皆さん、こんにちは、あるいは、こんばんは ・・・
 



このブログに限らず、ながらスマホでの閲覧は禁止です。

直ぐにでも事故に合うか、起こすか?
被害者 か 加害者 か?
いずれにしても、バカバカしいことです。

二度とそのような愚かなことは止めましょう。

 



    《 キャラクター&キャスト 》

「 第一の聖者 」   木戸 十三 ・・・・・ 安〇  寛  
「 プロデューサー 」 林  光治 ・・・・・ 太〇  光
「 スタッフ A 」    武村 有史 ・・・・・ 田中 裕〇
「 スタッフ B 」    高田 俊之 ・・・・・ 柳沢 慎〇
「 アナウンサー 」  戸田 由紀子 ・・・・ 天海 祐〇
「 カメラマン 」   南  照夫 ・・・・・ 内村 照〇
「 ヘリの操縦士 」  内山  清 ・・・・・ 南原 清〇

「 町長の息子 」   秋山 ひさし・・・・・ 香川 照〇

  ( *カマキリ先生、私もカマキリ大好きですよ! )  
         
「 年寄り代表 」   島田宗次郎 (九十一才) 田中 邦〇
「 年寄り代表2 」  川村 サキ (八十一才) 泉 ピ〇子
「 川村サキの孫 」     洋子 (三十二才) 小林 綾〇
「 首相 」 副和  内夫 ・・・・・・・・・ 森〇 レオ

「 ついでに私 」うさぎの妖怪 (推定十万才?) ・・ 伊藤 敦〇

 それで、私のプロフィール画像ですが、この物語由来のうさぎであります。
 ポケットのネズミは、いずれ登場してまいります。

*カマキリ先生とは、
 香川さんが出演するNHK伝説の昆虫番組のことです。
 かなりの不定期ですが ・・・ 今、放送しておりませんね。

 

( 残念ながら、香川さんは性欲が暴走し、大不祥事を起こしました。)

 

 ただ、昆虫嫌いな方には文字通り虫唾が走る番組となります。
 でも虫は、地球環境を維持する為には最重要な役割を担っているのです。

 この偉大なる神の芸術を嫌いとは如何なものと思うのですが ・・・
 蝶とか蜂なんて最高のデザインではありませんか!!

 そりゃあ、ゴキゴキゴッキーナには虫唾が走りますが ・・・
 あたくしは正式名称呼びたくないくらい嫌いです!! 

 



        (推奨BGM)

  ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲  

       ピアノ・ソナタ 第二十三番 ヘ短調 作品五十七
  『 熱情 』 第一楽章 / マウリツィオ・ポリーニ (ピアノ)

 

 

 

 


        
     二〇XX年十二月十八日(木) 14:30
            カウントダウン ( 88:30 ) 
  


   え~~、テレビで見る限り、この場所は十和田湖南部の、
   十和田神社に近い湖畔のようです。 以下参照。   

      秘密のパワースポット 十和田湖 | 青森の魅力



「 おいっ、聖者が突然プロデューサーの目の前に
 現れたんだって、急にだぞ。拳三お前どう思う?」  剣三郎が言った。

「 ど、どうって、父さん、ああっ、写ったよ、あの人じゃないかな、ほら。」


 そこには精悍で、いかにも冷静沈着といった男性がどっしり立っていた。
  歳は五十位だろう。魂の光はかなり強く美しい。

   流石は聖者に相応しい人物であります。

  そして何やら、手に持ったフリップに指をさして
  プロデューサーらしき男に訴えている。

   恐らく、あのフリップには 「神裁きの三日間」 の掟の内容が
   書き記してあるのだろう。

  それを写せと迫っているに違いないが、
  あまりの恐ろしい内容に尻込みしているのでしょう。

  しかし人間には、もう止める術はありません。
  が、案の定、プロデューサーは
  カメラを向けないように指示を出したようです。

 群衆の怒号の中、女子アナも抗議しているようですが、
 んん~? プロデューサーの顔つきが変りました。

妙な事に、顔が青褪め目を見開いたまま、

頭を抱え立ち竦(すく)んでいるようです。

 

 面白くなってきました。

  業を煮やした女子アナがインタビューを始める模様です。


「 皆様、大変御見苦しい所をお見せ致しまして申し訳ございませんでした。
 プロデューサーは長い物には巻かれろのタイプですが私は違います。

 私は龍神様に命を救われ、この ピンクのジャージ を賜りました。

 これ一枚だけなのに、頭から指先に到るまでポカポカ暖かいのですから、
 もうありがたくて申し訳なくて仕方ありません。
 それに、こちらのカメラマンも命を救われた一人です。

 ですから、どんなことがあっても私は神様の味方をさせて頂きます。
 当然、聖者様もお守り致します。

 いいですねプロデューサー! えっ、どうしました?


  どうやら、金縛りに掛かっているようです。
  神様のどなたかの仕業でしょう。

  さっきから石になったように微動だにしない。
  ただ、息はしていますから御安心下さい。


「 ああ、はっ、林プロデューサーは、目と口が開いたまま閉じなくなり、
 ああ、足が地面にくっ付いたように、動かせなくなりました。
 両手も頭にくっ付いたまま、取れなくなった模様です。
 スタッフが動かそうとしても、びくともしません。

 神様の邪魔をするからこんなことになるのです。
 では聖者様にお話をお聞きしたいと思います。」


彼女は、気が変になりそうな自分を抑え、勢いに任せて聖者と相対した。


「 初めまして、わ、わたくし、雨森テレビの戸田由紀子と申します。
 スッピンで申し訳ございませんが、よ、宜しくお願い致します。」

「 こちらこそ宜しく。体が震えているが、大丈夫かな?」

「 は、はい、大丈夫です。これは単なる武者震いです。」

「 ははは、これは頼もしい。あなたの勇気に感謝します。
 よくがんばっていますね。では、申し訳ないがマイクをお借りしますよ。
 あなたには、これを持っていてもらいたいのだが、宜しいかな。」

「 も、勿論です。」 


 聖者は、戸田アナからマイクを受け取ると、フリップを彼女に渡した。 
 彼女は、聖者から労いの言葉を掛けてもらい、相当うれしかったようだ。


 ・・・ 私は間違っていない。

    良かった。本当に良かった ・・・


 と、心の中で繰り返している。    
 あれっ、テレビ映像なのに、その中の人物の心も読めます。

  これ、現地には行けないかな?

