日本代表)は9月10日(火)、バーレーンのナショナル・スタジアムでFIFAワールドカップ26アジア最終予選(3次予選)のバーレーン戦に臨み、5-0で完勝した。グループCで唯一の連勝を飾り、単独首位に立ちました。
前節の中国戦と同様、3-4-2-1のフォーメーションを採用した日本は、先発メンバーもシャドーに久保建英選手(レアル・ソシエダード)に代わって鎌田大地選手(クリスタル・パレス)が入った以外は同じ顔ぶれで臨みました。
GKは鈴木彩艶選手(パルマ・カルチョ)、DFには右から板倉滉選手(ボルシア・メンヘングラートバッハ)、谷口彰悟選手(シントトロイデンVV)、町田浩樹選手(ユニオン・サンジロワーズ)が並び、ダブルボランチ(VO)は遠藤航選手(リバプールFC)と守田英正選手(スポルティングCP)がコンビを形成し、両ウイングバック(WB)は右が堂安律選手(SCフライブルク)、左を三笘薫選手(ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC)が務め、2シャドー(IH)は南野拓実選手(ASモナコ)と鎌田選手で編成します。そして1トップには上田綺世選手(フェイエノールト)が入りました。
立ち上がり直後からコンパクトな陣形を保ち、相手陣内で積極的にボールを動かす日本は、9分に三笘選手のクロスに堂安選手が飛び込み、最初の決定機を迎えます。シュートは左ポストを直撃し、得点には至りませんでしたが、ここから攻撃が加速していきました。18分に南野選手、24分に上田選手がゴールに迫り、37分に厚みのある攻撃から先制点を手にします。
守田選手がペナルティーエリア内に送った浮き球パスが一度はクリアされますが、こぼれ球を遠藤選手が回収。すぐさまスルーパスを送ると、ペナルティーエリア右から鎌田選手が折り返し、そのボールが相手選手の手に当たり、PKを獲得しました。レーザーポインターによる妨害も意に介さず、上田選手がこれを冷静に沈めて日本が先制に成功します。
1点リードで迎えた後半早々、堂安選手に代わって登場した伊東純也選手(スタッド・ランス)が絡んでゴールが生まれます。47分、南野選手が奪ったボールを三笘選手、鎌田選手とつなぎ、右サイドの伊東選手がダイレクトで折り返すと、半身の体勢でトラップした上田選手がうまく右足を振り抜き、この日2点目となるゴールを決めました。
その後も日本は攻撃の手を緩めず、61分には上田選手との縦のワンツーから、さらに64分には三笘選手の左クロスに飛び込み、守田選手が連続ゴールを記録。大量リードを奪いました。
バーレーン代表は、ただ引くだけではない
バーレーンは、4-4-2からサイドハーフが後退して日本のウイングバック(WB)をマークする5バック気味の形に移行する。
その際、中盤は3枚になるがディフェンスラインを高く保って中盤のスペースを開けない。そのため、日本は南野拓実、鎌田大地の2シャドーにパスをつなげず、浅いラインの裏かサイドへの展開になっていく。
9分、左WBの三笘薫がファーポストへクロスボールを送り、逆サイドから入って来た堂安律がシュートするがポストに当たって外れる。
34分に相手DFのハンドによってPKを得て上田綺世が決めて先制したものの、前半の決定機は9分の1回のみだった。
バーレーンは、引いたときには5バック気味になっているので、日本の外を使った攻撃への対応が早い。高いライン設定でバイタルエリアも消せていて、日本は70%もボールを保持していたが、なかなか崩し切るところまではいかなかった。
バーレーンは、押し込まれながらも、日本のファーストプレスをかわして運ぶ力があり、堂安の頭上を狙うロングボールを使い、ロングスローの威力もあった。このあたりは、ただ引いているだけだった初戦の中国とは違っている。日本を相手に1失点の前半は悪くない結果だったはずです。
ところが、後半に入ると流れは一変する。
47分にゴール前のこぼれ球を上田が叩き込んで2点目。そこから着々とチャンスを作り、守田が立て続けに2ゴールをゲット。
80分に中村敬汁のシュートをGKが弾いたところを小川航基がプッシュして5点目。その後も4つの決定機があり、半分決めていれば中国戦と同じスコアになっていた。流れを変えたのは2人の中盤の選手だった。
3-4-2-1フォーメーションを精通している鎌田と守田の存在
バーレーンのコンパクトな守備にバイタルエリアを消され、サイドへの展開も5バックで対応された前半の日本は、浅いラインの裏を狙っていた。それ自体は正解ではあるけれども、攻撃が散発的になって日本のリズムではなかった。
後半に流れを変えるきっかけになったのは鎌田と守田のポジショニングである。
前半にPKにつながるクロスボールを蹴った鎌田だが、スペースを消されてなかなかパスを受けられなかった。
すると、鎌田はポジションを下げた。左右のセンターバック(CB)の横あたりまで下がる。ここまで下がると、バーレーンとしては鎌田につききるのは難しくなる。5バック化しているときは中盤の守備者が、3人になっていて鎌田を深追いすれば2人になってしまってスペースを埋められない。フリーになった鎌田は、浅いライン裏へ伊東純地、三谷を走らせるパスを送って攻した。
鎌田の下がる動きに連動して、守田が前進を開始する。守田がポジションを上げたことで、中央部に南野、守田、鎌田、上田が集結する。中央に人を増やし、狭いエリアでも確実につなぐことで、前半に攻め込むことができなかった場所を制圧した。
ポジションを上げた守田は、56分に伊東へのパスで決定機を演出する。
60分には、上田とのワンツーで抜け出して3点目を決め試合を決定づける。
64分にも三笘からのグラウンダーのクロスに合わせて4点目を決めた。このゴールは、鎌田から裏へ走る三
笘への正確なパスが起点になっている。
守田と鎌田は、所属クラブで3-4-2-1の運用に精通しているせいか、的確な打開策を見出していた。
3バックを知っていれば、強力アタッカー陣のポジションを動かす
中国やバーレーンは日本に勝てなくても失点をなるべく少なくしたかったはずだ。どちらも守備を固めている。しかし、日本には通用せず、いずれも大量失点となった。
日本の攻撃型3バックが強力すぎたのだ。三笘、伊東の両翼を止めるのは至難。さらに中央も守田が2シャドーに加勢する分厚さがある。バーレーンはコンパクトな守備で前半は対抗できていたが、鎌田と守田の機転によって分解されるとアタッカーの個の能力に蹂躙されて抗う術もなくなった。
今予選の序盤を戦うにあたって、日本の超攻撃布陣は効果的だった。ここから流れが変わる可能性もないとは言えないが、格の違いを見せつけた連勝だった。