「ギリ様の仮のお城はこっちデシ。」
そこには巨大な摩天楼がそびえ立っていた。見た所入り口はなかった。けどチクリ魔ちゃんが壁に向かって、
「チクリ魔、ただいま帰りましたデシ。」
と言うと、壁は一瞬で開いて入り口になった。
「スゴイ、ハイテクですね。」
トマスキーくんは感心した。
そしてエレベーターに乗って屋上まで昇る。
辺り一面360°見渡す限り佐賀の町の夜景が広がっていた。空は満天の星空だった。
「素敵な景色。空中庭園みたい。」
夜空からは星が降っていた。
「今夜は星降る夜だね。」
チクリ魔ちゃんは屋上の中央部にあるステージに立つ。ステージには台座があった。
「さぁ、人形をここに置くデシ。」
「じゃあククリが踊りを踊ればお人形は元に戻るのね。」
ククリちゃんが踊ろうとすると、
「お待ちくだされ。人形の呪いはワシが解いて見せますゾ!」
キタキタオヤジが現われた。
「オヤジさん!何でここにいるの?」
ククリちゃんは驚いた。
「いやぁ、ここにはワシの踊りにピッタリな最高のステージがあると聞きましてな。そして今夜は星降る夜なので踊るのにちょうどいい日だと思いまして、踊りに来た所みなさんがいるではないですか? そこでワシの踊りをとくとご覧に入れようと思った次第ですゾ。」
「オヤジさんは後で好きなだけ踊っていいからちょっと先にククリに踊らせてほしいな。」
「分かりました。ではククリどのに譲りましょうゾ。」
そうしてようやくククリちゃんは踊り出した。魔法陣が描かれ、その中からレイドくんの人形が現われた。
僕は気付いた。
「レイドくんの人形だ。ということは魂はニケくんなんじゃないかな?」
レイドくんの人形は光とともに消え去り、中からニケくんが現われた。
「ニケ王子の復活だ!」
「ニケくん!」
ククリちゃんとニケくんの感動の再会。2人が抱き合おうとした瞬間、台座に置いてあったニケくんの人形が闇に覆われ、中からレイドくんが現われた。
「ちょっと待ったーッ!
ラッキースター、オレと勝負だ。このステージには、踊ることで見る人を魅了する魔法がかけられている。これまでのことはお前らをここにおびき寄せるための作戦だったのだ!」
「嘘つけ、嘘を。」
ニケくんはつっこむ。
レイドくんが踊り出すとニケくんは再び人形に戻った。
「そんな!ニケくん。」
ククリちゃんは心配気な顔をした。
僕は思い付いた。キタキタオヤジに踊らせればレイドくんの魔法を追い払えるんじゃないか?
「キタキタオヤジさん、あなたの番ですよ。踊って下さい。」
ところがその時オヤジは体のどこかがかゆいのにどこがかゆいのか分からなくていろんな場所を少しずつ搔いてた。
「えーぃ、かゆみなんぞに負けませんゾ。」
オヤジはかゆみを我慢しながら踊った。オヤジは踊りでレイドくんを攻撃した。レイドくんはかゆみを感じた。
「かゆい! なんだか急にかゆくなったぞ。」
レイドくんがひるんだ所でニケくんは人間に戻ったけど、ニケくんもまたかゆかった。
3人は踊ってはかき、踊ってはかきを繰り返し、しばらくして3人とも疲れた所を見計らい、
「ニケくん、オヤジさん、下って!」
ククリちゃんは踊り出した。
♪星屑のダンス踊ろうか? 響き渡る音に乗せて
流星アラウンド輪になれば、新たなページが開ける♪
ククリちゃんの踊りはレイドくんだけをステージから追い払ってレイドくんは遠くに飛んでいった。
「レイド様! 仕方ない、今日は引き上げるデシ。」
ククリちゃんとニケくんはステージに立って向かい合う。キタキタオヤジのことはトマスキーくんがステージから引き下ろした。
「ごめんな、心配かけて。」
「ニケくん無事でよかった。」
観客から拍手が巻き起こった。
僕も感動した。
「素晴らしいステージだったよ。」
ところがそこで朝日が昇った。すると今までステージを楽しんでた僕以外のみんなが急に人形になってしまった。
「どうして? まだ魔法が解けてないのかな?」
辺りは急に静まり返り、僕の声以外は何1つ音がしない静けさに包まれた。
ふしきがってると、
「逆よ。魔法が解けたの。今までのがみんな魔法で見た幻だったの。」
後ろから声がした。その人はひなたちゃんだった。
「どういうこと?」
ひなたちゃんは語り出す。
「今日の出来事はみんな、隆弘くんがククリちゃんたちと遊びたいって願ったことなの。それで私が同人の力を使ってシナリオを描いて見せたって訳。」
「じゃあ只の空想?」
よく見るとそこは佐賀県庁の最上階展望台だった。
「ここ、隆弘くんが好きだったでしょ?」
「あなた何者?」
「私も隆弘くんの夢から出た幻よ。私もそろそろ帰らないといけないわ。」
「ありがとう、いい夢見せてくれて。今日のことは大切な思い出として一生覚えておくよ。」
せめて人形だけでも記念に取っておこうと思ったけど人形も消えてしまった。
「バイバイ、みんな。」
僕は涙を流した。
僕がエレベーターで降りようとしたその時、また声がした。
「バイバイじゃないでしょ。おはようだよ。」
振り向くとそこにククリちゃんがいた。そして他のみんなもいた。
「みんな!」
「今日のことはみんな只のフィクションだけどククリたちはいつもそばにいるのよ。目覚めても夢見る気持ちを忘れなければね。」
♪満ちては欠け、夢は醒め、終わりが来たって何度でも新たな光が♪
おわり