 うぬぬぬ、集中! ・・・ い~っ、来ちゃった!!!


また十和田湖! こりゃあいい!
どさくさに紛れて瞬間移動とは、ムフフ  ・・・



 それでは、桃色ジャージアナの近くに行っちゃおう ・・・

 しかし、健気にがんばっていますね彼女は ・・・
 私からも賛辞を送りましょう ・・・ あなたはエライッ!

  んっ、聞こえないか?
  でも守護霊が、怪訝そうな顔を彼女の頭の影から覗かせている。

   そうか、私は うさぎの妖怪 にしか見えてないんだった。

  このスーツは恐らく、神気を反射させるという性質から、
  私の魂やオーラの光も思考も、カムフラージュしてしまうのだろう。
  こりゃあ霊からすると、相当不気味に見えるのでしょうネェ。


「 あっ、どうも、私は怪しい者では御座いませんので ・・・ はは。」


  おっ、さっそく聖者の挨拶が聞けるようです。
  皆様、御静粛に ・・・


・・・ あっ、カラヤンさんに楽団の皆様。
     毎度、何曲もありがとうございます ・・・

 



        (推奨BGM)

 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
 交響曲 第五番 『 運命 』 ハ短調 作品六十七 「 第一楽章 」

   指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
   ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

 

 

 

 

 


 


 聖者は、群衆をその場で正座するよう命じました。
 息詰まる緊張は、きっと画面を通して全世界に伝わっているに違いない。


「 世界の同志同胞の皆様、そして日本国民の皆様。

私は御使いの神である大天使長ミカエル様から、                       
聖者としての御指名を賜った 

木戸十三(きど じゅうぞう) と申します。

私のような聖者は、世界各国に存在します。
その聖者の証は、この額と右の掌にある十字の痣です。

日本では十名選ばれました。

御神示を賜ったのは全世界で私が一番始めです。

 

他の者はこの全国中継のテレビを見るように、

神様が仕組んでおられます。

 それから神示を降ろした方が早いからです。

故に世界各国と日本の各都道府県のテレビ局やラジオ局には、
全面的な御協力を頂かなければなりません。

それと新聞社にもです。

新聞社にはすぐにでも号外を出して頂きます。
仮に報道規制を掛けようとする動きが政府にあったとすれば、
邪神に与(くみ)する者とし一時的に拘束されます。

 あのプロデューサーのように ・・・」


彼は、冷や汗まみれ、

ヨダレまみれの案山子となった男を指差して言った。

  そして続けた。


「 ですから、くれぐれも馬鹿な真似はなさらない事です。
 前置きはこの辺にして、本題に入ります。
 今から御神示の内容を、

 このフリップを使って御説明させて頂きます。」


  木戸はマイクを口元から離し、カメラマンに話しかけた。


「 カメラさん、これをアップで写して下さい。
   フリップと私を同時に写せますか?
       私は小さくで構いませんが?」

「 はい、それは大丈夫ですので、どうぞお話下さい。」

               
  坊主頭のカメラマンは青褪めた顔で答えた。


「では、心してお聞き下さい・・・

  この紙を少しずらしてくれるかな。」


なるほど、このフリップは厚紙にワープロで作成した
文書の紙を貼り付けたものだが、いきなり全部見えてしまっては
インパクトが強過ぎるので、もう一枚厚紙を用意して、
それで隠していた訳だ。

 短い時間でよく用意出来たものです。

神が選ばれた訳は、この辺も含めての事でしょう。
木戸十三という名も、天の岩戸や十三湖に関連があるのかもしれません。

 神仕組みとは水も漏らさぬと申しますが、
 この現界物質界は霊界の一部でしかありません。
 どの次元も密接に関わっています。

  私達の住む現界は、余りにも霊的物的な汚染の度が過ぎました。
  綺麗に掃除されて当然です。
  この先どうなるのでしょう。

 あなたも予想してみて下さい。

さて、聖者は戸田アナに指示していましたが、
彼女の精神状態は限界ギリギリといったところです。

 しかし、ここは世界に大和撫子ここに在りと示して欲しいものです。


木戸は、「神裁きの三日間」に於ける掟の三ヶ条 の内容を
一条から順に、坦々と読み上げた。

 項目が進むに連れ、皆、驚きの声を上げ、
 次第に血が凍りついていったようだ。

  直、声も出なくなり血の気も失せたようです。

 あなたには今一度時間を遡(さかのぼ)り、
 「神裁きの三日間」に於ける掟の三ヶ条 を御覧下さい。

 《 序章 》 〈 第九話 〉 主神の天意



 こうして始まった 『 神裁きの三日間 』 という正神軍からなる
 邪神軍への宣戦布告が、日本の十和田湖から発信されたのです。

ただ人間達には、地獄の宣告と受け止めた人もいるでしょうが ・・・

 戸田アナは無事大役を果たしました。

  その後はヘナヘナと膝から崩れ落ち、
  スタッフから車に運ばれていきましたが ・・・

 しかし、誰も声が出ないようです。

ここに集まった人は、報道関係者 7、80人にプラスして
付近住民300名程ですが、殆どの人は目と口が開いたままの放心状態。

 あまりの衝撃に皆正気ではいられないようです。

すすり泣く者、振るえが止まらない者、なにやら呟いている者、
中には心臓が止まりそうな者、十人十色。

 えー、ちょっと情けなくないですかねェ。

 ですが、一人だけ凄まじい気を膨らませる者がおりました。
 暫く静観していた聖者の木戸十三です。

 握り拳を震わせていますが、怒りを抑えつつ                    
 近くのテレビ局スタッフに何か言伝をしているようです。

  暫くして、スタッフ2人は戸田アナを連れて来ました。


「 あああ、あのつ、連れて参りました。
 他に何か用があれば、何なりとおっしゃって下さい。
 もう何でもやりますので・・・」

「 ありがとうございました。もう下がって頂いて結構ですよ。」


  汗だくで落ち着きのない青褪めたスタッフに、
  木戸は礼を言うと静かに戸田アナの目を見つめ、
  落ち着いた声でこう言いました。


「 戸田さんも含め、ここにいる人は神に選ばれた人が多いのですよ。
 つまり世界に、霊の元つ国の代表であることを
 知らしめなければならないのです。

 あなたは、特に神様から頂き物をされたのでしょう。
 その御礼も含めて、与えられた使命を果たさなければなりません。
 それなのに、車で休んでいるなど許されないことですよ。

