痛々しくてツライ。だけど…。 ― 舞台「マリーゴールド」―
数年前にたまたま観る機会があった、演出家「末満健一」さんの舞台。「吸血種の少女たち」が主人公の「LILIUM ~少女純潔歌劇~」という演目でしたが、私の世代が「吸血種の少女」と言ってまず思い浮かべるのは萩尾望都さんの代表作の1つ「ポーの一族」の「メリーベル」ですね。後に他の作品を観た時、作中に「メリーベル」という名前が出てきたので、末満健一さんはやはり「ポーの一族」からインスパイアを受けている事に間違いないようです。「ポーの一族」では、ただ1人の肉親であったメリーベルを失っても、「終わりのない生」を生き続ける吸血種の少年「エドガー」が主人公でしたが、末満健一さんも「永遠の時を生き続ける吸血種」をテーマに「TRUMP」シリーズという舞台作品を作り続けていて、「永遠の命を渇望する者」と「永遠の命を生きなければならない者」、両者の相反する想いがメインテーマになっています。昨年の「グランギニョル」に引き続き、シリーズ10周年を記念して今年披露されたのがこの「マリーゴールド」という舞台です。「マリーゴールド」は「LILIUM ~少女純潔歌劇~」に出てきた少女の名前で、今作では彼女にスポットが当てられています。危うい均衡の上に保たれていた母と娘の幸せが悲劇的に引き裂かれ、命を落とす直前の母の「幸せになって」という願いと共に彼女が新たな場へ向かうまでの顛末が描かれています。ひとつの悲劇を生き延び、母からの愛に送り出されて新たな場所にたどり着いたはずの彼女ですが、「LILIUM」ではそのマリーゴールドが新たな悲劇の引き金を引き、多くの仲間と共に凄惨な最期を遂げます。舞台はシリーズの時系列とは異なる順番で上演されているので、新たな作品を観る事で以前の作品への想いも大きく変わってきます。ずっと末満作品を観ている者は、最期の瞬間に娘の幸せを願った母の想いが次の場で叶わなかった事を今回の舞台で知る事になり、本当にやり切れない、報われない想いを味わうことになります。それでも末満作品から目を離せない理由は、誰の心の中にもある「死への恐怖」と「永遠の命への憧れ」、そして「永遠の命」を想像した時に行きつく「長い間の孤独」という重いテーマを時にコミカルな要素も交えつつ、舞台となる場をいともあっさり残虐に壊しながらファンタジーとして徹頭徹尾、美しく描いているからだと感じます。舞台が私達の日常とはかけ離れたファンタジックなものであるほど、「死」と「命」にまつわるシンプルな感情だけが純粋に浮き上がります。それが末満健一さんのライフワークであり、メインテーマなんですね。ファンタジーは現実逃避でも、きれい事でもない。純粋さの追及なんだな…と末満作品を観ていて感じます。多くのファンがそこに虜になるんですね。私もどこまでもお供したいと思います。