《物作りの良さ》


 物作りは社会に必要な仕事の中でも特別です。使われる道具は時代とともに進化し、今まで必要だった雑用や力仕事が要らなくなり、機械を扱う仕事に置き換わります。


 多くの人に雑用や重労働をさせるのは人道上の面からあまりよくないので道具によって効率化することが大切です。


 製造業は手に職を付ける仕事で、技術の蓄積のある仕事です。仕事が出来ると女性にもモテます。


《発明》


 必要は発明の母と言われます。人類の道具はみんな最初は誰かのアイデアでした。


 何でも試して工夫して実験して、センスのいい形になるまで効率を極めます。速さを極めたチーターの体が美しい曲線を描くのと同じです。


◯ニーズ型 必要とされる物を作る

◯シーズ型 せっかく技術持ってるから何か作ろう

◯用途開発 今ある商品や技術の新しい使い道を作る


 技術という種は作り続けないと失くなります。


 発明するのは難しいですが、技術は作り続けていくうちに簡単化します。最初は技術を独占出来て徐々にマネされていきます。


《現場主義》


 現場主義とは、机上の空論してないでとにかく現場現物を見てみる、やってみる、試してみる、実験するという考え方です。

 警察の世界には現場百回という言葉もあります。何の証拠も残されてないような現場にも百回行けば何か見つかるということです。

 現場現物を見てるうちに物が物作りのヒントを教えてくれるんです。これが製造業流、物との会話の仕方です。


 松下幸之助さんが成功の秘訣は何かと聞かれたら「願うことだ」と言ってました。 製造業もスピリチュアルの教えと近いです。


《資本財》


 仕事道具を遊び道具としても使えるし、仕事道具で仕事道具を作ることも出来ます。


 道具も道具で作るんです。道具を作る道具のことを資本財と言います。物作りというのは元を辿ると自己生産に行き着きます。


◯工場の工作機械

◯工作機械の部品

◯部品を運ぶトラック

◯そのトラックの部品もトラックで運ぶ

◯船で船の燃料も運ぶ


 福岡の大川には昔、筏(いかだ)流しという文化がありました。川上で伐った丸木を川で筏にしてそれに乗って川下に運びそこでいろんな物を作るんです。

 アイロボットという映画ではロボットがロボットを作るのが描かれていました。


 資本財は災害で何もかも失ってまた1から作り直す時に必要なものです。道具で道具を作る流れは地球の生物の進化の系統樹のように人類の全ての道具で繋がってます。


《自転車》


 機械のエネルギーの流れがまるでお金の流れみたいだと思いました。

 自転車は、ベダルが動力源、チェーンで回転を速めて、タイヤの慣性の法則でエネルギーを増幅して、サドルに人を乗せて、ハンドルで方向性を決めて、止める時はブレーキをかけます。

 経営に置き換えるとペダルが収入源、チェーンは経費、慣性の法則はリピーター、サドルは人件費、ハンドルの操作は経営、そしてブレーキは休業です。


 自転車で漕ぐ力以上のスピードを出せるのは車輪の回転自体が目的だからです。水車、風車は回転がエネルギーを出すための手段に過ぎないのに対して、自転車の車輪の回転はエネルギーを出す手段であると同時に目的でもあります。


《所さんの世田谷ベース》


 所さんの世田谷ベースではおもちゃをいっぱい置いて発明もします。ゴミからアートを作ります。


《江戸っ子の数寄》


 紙をどれだけ薄く丈夫に作れるか試して競って上手く作れたら売ることも出来るという遊びをします。


 釘を一本も使わず家を建てることに大きなメリットはないけど難しいです。腕の見せ所であり職人の遊びです。


《縄文人と弥生人》


 高い技術を持ち他の文明とも交流します。そのための移動手段として船を使うのも文明です。


縄文土器、磨製石器、漆、船、釣り針、貝の首飾り


 弥生人は農具より武器より工具を多く作りました。農業だけの民族は搾取され、武器だけの民族は自分で作れません。生産性を高くするには工具を作ることだと当時から理解していました。


《魔法陣グルグル》


 僕の好きなアニメ魔法陣グルグルでも物作りが描かれています。


 トマくんは魔技師です。魔技師とは魔法のアイテムを作る人です。工夫のトマくんと呼ばれています。

 師匠に弟子入りして、作って売るのが修行になるといってアイテムを売るお店を作りました。

 鍋(なべ)や桶(おけ)を武器の材料として代用します。ゴミの山が宝の山に見えるタイプです。トマくんは工夫という名の魔法を手に入れました。


 ミグミグ族は主人公ククリの民族で、独自の技術を持っています。おもちゃや絵からヒントを得て魔法の宝を作ります。


 アダムスキーさんはミグミグ族の古代のアイテムを復活させ改良までしました。


 アラハビカという友好的なモンスターの村があり、ミグミグ族と技術が合わさって新しい技術が生まれていました。トマくんにとってすごく学びになる村です。


《未来メルヘンの物作り》


 僕の小説のテーマ未来メルヘンでは物事は出来るだけ簡単な方がいいと考えます。簡単主義といって作る人、使う人、トラブル対応など全ての立場で物事が簡単になるのを目指します。