 いいですね、私が今から世界を意識しながら、これからの心構えと、
 それぞれが成すべき事柄を述べますから、
 しっかり、下腹に力を込めて一言一句聞き逃さないようにするのですよ。
 いいですね。」


「 はい、胆に銘じます。」

   
  彼女は、大きく力強く返事をしました。

 聖者木戸の話し方は、説得力もさることながら、
  その言葉に強く深い愛の波動を乗せているようです。

 その想いが彼女の心と魂に強く響き、
 全身から沸々と湧き上がる力を感じます。

 もう少しで大きく覚醒するような気がしてなりません。
 先が楽しみです。

聖者木戸が、戸田アナにニコッ、と微笑むと、再び群衆に向かいました。


「 みなさん、四時間程前この十和田湖で光龍神様が御出現されました。

 この聖なる湖の近隣にお住まいの皆様は、
 深く神様との御縁があるのです。
 ですから、その自覚と強い誇りを持って頂かないと困ります。

  ところが、こうして見渡すと悲壮感が漂い、
  まるでお通夜のようではありませんか。

 こんなだから島国根性だのサムライは死んだなどと、
 世界の人に馬鹿にされるのです。

  いいですか、世界の国々に島などありません!

 この世界は、神の国の大地しかなく、海というのは
 その大地の上の水溜りに過ぎません。


  皆、海の底は繋がっているのです。
  地球儀を見れば分かるでしょう。

 地球は元一つ、世界は元一つ、人類は元一つ、万教の元又一つ!
 この地球には神の子という人種しかいないのです。


  人類は皆、家族であり同志同胞であります。
  誰しも、赤い神の血が流れているでしょう!

         
その神の子の霊成形(ひながた)は、

この日本で創造なされたのです。
その霊成形を創造遊ばされた神というのが、
この地に御出現された龍神様なのです。

 その神の御名は、大黒天様と申されます。

 更にその上の御神格の大神様もいらっしゃいます。

そして、その神々すら御生みになられた最も偉大なる神が
全次元宇宙の創造主である主神様なのです。

 更に、その神々の直系が歴代の日本の天皇、
 別名 スメラミコト様なのです。

それが理解できたら、
この醜態を世界の人々と、天皇陛下そして主神様にぃ、
お見せして恥ずかしくはないのですかぁ!


 さあ、うろたえている場合ではありません。
 みなさん、気合を入れ直して下さい!」



 それを聞いた群衆は顔付きが一変し、
 ようやく正気に戻ってきたようです。

  流石は第一の聖者です。

   凄まじい気迫! 大きな体が更に大きく見える。

    まるで、モーセです。

 
「 そんだぁ、聖者様のおっしゃる通りだあ!

 みんな、あの偉大なぁ龍神様のお姿を見た筈だぁ。
 わだしもこの目で確かに見だぁ。

 あの神様を直に見た者は、こごにいる我々だげだぁ。

 そんなら天皇陛下と日本の国民どぉ、
 世界の人達さ見本を示せなぐてば、末代までの恥さなるぞぉ!



  一人の中年男性が皆に呼び掛けました。
  おお、随分気合が入って来ました。
  そうこなくてはいけません。訛りもまたいいですね~。

 
「 そんだ、あんだの言う通りだ!
 おらほも、日本男児の心意気ば見せてやるべさ!」

 

  声でか過ぎ!


  今度は、ニューヨークヤンキースのキャップを被った
  お爺ちゃんが意気込みを見せた。

  木戸は嬉しそうにその様子を見ている。

  ・・・ん?  何やら後ろの方が騒がしい。 

  誰かが前の方に向かっている。


「 ば、ばあちゃん! ご、ごめんなさい。前ば空けて下さい。」


  若い女性の声がするが ・・・ お孫さんだろうか?


