前回に引き続きPK戦について解説致します。この資料は、2020 ユーロ決勝トーナメントの資料をもとにして戦術論の授業をしました。
私の授業は、切り口角度が違うので、生徒に受け入れられましたが、内容を濃くしてしまうので情報を集めるのに一苦労しました。
また、東京五輪の日本代表を分析した時は、ゴールキーパーの重心の移動の見つけ方を題材にした時もへーと言う生徒の反応でした。
今大会の”ナイジェリア女子”のPK戦を見ているとこの選手たちは、練習してるのかなと「首」を傾げてしまいます。
それでは、第2弾を始めたいと思います。
■PKの成功率が高い選手
全体的な確率はこのような確率になりますが、PKの名手と呼ばれPKの成功率が高い選手も存在します。Jリーグで言えばコロコロPKや日本代表歴代出場記録を持っている「遠藤保仁選手」が有名です。
他にも、元日本代表の藤本淳吾選手もPKの成功率は、2007年から2011年のJ1で10回中10回決めていますので、成功率100%です。世界でもイタリア代表のバロテッリやデルピエロなども有名です。
バロンドールを4回連続で受賞したアルゼンチン代表の「リオネル・メッシ」においては、PK成功率は74%になり平均よりも引い成功率になります。また、ポルトガル代表の「クリスティアーノ・ロナウド」PK成功率は、96%になりますので、相当PKが上手な選手だとわかります。
■PK戦で先行と後攻はどちらが有利なのか?
まず、キャプテンがコイントスによってPKの先攻後攻を決めるのですが、PK戦においてはこの瞬間から大きな確率的違いが存在します。このことからも、PK戦は蹴る前から始まっていると考えられます。
研究者のホセ・アペステギアとイグナシオ・パラシオス=ウエルタによりますと、PK戦で勝敗が決まった129試合を分析して、先にPKを始めて最初にゴールを決めたチームは、勝利の可能性が60%に上がることを明らかにしています。
先にPKを蹴る選択を選ぶことが重要になります。
先行は先にボールを蹴りますので、それはそれでプレッシャーがかかるかもしれませんが、先にゴールを決めさえすればそれ以上のプレッシャーを相手に与えることができますし、実際にPKを外す確率が高くなるデータも存在するのです。
最初の1本目の成功率から徐々に5本目のPKが近づくと成功の確率は下がり、11本目のPKでは無残にも64.3%になるのです。
PK戦において、5本目以降からは「サドンデス方式」になりますので、ミスをしたら負ける確率が一気に上がります。精神的プレッシャーは大きくかかり、5人目以降の選手もPK戦になったのならば、自分は関係ないと思うのではなく、何時でも蹴れるような心の準備をしておく必要があります。
プロの選手は、PK戦において先攻が有利なことを知っているかもしれませんが、アマチュアや学生においてはどうでしょうか?
せっかくコイントスで先攻後攻を選べるのにもかかわらず間違って後攻を選んでしまうことも十分に考えられます。
指導者としてサッカーを教える立場の人間がそのような部分はしっかり教える必要があります。
しかし、過去に例外があり、2008年の欧州選手権のイタリアとスペインの試合において、キャプテンのブッフォンは後攻を選択してしまい、結果的にスペイン相手にPK戦で敗退したこともあります。
このような不祥事や事故を起こさないためにもPK戦において先攻後攻どちらが有利なのかと言うことは、サッカーを行う人にとって、実力が関係ない部分において勝率を上げるためにも重要なことだと言えます。
2020 ユーロに於いて、ラウンド16「スイス×フランス」戦は、先攻スイス(◯)の勝利、準々決勝「スペイン×スイス」戦も先攻スペイン(◯)の勝利、準決勝「イタリア×スペイン」戦も先攻イタリア(◯)の勝利。そして決勝「イタリア×イングランド」戦も先攻イタリア(◯)が勝利しています。今回の2020 Euroでは、全ての試合で先攻チームが勝っています。
■左利きと右利きで成功率は変わるのか?
では他にも、キッカーの利き足の違いにおいて成功率に違いはあるのか?
