カオス時々キセキ
ここは都内某所、低所得者層が多く住む地域の総合病院![]()
その中のここは救急室。二次救急までの患者がやってくる。
救急医療は、一次、二次、三次に区分けされている。
一次は、入院や手術を必要としない軽症者を対象とする。
二次は、入院や手術を必要とする重傷者を対象とする。
三次は、二次では手に負えない心肺停止、高度の熱傷、重症中毒症を対象とする。
ようするに、ここの救急室には心臓と呼吸が動いていて、熱傷でも中毒でもない人なら誰でもやってくる。
いつもと同じ、カオスな救急室だ。
「今日はね、兄貴の結婚式で嬉しすぎて飲みすぎたね~
」CHANNELって書かれたジャージ上下姿の62歳男性。生活保護受給者。飲酒後転倒して頭部挫創。
CT上異常所見なし。神経学的異常なし。2針縫って帰宅。付き添いがいない泥酔者は、おまわりさんと一緒に帰宅になる「警察嫌だー!入院させてくれぇ~!」断末魔の叫び![]()
無職で平日の夕方に泥酔。一丁前に酔った言い訳はする。木曜日の16時です。結婚式なわけない。
早く、次の救急車の受け入れ準備しなくっちゃ![]()
「え?最後に入ったお風呂?覚えてないよ。今月は、まだ入ってません!へへへ。」
異様に臭い58歳男性。全体的に湿った服を着ている。生活保護受給者。
発熱。ただし、消化器症状なく、飲食可能。顔色も、おしゃべりも絶好調!
「そう言われると、風呂入りてぇな。入院させてよ」検査して入院の必要はなく、点滴で補液したら帰宅可能。医師がそう説明してから、入院して入浴したいってことと、身の上話で30分くらいストレッチャーを占拠している。(途中から全然聞いてなかった
)
ごねまくってようやく帰宅するものの、支払いを拒否して帰っていったそうだ![]()
ここでは、こんなの普通ですから。
さ、次!![]()
「実はね、先生、正直に言っちゃいます。週末家族で温泉行くのよ、おじいちゃん預かってくれるとこ、見つからなかったのよ、だからお願い。昔からうちはみんなここ、かかりつけなのよ」
自宅にて転倒し、足を痛がって動けなくなった。と家族に言われて連れて来られた80歳男性。
当然レントゲンにて骨折等の異常所見なし。ご本人は・・・「いたって元気です!これから仕事に行くんですよ」と杖をついて歩き回っている。既往歴は認知症。高血圧。大腿骨骨折。
冒頭の発言はおじいちゃんを連れてきた、長男の嫁の発言。「入院させて」「ダメです」「かかりつけよ」「だめです」で嫁と医師の20分の押し問答。おいおい、おじいちゃん、どこ行くのー
歩き回るおじいちゃん。
長生きも辛いなぁ。
次の人、呼ばなくちゃ![]()
チンピラ風36歳男性。飲酒中に仲間内とケンカになり鎖骨骨折![]()
救急隊に悪態ついて暴れている。既に数ヶ所の病院に搬送されているが、医師・看護師に暴力をふるったり、暴言を言ったりしたため、追い出されてここまできたそうだ。
鎖骨骨折は緊急で手術する必要はないため、この態度じゃ、追い出されても仕方ないか。
「俺は、渋谷の人間なんだ。なんでこんなダサい病院なんだよ!」(やっぱ、ダサいんだ)
「俺の後ろには、怖い人がいるんだ!」(あんたの後ろには救急隊しかいないけど)
「医者だからって偉そうにすんな!」(しょうがないの、先生若いから)
そして、医師とケンカになる
(あぁ~、ケンカ買っちゃたよ。カンベンしてよ。話長くなっちゃうじゃん!)
結果・・・鎖骨の保護バンドだけ巻いて次の病院に送られていきました。もちろん支払い拒否で。ケンカ両成敗?
