アルファゼロに関して、後手番の2手目に8四歩や3二金を指し、3四歩は指さない理由は、横歩取りを恐れているからです。これと同様の傾向が、先般導入した将棋ソフトのドルフィンにも見られます。ドルフィンも後手番での横歩取りを選択せず、必ず8四歩か3二金を指すのです。強い者同士、類は類を呼ぶのでしょうか。

横歩取り定跡について少し調べてみると、いくつかの基本形が存在します。私はこれを5つに分類しました。

  1. 先手横歩取り、後手2八歩型
  2. 先手横歩取り、後手3三角型
  3. 先手横歩取り、後手3三桂型
  4. 相横歩取り、先手7七銀型
  5. 相横歩取り、先手7七桂型

これらの定跡にはそれぞれ結論があるのでしょうか?現在のところ、具体的な情報は得られていませんが、これらの定跡は人間が長年にわたって考え出したものです。しかし、現代では将棋ソフトが新しい定跡を生み出していることも事実です。例えば、矢倉が衰退する原因となった「新手」もソフトが編み出したものです。

 

ドルフィンによる自己対戦を行ったところ、「先手横歩取り、後手2八歩型」の戦型で興味深い現象が見られました。後手が2八歩と桂取りに打つ局面では、評価値が一気に跳ね上がり、先手有利と表示されます。検索エンジンをエルモに変えると、さらに評価値が上昇し、先手有利が明確になりました。

 

他の戦法、例えば「先手横歩取り、後手3三角型」では評価値の変動は緩やかで、先手有利の結論を出すのは難しいです。本格的に調べるには、もっと多くのデータと詳細な分析が必要です。また、考慮時間の設定も重要で、持ち時間が長いほどソフトの読みが深くなります。ポナンザの開発者の山本さんも、「持ち時間を2倍にすると勝率が8割になる」と述べています。

したがって、横歩取りに関しても考慮時間を適切に設定し、深い読みを実現することで、より正確な結論が得られるでしょう。

 
 
参考文献
1.Newton ゼロからわかる人工知能