「 おい、前、開けてやって。」

「 ばあちゃん、足元危ないぞ、大丈夫だが?」


  周りの人が気遣っている。


「 おらほは大丈夫だ。聖者様さ、お会いすんだ。」


  雪上をヨロヨロとした足取りで、老婆がゆっくり近づいて来る。
  小さな体を震わせ今にも倒れそうだが、
  その鬼気迫る姿は見る者を圧倒した。
                   
 残り少ない歯を食い縛り唸りながら、
 白内障であろう濁った目を カ ッ、 と見開き、
 その後ろからオロオロと手を貸そうとする孫の手を振り払い

  彼女に向かってこう言った。


「 いいがぁ、洋子ぉ。

 今おらほだば、御先祖様や亡ぐなった爺ちゃんや、
 息子夫婦、あの世で見でいるべな。

 そんだどごさ、生ぎる気力も無ぐなって、
 寝たきりでお前に介護してもらって、
 甘えてばかりで申し訳ながった。

 おらほは、さっきの聖者様のお言葉ではっきり目ぇさ覚めだ。
 んだがら、もう甘えてはいらんねぇ。一人で歩ぐ。」


  その様子を見ていた木戸は老婆の元へ歩み寄り、
  片膝を付いて優しく話し掛けた。


「 お婆さん、お話は聞かせて頂きました。

 どうぞ何でも私にお話下さい。」


  そう言うと、木戸は老婆の小さなシワだらけの手を、
  神の愛で包み込むように両手で優しく握り締めた。


「 おおお、聖者様もったいないこどです。」


  老婆は木戸の顔を見ようと、潤んだ目を更に近付けた。


「 ああ、こりゃあ立派なお顔で~。 あ~、え~おどごだぁ。
 あっ、わ、わだしは 川村サキ ど 申します。もう八十を過ぎました。

 こっちは孫の洋子と申します。東京さ行った息子夫婦の子供だども、
 その息子夫婦は、あの悪魔のインフルエンザで亡ぐしましたぁ~。

  ああぁ~~っ、あっぐ ・・・ そ、そん時はこごがら、
  移動しちゃあなんねえと言われだので、
  わだしらは遺体にすら会うことも適わずにおりました。

 そんな訳ですから亡ぐなった息子夫婦の分まで
 祈らねばなんねえと思います。

  聖者様、わだしは命ば御捧げして、
  神様と天皇陛下の為に最期の御奉公さ、さしてもらいます。

 そんでなげれば、死ぬに死ねません。
 そんだけ聞いてもらいだくて参りました。

  話ば聞いて下さって本当にありがとうございますだ。」


   周りの者は皆、涙していた。
   そして木戸の流した大粒の涙は頬を伝い、
   握った老婆の手を濡らしていた。


「 わ、わだしも、ばあちゃんと一緒に一生懸命祈らせて頂きます。ううぅ 」


  そう言って洋子は老婆と共に咽(むせ)び泣いた。

  すると木戸は立ち上がり急に表情を変え、顔が青褪めてきた。
  何故なのか? 私には分かった。

  それが、ミカエル様からの通信であることを。
  良い知らせではありません。ですが ・・・


「 川村さん、良くお聞き下さい。

 今、ミカエル様からの通信がありました。

  サキさん、あなたは二日後に肉体は力尽きて亡くなります。
  ですが、魂はその後も神の光玉の中で祈ることが出来ます。

 洋子さんと共に、三日間しっかり主神様と世界の人の為に
 祈ることが出来れば、

 インフルエンザで亡くされたあなた方の親族は、
 地獄の星への転生を免れ、
 故郷の星への帰還を許すと、直々のお言葉を賜りました。

 つまり、地獄へ堕ちる瀬戸際にある魂ということです。

  更に、あなたの亡くなった親族と息子さん夫婦そして旦那さんは、
  本来あるべき役目を外し、直接この地にて、
  あなた方の側で祈るお許しを頂いたのです。

 良かったですね。
 こんな特例は現時点で、あなた方だけですよ。」


 悪いことか? 良いことか? 判断は人それぞれです。

神の仕組みは全て善なるもの、大慈大悲の愛しかないのですが、
痛み苦しみや不幸は全て悪! と捉えるのは、愚かな人間の得意とする所。

 本来神鍛え神試しに加え、包み積んだ曇りを ミソギハラヒ、鍛え上げ、
 人間から神の子人へと昇華させるのが目的なのですが、
  迷惑がられては神様も立つ瀬が無いというものです。

   ただ、この方は違うようです。


「 聖者様ぁ、天使様からわだしらに、
 そんな有り難いお言葉を頂くとは思ってながったです。

  もぢろん、わだぐしはこの体がどうなろうと関係ないです。

 それより、わだしの親族ば救ってもらえる上に、
 この場所で一緒に祈ることさできるなんでごどは、
 なんと有り難いこどが、こりゃあ、益々燃えて来ましただ!

  わだぐしは、世界の年寄りの代表どして、死のうが何しようがぁ、
  命の限りに自分のお役目ば、
  全う致しますので宜しく御願い申します。



「 ちょ、ちょっと待ってけれ、ばあちゃん!

 あっ、わだしはこのばあちゃんの隣の家の島田宗次郎と言う者です。

 いいが、ばあちゃんよぐ聞げぇ! お前の骨は俺が拾ってやる。              
 洋子ちゃんの面倒も見でやる ・・・ 隣の好(よしみ)だがらな ・・・

 ほんでも、年寄りの代表は俺だ。俺は九十一だぁ ・・・ こどしでな。
 だから、お前が死んだら俺の隣さ座って祈れ!

   爺ちゃんと倅夫婦も一緒でな。

  ただな、俺はまだ死ぬわげにはいがねえ。
  わけえ者の面倒みるやづがいなぐなっからだ。

俺は男の根性なら誰にも負けねえ。
そのことさ神様と天皇陛下にお見せせねばまいねぇ!

そして大和魂ば世界の人さ示さねばまいねのだぁ!!



