二人でソファーに腰掛けると、友梨奈が口を開いた。

「理佐…ごめんなさい
あの時、私は逃げた。
理佐からも自分からも…
理佐に嫌われるくらいなら、このまま消えてしまおうと思ってた。
でも、理佐が忘れられなくて…
また戻って来てしまった…ごめんね」

「友梨奈…いいよ…戻って来てくれたなら、それでいい…」

「でももう、逃げないよ
理佐と自分と、そして過去と向き合う
だから、聞いて」

そして、友梨奈は過去の過ちを話し始めた。


大学に入った時、親に頼らずに生きていこうと決めた友梨奈は、学費は奨学金で、生活費はアルバイトで賄おうとしていた。
けれど、そのバイト先でトラブルに巻き込まれ、結局、友梨奈だけが悪者にされてクビになった。
ますます人間不信になった友梨奈の生活は、荒れていった。
そんな時、ユイに声をかけられた。
仲間に入らないかと…
いつも5人位でつるんでいるグループで、そのコたちは金になることなら、何でもやっていた。
盗み、恐喝、美人局、そして売春まがいの援交…
元々、あまり評判の良くないグループだと知っていたが、半分投げやりな気持ちで、つるむようになった。
そしていつしか、ユイと身体を重ねるようになっていた。
ユイが好きになった訳ではないが、ユイに求められそんな関係になってしまった。
そしてある日、誰かが持ち込んだ危険ドラッグをやっている時に、警察に踏み込まれ、友梨奈以外の全員が逮捕された。
その時友梨奈は、単位を落としそうな授業に出ていて、難を逃れた。
そしてユイとは、そのまま自然消滅となっていった。

理佐は、泣きながらそう話す友梨奈の肩を抱き、手を握っていた。

「理佐…ごめん…
どうしてもこれだけは、理佐に言えなかった。
言ったら嫌われてしまうから…
それが怖くて…」

理佐は、ギュッと友梨奈を抱きしめた。

「友梨奈、ありがとう
ちゃんと話してくれて
辛かったよね…苦しかったよね
でも大丈夫だよ。
私は、友梨奈を嫌いになんかならないよ。もう二度と貴女を離さない…」

「理佐ぁ…」

お互いに、しっかりと抱き合う。

理佐も友梨奈と向き合い、友梨奈の過去をしっかりと受け入れた。
友梨奈となら、何があっても乗り越えられると思った。
そして、友梨奈と生きていく覚悟を決めた。

「友梨奈、今どこにいるの?
もしよかったら、ここにおいで
ここで一緒に暮らそ」

「理佐…ダメだよ…私なんかといたら、理佐に迷惑がかかっちゃう…」

「迷惑なんかじゃないよ。
どんな過去があったって…ううん
そんな過去があるから、今の友梨奈がいるんでしょ
もし、友梨奈が地獄に落ちるような事があっても、いいよ、友梨奈とならいいよ…
一緒に地獄に落ちても…」

「理佐…」

「だから、一緒に暮らそう」

「理佐…いいの?
私なんかが、理佐の傍にいてもいいの?」

「当たり前じゃない
友梨奈がいいの。
友梨奈じゃなきゃ駄目なの。
だから、一緒に生きていこう…ねっ」

「うん…うん……」

二人は、涙が止まらなかった。

友梨奈は、まっ正直で、不器用な生き方しか出来なかった。
あの時も、それは嘘だと否定すれば、二人ともこんなに苦しまないで済んだのかもしれない。
けれど、友梨奈は、そんな狡い生き方はしたくはなかった。
辛い事や苦しい事も多いけれど、だからこそ、それ以上に、幸せが大きいのだ。
今だってこんなにも、理佐に愛されてる。
それだけで友梨奈は十分だった。

そして友梨奈は、やっと自分の居場所を見つけた。
理佐と言う太陽に照らされ、消えずにいられる場所を……
理佐がいれば強くなれる。そう思う友梨奈だった。

二人は泣きながら口づけをした。



二人の涙は…


消えそうで消えない…


三日月の雫……






ーーーーーーーーーー完