「ねぇ、友梨奈も行くでしょ?
創立記念のパーティ」

「やだ、めんどくさい」

「ダメだよ、全員参加なんだから」

「え〜っ……理佐は?」

「もちろん、行くよ。一緒に行こ、ね」

「ん〜理佐が行くんなら…」

二人が勤める会社が、今年50周年を迎え、それを記念して社員全員参加のパーティを開く事になった。
そんなパーティなど、友梨奈にとっては苦痛でしかないのだが、理佐が行くと言うので渋々行くことになった。



当日、理佐と待ち合わせて会場に着くと、社員証を提示して、中に入っていく。
そこは、立食形式で自由に動けるようになっていた。
それだけが、友梨奈にとって救いだった。

殆どが知らない人だし、隅の方でじっとしてよう…

そう思って、友梨奈は理佐と一緒に、飲み物を片手に、壁際に陣取った。
暫く、社長だの専務だのよくわからないスピーチが長々と続き、ようやく乾杯をして、開放された。

暫く友梨奈と一緒にいた理佐だが、誰かに呼ばれ、ちょっとごめんね…と言って、行ってしまった。
友梨奈は、壁にもたれたまま、理佐を目で追う。
けっこうな人がいる中でも、理佐だけはすぐに見つける事ができる。
理佐は、数人の同僚に囲まれ、楽しそうに話しをしていた。

理佐って、やっぱり人気者なんだなぁ

そんな事を思いながら見ていると、一人だけ理佐に、ちょっかいを出している人がいた。
理佐も、まんざらではない様子で、その人のほっぺを突っついたり、髪を撫でたり、挙げ句ハグまでしている。

ん?…あれが葵さんて人かな?
妹みたいに可愛がっているって言ってたけど、あれはやり過ぎじゃない…
近すぎるよ…理佐のばか…

友梨奈は、一人でやきもきしていた。
理佐の一個下で、友梨奈にとっては先輩なのだが、童顔でとても年上とは思えないくらい、可愛らしい人だった。

理佐にとって葵は、本当の妹みたいに思っている子で、葵が入社して以来とても可愛がって来た。
時々、食事やショッピングに出かけたりしていた。
友梨奈も、話には聞いていたが、まさかあんなにベタベタだとは…それに理佐のあの笑顔…友梨奈が、ヤキモチをやくには十分だった。
友梨奈は、モヤモヤを抱えながら、けっこうなピッチでお酒を呑んでいた。