   言い終わるや否や、やんやの喝采である。

  このど根性爺ちゃんは、
  さっきのヤンキースの野球帽を被った爺ちゃんだ。
  小柄だが、仕事は農家なのだろう、腕っ節は強そうである。

   ついでに声がでかい。

  しかもこの寒いのに派手なセーターの袖をたくし上げ、
  下は作業ズボンと長靴だけである。

  それなのに、その体からは湯気が立ち昇っている。
  当然、顔も耳も真っ赤。

   その真っ赤な顔で更に気合を入れ大声で、
   先程から涙を流していた木戸に向かってこう言った。


「 聖者様、わだくしはこの部落の者ど一緒にぃ、
 全身さ気合入れで三日でも四日でも祈ります。

 飲まず食わずなんてのは戦時中よぐあることでしたぁ。
 んだがら、これからどうすればいいか、
 なんなりどおっしゃって下さい。

いいがぁ、お前らぁ、耳かっぽじってよぐ聞いどげぇ!」 



 涙を拭い気を落ち着けると、満足そうな顔で木戸は答えた。


「 良く分かりました。ではお話致します。

 まず、世界の皆さんに申し上げます。
 現時点で、既に各国の聖者には額と右掌に、
 私のような十字の痣が浮き出ている筈です。

 その痣は、他人が触れようとすると消えます。
 本人だけが触れられるのです。
 島田さん、私の右掌の十字の痣に触れてみて下さい。」


  木戸は後ろの人からも見えるように手を高く上げた。
  これにはど根性爺ちゃんも驚いた。

 それに合わせて、一度死に掛けた坊主頭のTVカメラマンも
 近付いて木戸の手を写した。

爺ちゃんが、恐る恐る一辺 3 センチ程の十字の痣に、
右手の人指し指でゆっくり触れると、その瞬間に フッ、 と痣が消えた。

 驚いて指を離すと痣が戻った。  
 次に、木戸が触れると痣は消えなかった。

  これには一同驚嘆の声を上げた。

    木戸は続けた。


「 これは神の業に他なりません。

 この十字の痣は聖者本人しか触れることができないのです。
 ですから聖者を気取った偽善者は、痣を触れれば分かるのです。

  誰も決して騙されないで下さい。

 直に全世界の聖者には、御使いの神より神示が降ります。

 一般の皆様、そして各国の大統領や首相や国王、
 各宗教団体の中心者に到るまで同様に、
 その聖者の言う事に従って行動して下さい。

  一切の邪なプライドを捨てることが肝要なのです。

 これから各国政府はあらゆる交通手段、
 勿論、軍隊の陸・海・空を総動員することも含まれます。

 それらをフル稼働して、          
 各国民を「 神の光玉 」へ安全且つ迅速に移動させて頂きたい。
     
  これは 御神勅(ごしんちょく) なのです。

  == 神の命令の意 ==

 他者を打ち負かして権力を手にして築いた城は、
 もう崩れているでしょう。

 そうなったのは神の意に沿わないからなのです。
 神に従わないということであれば、それまでなのです。

  今こそ全人類が団結し、
  神の子である証をお立てしなければならないのです。

 それ故、紛争戦争をしている愚かな国は、
 即、臨戦態勢を解き武器を排除し、人々の送迎に御協力頂きたい。

  各国の長は、即刻御決断なされることを神になり代わり、
  心からお願い申し上げます ・・・

 これは言うまでもありませんが「神の光玉」の中では、             
 誰しも屋外で地べたに跪(ひざまづ)いて祈って頂きます。

宗門宗派・老若男女・人種・貧富に係わらず、皆、神の子でありますから
全ての人が平等に扱われます。その事を、胆に銘じて頂きます。

 不平不満を言ったり、周りの迷惑を考えない行動は謹んで下さい。
 曇りを更に積んでしまうことになり「神の光玉」へ入る資格を失います。」


  木戸は少し間を置いて、ゆっくりと周りを見渡している。

  当然、皆 改めて事の重大性を認識したようで、
  顔が真っ青で声も出ないようである。

   あの爺ちゃんも例外ではない。


「 では、ここからは日本の私が担当する地区の神の光玉の場所と、
 これから国民の皆様にして頂きたい事をお話致します。

 とはいえ、世界共通の内容であることに変わりはございませんので、
 そのおつもりでお聞きください。」


  いよいよ、最も具体的な部分に触れようとしています。
  それだけに、皆、固唾を飲んで木戸を凝視しています。

  恐らくはテレビやパソコン、スマホの前の皆さんも ・・・


「 まず、私の担当する神の光玉の場所は、ここ十和田湖を中心とした、
 直径約三キロ圏内になります。

  ただ青森に限っては、もう一人聖者がおります。

 その聖者の名は、黒田吉枝 と言います。
 その方は梵珠山を中心とした、三キロ圏内担当になります。

 つまりは、青森の方は二箇所に別れ、いずれか近い方の神の光玉に
 入って頂ければいい訳です。

  因みに北海道の聖者は一人で、十勝岳周辺が神の光玉です。
  山形宮城は蔵王山周辺になります。

 岩手と秋田両県の県民の方は、青森の二箇所或いは蔵王の
 何れかに向かって頂きたいと思います。

 遠方の方は今すぐ御近所・御親戚の方々をお誘いし協力し合い、
 あらゆる交通機関を使って、目的地に向かって頂きたいと思います。

  その為には、行政や民間企業の協力が必要となります。

 万が一首相や各知事が、神も私の言う事も信じずに、
 協力どころか邪神に与して妨害工作に出るという事になれば、
 そのような命令を聞く必要はありません。

 各行政機関、地方自治体は独自に判断して行動して下さい。

  当然、自衛隊もです。

 但し、その際に暴力行為は決して行ってはなりません。
 神の光玉に入る資格を剥奪されかねません。

 如何ともし難い時は、神に祈れば、あのプロデューサーの様に
 神様が邪魔をさせないように仕組んで下さいます。

 ふっ、彼の事は忘れていましたが、問題ないでしょう。」


    木戸はプロデューサーを見て、思わず苦笑した。
    ただ爆笑するような姿でもない。

    なにせ見苦しいやら、哀れやら実に気の毒である。

    木戸は更に続けた。


「 私は今から神力をお借りして、
 この十和田湖上空三千メートルの空中に留まり、
 光の十字架となります。

  つまりは灯台のように、
  遥か彼方からでもこの場所が認識出来るようにとの、
  神様の御配慮なのです。

 今から何十万、
 何百万もの方々がこの場所を目指して集結して来ます。

 近場の方は急いで御自宅に戻り身支度を整え、
 御近所の方と共にこの場へ戻って下さい。

  但し、時間があるからといって入浴したり、
  食事をしたりということはしないで下さい。

 そんな暇があったら、早く祈る場所に座り、
 一人でも多くの方が無事に到着出来るように祈るのです。

  宜しいですね!」


 「「「 はは・・ はい ・・はい ・・・ 」」」


   ああ~、賛同の声を上げたのは、ほぼ全員だが、
   勢いが無い者が少なからずいたようだ。

   一同口には出さないが明らかに不満気だ。

    特に若い者は ・・・


( 嘘だろ、そごまでやんなきゃなんねえのかよ。
 最後の晩餐抜ぎで、三日も飯抜きじゃ、やってらんねえべよ。)


   彼の魂というチャクラの柱の光は随分黒ずんでいる。
   また何やら頭の周りから言霊に乗り、
   煤色の煙のような物が放出されている。

  これは濁微粒子という物だろう。
  臍付近のチャクラの光はまるで見えない。

 どす黒いヘドロのような物質で覆われているだけだ。
 表情はウンザリという顔 ・・・ 生気がまるで無い。

 

  オイオイ ・・・

 子供達はと言えば、随分前から嫌で帰りたがっていた。
 何せ中学生位の少年少女でも、

 現実に思えていない者が多数いるのだ。

考えていることはと言えば、幼稚極まりないことばかり。       
そこを親がなだめすかしていた。

 恐らくは、子供が行かない参加しないということになれば、
 最悪、暴力で従わせるか親も残るか離れ離れになるか?
 家族会議で話し合っても、まともな結論に達するのだろうか?