そこまでの大差はありませんが、右利きの成功率は72%ですが、左利きの成功率は76%になります。若干ですが、左利きのほうが有利なのです。
左利きのサッカー選手は全体の15%しかいませんので、ほとんど右利きの選手が多いです。このことは、他のスポーツ同様に左利きが少ないために、多い右利きにキーパーが慣れていると考えられます。
2020ユーロでは、38本のPK戦で、右利きが右に蹴る=20本で成功が11本、55%の確率でした。右利きが左に蹴る=9本で5本の成功、56%の成功でした。
一方、左利きが左に蹴る=6本で成功が5本、83%の成功でした。そして、左利きが右に蹴るは、1本で成功、100%の成功です。最後に左利きの選手で、中央に蹴った選手が2人、これも2本あり100%の成功でした。
しかし、決勝でのイングランド5人目「ブカヨ・サカ」のキックは、プレッシャーのある中「このキックを成功すれば優勝」の最後のキックで、左利きのの選手が左に蹴り、イタリアGKジャンルイジ・ドンアルンマに止められ「優勝」を逃した。
■キッカーは右か左のどちらに蹴れば成功率が上がるのか?
プロのサッカー選手はすでに知っていると考えれますが、アマチュアでサッカーをしている選手にとってはこの情報は必ずしも知っている情報ではないかもしれません。(前文で説明)
ブラウン大学の研究によれば、808回のPKのうち右が4割、左が6割ですが、成功率は右が81%、左は83%とほぼ同じとなっています。
実際のところ、キッカーたちは83%のケースにおいて、コーナーを狙ってシュートします。右利きの選手は左へ蹴り、左利きの選手は右に蹴る傾向も確認されています。もちろん、キーパーもこのことを知っているので、確認されたケースのうち57%は自分の右側へ、41%は左側へ飛びます。
PKにおいてキーパーはボールを蹴る方向を予想して飛びます。何故ならボールを蹴ってから反応しては、間に合わないからです。
■PKの必勝法を知り確率から得点を決める
キーパーはキッカーの蹴ることを予想してどちらか飛びますが、キーパーがそのまま動かない確率は、100回中7回になり、7%の確率です。また、代表の試合ではさらに低くなり、100回中2回になりますので、2%の確率です。
ですから、キッカーはゴールの中央に蹴ることで成功する確率を高くすることができるのです。しかし、実際は中央にボールを蹴る確率は少なく、全シュートのうち17%しか確認されていません。確かに、ボールを蹴るまで、中央にはキーパーが立っていますので、違和感があり勇気がいる選択になるかもしれません。
2020 ユーロでは、左利きの選手で、中央に蹴った選手が2人、これも2本あり100%の成功でした。その違和感に勝つことができ、勇気を持って真ん中に蹴ることができればPKでゴールを決める確率は高くなります。
実際に、過去のワールドカップでは、1982年のスペイン大会から2010年の南アフリカ大会まで、22もの試合がPK戦で勝敗が決まりましたが、204のシュートのうち中央に蹴ってキーパーに防がれたものはありませんでした。
このことからもPKにおいてキーパーに向かって、真ん中に蹴ることは必勝法と言えるのかもしれません。プロの選手やアマチュアでも強いチームでは、真ん中ばかり蹴っていては相手も分析してきますので、いつも真ん中ばかり蹴っていては通用しないかもしれません。
しかし、アマチュアの多くの試合において相手がPKの分析をしてこないと思えるような実力の試合においては、勇気を持って中央にボールを蹴れることは確率的に考えても最善の策なのかもしれないです。
■GKの体重移動を読む
GK の動きに反応するキッカーの代表格は元日本代表の遠藤保仁選手である。遠藤選手 は GK の動きや重心を見極めて GK が動けない方向に蹴る。動けないとわかれば強く蹴る 必要もない。
このGKの体重移動の分析は、また時間がある時に細かく説明します。編集動画もありますが、著作権の関係でYoutubuに出来ないので、見せる事ができないのが残念です。
また、準々決勝以降女子ワールドカップで「PK戦」がある時は、こんな事を言っていたなと思い出しながら見て下さい。