気にしない気にしない。次々・・・![]()
社会性、モラル、一般常識、礼儀、家族の絆・・・。ここにいると全部が幻のように思える。
次々に来る患者とその家族。常識を超えたケースが多くてホント、忙しい![]()
でも、時々。。。
89歳女性。午前4時に脳卒中疑いで救急搬送。
高度の認知症で日ごろからほぼ寝たきり。同居している娘48歳と二人暮らし。明け方に娘が目を覚ますと、母親がぐったりしているように感じたそうだ。
生活保護受給者。お世辞にもキレイとは言えないパジャマ。娘も、身なりを気にしないのだろう。髪はぼさぼさで、缶コーヒーBOSSのジャンパーを着ている。タクシーを呼ぶお金がなく、救急車を呼んだそうだ。いかにもこの地域の人だ![]()
患者は体格が良く、すごく重い。高度の認知症と高齢者に特有の、仮面様顔貌(無表情)だ。でも両手・両足は動かせる。CTを撮る。年齢相応の変化のみで異常所見なし。神経学的な所見も異常なし。血圧、脈拍なども問題なく、元気にお話できている。とはいえ認知症が高度すぎて、会話は最初から成立してない。「今日は何月?」「おなかすいた」「じゃあ、お名前は?」「あのね、明日遠足なんですよ」・・・。(だれか~、通訳して~!)
そして失禁
(重いのにぃ。もう!つか全然健康じゃんよ。)やっとの思いでオムツ交換。どうせ、ここんちも週末旅行に行きたいんでしょ。
さて、そろそろ先生が恐怖の宣告「帰っても大丈夫ですよ」を言う頃だ。
「帰って大丈夫。入院の必要はありません。」「・・・」やっぱりか?
「お母さん、帰っていいって!!良かった~。」「母がいない一人の家は寂しいですから。」(えっ?そっち?)
私が、母親を車椅子に乗せると、娘が駆け寄ってきた。お母さんは無表情のままだが、娘はホッとした笑顔をしている。帰れて嬉しいのは本心だ。
「帰るわよ。お母さん」「明日のお弁当何がいい?」「そうね、鮭かしら」「タクシー代なんとかなりそうね。」「じゃあ鮭買いに行く」「あ、お母さんの靴を忘れてきちゃった。売店のは高いから買えないわ。お母さん、裸足でごめんね。」「鮭、鮭」二人がそれぞれに、ひとり言を言いながら「ありがとうございました」と救急室のドアから出て行った。
「お大事にどうぞ~」なんだかめずらしく、心穏やかにそう言えた。
さ、次の開放骨折の受け入れしなきゃ!救急室に休みはないんだから
ん?あたし、何かまだ。。。
やっぱり、あのお母さん裸足で帰しちゃだめだ!どうせ、汚いし裸足でいいっか。ちょっとだけそう思った事を、後悔した。
急いで、病院のスリッパを持って救急室を出ると、既に朝日が病院内に差し込んでいる。もう朝だ
すでに朝の外来待ちの人たちが大勢いる。
あの親子は・・・いた!
「もしよろしければ、これ、お貸しします。使ってください。」
「忙しいのに、気づいてくれたの?わざわざありがとう。でももう大丈夫なのよ」
そう言って、ステキな笑顔で娘は、ブランケットをめくって母親の足元を私に見せた。
毛糸の靴下を履いている「私のを脱いで履かせたの。売店の靴は高いし、おかあさんスリッパじゃ上手に歩けないから。それに毛糸なら寒くないし。でもおかげでわたしはこれ」娘さんは素足にサンダル姿になっていた。でもやっぱりステキな笑顔だ。
多くの人のいる場所で、大人の女性が自分の靴下を脱いで母親に履かせる。それは思いやりや優しさや、家族の絆がなければできない行為だ。尊いと思った。お金はなくても、愛情がある。自分のできる事を、惜しみなく母親にしている。スリッパでは歩きづらい問題も、見事にクリアしている。
私の中で、多くの感情がこみ上げた。思わず、おばあちゃんに話しかけた「○○さん、優しい娘さんですね」するとおばあちゃん、「分かってるわよ」とステキな笑顔で笑った。一瞬だけど、確かに笑った。
朝日が、ちょうど二人を包むように差し込んで、二人の姿が輝いた。「まぶしいね、お母さん」「おなかすいた」
二人は本当に美しかった。
これからもここで、働いていこう。
やっと!
やっとできました![]()
パソコンの操作が苦手だから、思ってるより時間かかってますからね![]()
倍くらい、かかってますから![]()
さてさて、病院ネタなのに、なぜベルサイユ
なのかというと。。。
これから書く内容が、きっととってもカオスな内容になるからせめて、景色だけでも広々と、厳かで、美しくしようと思ったんです![]()
あたしは、救急室の扉の向こうで起こる、様々な出来事を、ありのまま
書いていこうと思ってます。
だって、ノンフィクションよりよっぽど、ドラマティックなんだもん![]()
けれど、重ねてお伝えしておきます。そのドラマは決してトレンディドラマではありません・・・![]()