   中年層も似たようなものである。


( こりゃあ、えらいごどさなった。
 どうすんべ、内の子供さ言う事聞く訳ねえし、
 母ちゃんはあまり乗り気なさそうだし、
 どうやって連れてくればいいんだべか?
 困ったあ、困ったぁ ・・・ )


   気の弱そうなお父さんが、頭の中でぼやいた。


( なんてことだべ、内の婆ちゃんは寝たきりだし、
 この子は知恵遅れでわだしがいないと何にも出来ねえ人だし
 婆ちゃんとわだしがもし死んだら、この子はどうすんだべ ・・・)  


   落ち着きが無い少年の母は、涙を流しながら嘆いた。

  木戸は皆の様子を暫く見ていた。   
  どうやら、主だった人の心を読んでいるようだ。

  私が全体の心の割合を見てみると、
 腹が決まっている人は、およそ二割。

 嫌だけど止むを得ないと思っている人一割。
 迷っていて決められない人二割。

 理屈は分かるが参加したくない人二割。
 信じない人二割。
  状況が飲み込めていない人一割。


  半数の人は、今まで周りのノリに合わせていただけのようだ。
  現実とはこんなものである。

  この場でこの割合なのであれば、
  都会な程信じる割合が減少していくことになる。

 そして、政財界や官僚の皆さんが、
 どのような対応をするのかは見当が付きます。

 世論の反応を見ながら、などということはせず、
 即刻、聖者と名乗るものは逮捕し
 留置場に入れるということになるでしょう。 

つまりは、奇跡なるものはあったとしても、
明日からの三日間、強制的に経済活動をストップし、
死者が出る事も厭わないなどということは、

絶対受け入れないでしょう。

林プロデューサーの金縛りにしても、ヤラセだと決め付け、
龍神の出現も何もかも認めない、

全て見間違いと言い張れば良い訳です。

 今の段階で、首相は既に動いていることでしょう。

  あの首相なら間違いなく・・・


「 皆さん、良くお聞き下さい。

 先程は入浴や食事をしないでと申しましたが、
 強制ではありません。

 

神に対して全身全霊で祈るということですし、
その為の肉体的準備でありますから、

悪い事ではありません。

 ただ、最期かもしれないと思って食べ過ぎてお腹を壊せば、
 祈りに集中できません。それと、お酒は飲まないで頂きたい。

 酒を飲んだ人間は、やる気がないと神様から思われますから、
 神の光玉に入れないか、追放されます。

それに、神の光玉内はどのような場所でも気温は二十度に保たれます。
ロシアでも、アラスカでも ・・・ 勿論、ここでも ・・・

 いかがです? 神の大愛は ・・・

 また御近所で足が無い人が居れば、車で乗り合わせるように
 協力し合って頂きたいと思います。

御病気の方、一人暮らしの方、

周りにはたくさんいらっしゃいますので、
どうかその方々への気配りもお忘れなく。

 JRやバス会社、タクシー、運送業、各行政機関の方には
 全面的な御協力をお願い致します。

神裁きの三日間 後には、先祖・子孫共々繁栄すると共に、
神様から名誉あるみ役が与えられ、大きくお使い頂けると共に、
生かされる大きな喜びを御実感なされることでしょう。」


 木戸は今一度、皆の様子を霊眼で伺った。
 少しはやる気の度合いが上がったと感じたようだ。

実際に全体の志気はかなり上向いている。

彼は恐らく、皆の気持ちを推し量るべく、
先に入浴や食事の件を話したのだろう。

 飴と鞭をうまく使い分け、人をその気にさせる、
 その効果はあったということです。

  実にお見事と言う他ありません。

 

 



        ( 推奨 BGM ) 

  ヨハネス・ブラームス作曲 交響曲 第4番 ホ短調 作品98
   カラヤン&ベルリンフィル 

 

 

 