 物と対話します。それによって一番有効の使い方が見つかりトラブルの解決策も見つかります。


 未来メルヘンシティの工場長、夕力(ゆうりき)さんは町の人が使う物を何でも自分たちで作る工場を作りました。


 トートバッグをナップサックに変えたいとか、ファスナーだけ替えたいとか、ズボンのウエストサイズだけ少し小さくしたいとか、100均で買った物をちょっとだけ補強して丈夫にしたいなどの要望もすぐ叶います。


 自分で作れば只で、作るために協力し合います。特許も企業秘密もなく、技術を簡単化しています。手品の種明かしのように簡単な技術は教えて逆に指導料を取ることもできます。


 現代の製造業はあまりにも作るのが難しいため自分では作れなくなっています。乗り物などは安全性のためという理由で勝手に作っちゃダメと言われてます。


 僕はそんなやり方だと自分で作れない人が量産されると思います。製造業者もあまりに分業が細分化され組織や機械に頼って作っているので一人じゃ作れないということもあるかもしれません。


 現代の日本人は自分で作った方が安いと気付かず損してると思います。1から自分で作るんじゃなく、仕上げだけでもいいです。単純労働者がやれば退屈な労働でも消費者がやれば楽しむことが出来てしかも技術が身に付きます。


 デモくんは工場の従業員の1人ですが、最初は単純作業に意味を見い出せませんでした。デモくんは自分だけの軽飛行機を持つのが夢で、軽飛行機の組み立ての仕事を任せてもらいたいと思ってました。

 仕事道具は稼ぐために投資されていて、仕事道具で仕事道具を作る連鎖が生まれてると教わりました。仕事は自分で作らないとないと言われました。

 軽飛行機を持つなら働いて稼いだお金で買うんじゃなくて仕事の道具として投資すればいいということを教わり、作業に意味を見い出してやる気を出しました。


 夢彦さんは主人公カイくんの血の繋がらない父親です。

 オーガナイザーという地面をちょっと浮いて走る乗り物を発明しています。

 ハイブリッドで燃費を良くするため日々改善を重ねています。菜の花からエネルギーを取りエネルギーは他のことにも使えます。つまり発電機にもなるんです。


《未来の技術》


 日本の工場ではすでに無人工場が実現しています。現場で働く人がいなくて作業は全てロボットが行ないUFOのコックピットのようなコントロールルームで機械を操作する人だけがいます。


 未来にはロボットがロボットを作ります。母親ロボットが出産もします。


 僕の小説「ロボット・ルートくんの成長物語」では人間とロボットの間で子どもを産む話も描きました。


 仕事も家事も全部ロボットがして、転送は一瞬、買い物に行く必要もありません。移動はテレポート、室内の移動は宙に浮く椅子に乗り、娯楽はバーチャルです。


 サーチアイは魔法陣グルグルのキャラですが、僕の小説では原作にない機能が付け加えられています。

 カメラで撮影してスクリーン式で見ることが出来るのに加え、冷蔵庫、コンロ、レンジ、クーラー、ボイラーの役割を1台でこなします。


《簡単主義》


 未来の仕事は何でも簡単です。


 現代では仕事が難しいということを理由に優劣や命令が正当化されています。究極的には自治が難しいから支配されるのも仕方ないと考えられています。


 仕事の簡単化は真の民主化です。未来の仕事は簡単なので自治が当たり前になります。そうすると支配するのは不可能になります。


《長坂真護(ながさかまご)さんのアート》


 長坂真護さんのことを紹介して今回の話を終わりにしたいと思います。


 長坂真護さんはガーナを拠点として活躍するアーティストです。この方のことは「5.値段の高いものを売る」という所で紹介した方が良かったかもしれませんがそれを書いた後に知ったのでここに書きます。


 長坂真護さんのアートはゴミから作ります。先進国から出たゴミがガーナに捨てられ、ガーナ人はそれを処分してリサイクルする危険な仕事をしていました。そんなガーナ人を助けたいと思って始めたのがこのアートです。


 ゴミを原材料にして絵画や立体的な工作を作ります。中には何億円という値段で売れるものもあります。ガーナのゴミをアートにしましたということをアピールして値段を高くします。


 アートを買うお金持ちにとってはチャリティへの寄付のようなものだし、アートの値段の付け方が怪しげなことが多い中で、このアートは確かに価値があるということを確認することができます。長坂真護さんが将来有名になるともっと値段が上がるので、買い手はそれに賭けてるという意味もあります。


 ガーナは物価が安いしスラムの人を雇えば特に安いです。そんな物価の安いガーナで何億円の単位のお金を動かせば負のレバレッジが働きそれを物価の高い日本で売るというビジネス的な戦略もあります。


 ガーナのビーチでゴミ掃除をしてその何十tものゴミを灰にして建築材のブロックにすることができます。またその灰をさらに押し固めれば人工ダイヤモンドにすることもできます。


 ゴミを宝にするという話は聞きますが、ここまで直接的なやり方をするのは初耳でした。


つづく