし皆さん、パスワードは絶対に他人に教えないでくださいね、

Don't tell anyone your password」

生徒たちから笑いが起きる。

「キミコ、thank you!

これ間違いやすいので注意。

teachは例えば、

Can you teach me English?

英語を教えてくれませんか?みたいに『学問を教える』に使われますね」

「ほお~」

70歳のヒロジさんが感心したような声をあげる。

「一方でtellは、相手が知らない『情報を教える』時に使います。

Can you tell me the way to the stetion?

ヒロジ、日本語で言うと~?」

「えと、ええええと」

「それは、8、はち。

きゃん、ゆ、てるみざうえい、とうざステーション?」

「え、駅までの道、教えて?」

「Good!その通り」

「はあ、心臓縮まりましたわ」

「いやいや、若返ったんですよ。

皆さん。今日のところ、おうちでも暗唱してくださいね。

英会話は脳トレ、認知機能アップに最適ですよ!

英語を学ぶことはいつまでも若々しくいられることに効果的です」

「リカ先生も若いですね」

「Thank you so much!みなさまのおかげで~す」

 

リカが英会話教室の講師を始め、間もなく三ヶ月が経つ。

サッチンが講師をしていた教室は一旦別の男性が受け持ったのだが、彼は実家の家業を継ぐとか何かで数か月でやめてしまった。

そんな時、サッチンのアシスタントをしていたリカに白羽の矢が立ったのだ。

まさに棚からぼたもち、これもサッチンからの~、

ご縁だと思い引き受けた。