「 皆さん、先ほど私は神の光玉の場所は、
 この場を中心として三キロ圏内と申しましたが、
 はっきりとした境界線が無くてはなりません。

 その境界線は地面に線を引く訳にはいきませんが、
 なんら問題御座いません。その線は、もう敷かれてあります。

  物質では無い、霊の光を以ってです。

 その光は大きさ色、様々ですが幾重にもなり、
 日中でもはっきり肉眼で認識出来るようになっています。

  勿論、その光を消す事は出来ません。
  加えて人工衛星からも捉えることが可能だということです。

 どうぞ、世界中でその場所が示されておりますから、
 故障していない衛星を使って御確認下さい。
 そして、テレビかネットで公表して下さい。

神業なのですよ、皆さん。


そろそろ無神論者も、

その下らない信念を捨てた方が宜しいかと思います。

 もう一つ、明日の午前六時までに神の光玉に入られた方には、
 特典として神様から大変ありがたい御褒美があるそうですから、
 早くいらした方がよろしいですよ。

  ただ、それが何か今は言えません。」


  ここで木戸は、表情を曇らせ話すのを止めた。
  何かに集中している ・・・

  これはミカエル様からの通信だ。


「 皆さん、今、ミカエル様からの通信が御座いました。

 日本の首相、副和内雄さんが青森県警に
 私を逮捕するよう指示を出したとのことです。

 それとマスコミに、

 衛星で何が写っていても公表しないようにとも ・・・

 副和首相、あなたは金縛りではなく命を取るとの仰せです。

 ただし、即刻指示を取り消せば許すとのことですが、
 十秒だけ時間を差し上げます・・・」

 
  ・・・ 誰も声を上げない ・・・ 十秒はすぐ過ぎた。


「 残念です副和首相 ・・・ その気は無い様ですね。

 というより、まだ信じておられないようです。

 神の偉大さを、事の重大性を ・・・
 それでは国を任せられないとのこと ・・・

さようなら副和首相、あなたの命は後、三分です。    
有り難くも『 神の雷槍(らいそう) 』を以って絶命させるとの仰せです。

その三日後、あなたの魂は冥王星の宇宙刑務所に収監されます。
 お詫びをするのです。

  今すぐ、今っすぐにだああぁぁぁっ!!!」


 木戸の悲痛なる叫びが、静まり返った湖畔に空しく響いた ・・・
 木戸は暫く、やり場の無い怒りから来る体の振るえが治まるのを待った。

  が、依然空を睨み続ける木戸に対し、
  業を煮やされたであろうミカエル様から通信があったようだ。

 微かだが木戸のサードアイ・チャクラに向けて、
 光の念波ともいうべき波動が見えて取れる。

  その波動を通し、ミカエル様の言霊が響いてくるのだ。


(( 木戸よ、汝の気持ちは分かるが、彼の裁きはもう覆らない。

 他の者達が汝の言葉を待っている。

 今から更に、邪神軍と人間達の醜態を
 目の当たりにしなくてはならないのだ。

 感傷に浸っている暇は無い。続けるのだ。))



   ミカエル様のお言葉に、ハッ、と我に返った木戸は答えた。


(( 申し訳ございませんでした ミカエル様、仰せのままに致します。))


「 皆さん、申し訳ございませんでした。
 首相の事はどうにもなりません。

 話を続けます。先程から出来るだけ早く神の光玉に入られるようにと
 お話をしておりますが、それは何故か?

 それは、そう簡単に何事も無く、交通事故や人とのトラブルも無しに
 神の光玉に入れるか否かは、非常に難しいのです。

  邪神軍の妨害工作は、主に人間や動物を使います。
  副和首相もその一人。

 彼が死ねば副総理が警察や自衛隊を使って来るでしょう。
 しかし神の業により神の光玉の中にいる者には手を出せません。

神の光玉の境界線の内側には、
邪気が多い者の進入は出来ないのです。

ただし、神の業が行使されるのは、あくまで明日の午前7時以降です。
それまでは邪神の妨害、

そして己の邪気と戦わなければならないのです。
だからといって我先にという想念は

自己中心的発想ですので神は嫌われます。

問題が生じた時は周りの人と協力して、神に祈りつつ、

冷静且つ的確で迅速な状況判断を以って乗り越えて頂きたい。
 

もう一つ ・・・

神の光玉に行きたいと思っても状況が許さない人が
少なからずいらっしゃるでしょう。

その方は最後まで諦めないで下さい。お詫びと感謝で祈るのです。
さすれば神様のお慈悲が頂けることでしょう。」


 木戸は一旦深呼吸をすると、ゆっくり群衆の顔を見渡した。


「 皆さん、最後に一つ ・・・ 私はこれからこの上空に向かいます。
 ですから皆さんとは直接話しが出来なくなります。

 その際、私に成り代わり地上で多くの人に指示を与える補佐のみ役が
 必要となります。そのみ役は私が決める権限を与えられました。

その人とは、上空から私が思念波を用いて交信することが可能となります。
人数は現時点では分かりません。これから集まる人によるからです。

 何十人かの補佐役を任命致しますが、皆同時には交信は出来ません。

その為、必要に応じて私以外のお方、つまり御使いの神様が、
直接御指示なされるということも有り得るということになります。

 補佐役のみ役を頂かれた方は、しっかりその事を胆に銘じて頂きたい。

ただ、この場には三人おります。

その方は、島田宗次郎さん、戸田由紀子さん、

それから始めに御発言された、そちらの男性 ・・・ 

そう、あなたです。 お名前をお願いします。」


 どよめく群衆の中から、指名された中年男性が顔面蒼白で、
 どもりながら答えた。


「 わわっ、私は秋山ひさしと申しますが、きゅ、急に言われても ・・・」

「 なんだ~、町長の息子さんだべ。」


   中年女性が口を挟んだ。


「 拒否権はありません。神の勅命と同じなのです。


私に御神示があったのも急でしたが、即断致しました。

大変な名誉ですよ。

私の指示通り動いて下されば良いのですが、
勿論、自分で判断して動いて頂かなければ、神様から合格点は頂けません。

神の鍛えを楽しんで下さい。                             
直に、あなた方には右の掌に十字の痣が現れます。」


   皆、呆気に取られている。


「 ああっ、いでっ、なんだ? 急に手が熱ぐなっで ・・・?
            あれっ、もういだぐねぇ。」



   爺ちゃんが思わず口走った。
   三人共、右手を押さえている。


「 一つ、思念波が通じるか試してみましょう。
 いいですか、一人づつしか交信は出来ません。
         まず、島田さんから ・・・」

(( ・・・島田さん、聞こえますか? ・・・))

「 ああっ、聞こえだぁ。たんまげだこりゃあ!」


   島田の爺ちゃんは、頭を抱えて驚きの声を上げた。


「 あ、あの、心で念じて答えて下さい。」 彼は楽しげだ。

「 ああ、申しわげね。」

(( ・・・ ああ、あの聖者様、聞こえますか?・・・))

(( ・・・ はい、聞こえますよ ・・・))

「 あ、あへ~、すげえなこりゃ。」 爺ちゃんです。

「 では次、戸田さん。」


  木戸は他の二人共試し合った。 群衆は驚きの声を上げた。
  また少し、気持ちが高揚したようだ。

  木戸は次に、一般の方達との意思の疎通を図る為の道具として、
  拡声器や音響装置、トランシーバーその他を集めて頂く様に、
  皆にお願いをした。

  それにしても、広範囲の屋外ですから相当厳しいと思われます。
  それぞれの場所で連携を取るしかないでしょう。


「 いいですか、私は上空からいろいろ指示を出しますが、

 心は一つです。
 光の帯となって繋がるのです。

 そして、これから集まってくる人達とも

 一つにならなければいけません。

 その強い祈りと愛が大きな光の帯となって、
 まず光の灯台となった私の魂を中継し、                    
 霊峰富士の上空三千メートルに集束します。 

 そこに 『 神の光輪 』 と呼ばれるものがやがて出現致します。

 世界中から集められた愛の祈りの光が『 神の光輪 』となり、
 大きく成れば成る程、邪神軍団に打ち勝つ強力な武器になるのです。

 我々神の光玉に入った者の使命は、神の子が親を想う愛の光を
 『 神の光輪 』 にお届けし、その神の光輪を通して、
 主神様に強く働きかけることにあります。

  ですから邪神軍団と相対するのは物質的武器ではなく、
  主神様に対する愛情しか無いのです。

 その愛が主神様に通じた時に、邪神が巣くう地獄の世界から
 神が直接統治する愛和の天国文明が顕現されるのです。

 ですからその祈りには、         
 今まで主神様を蔑ろにしてきた、

 お詫びが一番重要となるのです。」


   木戸は目を閉じ、精神統一しているようです。
   そして、ミカエル様と交信を始めた。


(( ミカエル様、お願い致します。私を空へお運び下さい。))


(( うむ、承知した。 汝のこれまでの対応、見事であった。

   汝でなければ世界の聖者に先駆けての、
    主神様の御意志を伝えるのは困難だったであろう。
     礼を申すぞ。

      では、空へ送ろう。
      その前に皆に伝えよ。

     この神の光玉を守護されるのは、
    恐れ多くも日本全山を統括する、       
   大山津見神(おおやまつみのかみ)様 で在らせられる。

 邪神など恐れるに足らんのだ。さあ! ))



(( ははあ、畏まりましたあ!! )) 


  木戸のオーラと魂の火柱が、轟々と燃えるような光を発し始めた。
  これは、肉眼でも見えているようだ。

  群衆の度肝を抜く中、木戸はミカエル様の御言葉を皆に伝えると、
  更に気が膨れ上がり、全身に満ちた光が溢れるように放出された。


「 皆さん、私は空に昇ります。

そうなれば、こうして直に触れ合うことは出来なくなります。
繋がる手段は愛の祈りの波動のみ。

 一日一日と、人は肉体が主ではなく、
 魂が主であることをサトラれるでしょう。

これから、幾多の困難なる鍛えが待ち受けています。
何事にも、恐れず迷わず慌てず、皆心一つに一丸となって
主神様に想いを馳せるのです ・・・

 では、二十二日の午前七時に、神十字文明の曙、
 そして主神様をこの地上にお迎えさせて頂く喜びを、
 皆さんと共に味わう事を楽しみにしております。」


  木戸は言い終わると笑みを浮かべ、静かに合掌した。

 次に、合掌した手を前にゆっくり伸ばし、水平に広げ始めた。 
 腕が伸びきると、人型の十字架になっていた。
 その十字架は光の玉となり、どんどん光の強さが増して来る。

すると、次第に聖者木戸の体が地面から離れて行く ・・・
こうなると群衆は皆、口を開け目は見開いたままである。

 すると、その木戸を包んだ光の玉が、
 巨大な何者かの両手に包まれていると、皆、気付き始めた。

  薄っすらと見えてきたのは、なんと白銀の龍神の両手だった。

    龍神の頭部は、遥か上空にあったのだ。

 
「「「  あああーーっ、龍神様だあぁーっ!  」」」



   皆、驚きの連続で腰を抜かし、息も絶え絶えという感じである。

  龍神の姿がはっきりしてきた。
  そして、ゆっくり木戸の光の玉を掴んだまま昇って行った。

 この龍体はミカエル様のものだ。
 ここまで来ると、皆、今まで漠然とした意識しか無かった

神に対するイメージがはっきりし、且つ実感出来るようになって来ていた。
当然だ! 何しろ嫌というほど見て聞いて肌で感じているのだから。

群衆を見渡すと、腹が決まった割合が随分高まっている。
これは正神軍の作戦が大成功と言っていいでしょう。

 流石です。必要な所は邪神の抵抗など無意味とばかりに
 神の正義と力を行使する。

 それに、正神軍には秘策なるものはあっても、
 邪神のような下劣極まりない悪心邪心から発せられる謀略などは
 一切存在しない。

  常に 「 神試し 」「 神鍛え 」 という
  「 大慈大悲の大愛 」 でしかないのだ。 

   そして、それを乗り越えた者には、
   無限の天意に満ちた神理の道が広がっていくのだ。


この映像は世界中に流れているが、当然停電している地域や、
見捨てられた被災者、難民、失業者にホームレス。
そして辺境・秘境・戦争・紛争地域に、
正しく神の御意思が伝わるかは疑問だ。

 無理が有り過ぎる。止むを得ません。
 人間の責任。私の責任。あなたの責任。

  まずは、その重責が自分にあるとの認識を深めることなのです。

  ? 否、自分はこの世に生まれて、まだ数十年だ!
  重責を問われる言われはない! と思われても、
  あなたは既に転生を幾度も繰り返し、今日に至っております。

 ですから、知らぬ存ぜぬは通用しないのです!
 あなたの先祖はあなた自身だった。
 などというのは、よくあることです。



聖者木戸を抱えたミカエル様の龍体は、
八甲田山、岩木山を見下ろす程の高さにまで達した。

そこで速度が落ちてきた。
どうやら高度三千メートルに達したようだ。

 やがて木戸の体はミカエル様の御手から離された。
  その体は静止している。

   風の影響は無い。

   木戸は両手を広げたまま、この体勢を維持するようだ。

  これは磔ではない 「光の十字架 」 「光の灯台 」
  迷える子羊を導く為の希望の光なのだ。


さて、「神の光玉」「神の光輪」の意味が解き明かされました。
実に驚愕する内容です。

この先更に、様々な正神軍の作戦や秘策が明かされていくでしょう。
そして、邪神軍がどう対抗してくるのか?

 ゾクゾクわくわくしませんか?
 背筋が凍り付きますか?

   私も恐ろしいですが楽しみで仕方ありません。