今NHKで「オトナの一休さん」が放送中です。

 

 一休さんといっても昔のアニメとは違います。今放送中の一休さんは実話をちょっとアレンジした話です。

 

 一休さんといえば鮮やかなとんちが有名です。

 

「このはしわたるべからず。」と書いてある橋を見つけて、

「端を渡れないなら堂々と真ん中を渡ればいい。」と言った話。

 

「屏風のトラが夜中に暴れて困っている。」と言われると、

「退治しますので屏風から出して下さい。」と言った話。

 

「このはちみつは子どもには毒だからなめたらダメ。」と言われると、

 はちみつをなめた上で、壷を割って、

「壷を割ったので死んでお詫びしようと思ってはちみつをなめたのに死ねないのです。」と言った話。

 

 実はそういう話は後世になって付け加えられた作り話です。実際の一休さんはアニメ以上に破天荒な人でした。というわけで、実際の一休さんがどういう人だったか語ってみたいと思います。

 

 一休さんは室町時代、天皇家の息子として生まれました。将来天皇になることも可能だったんですが、天皇家は当時、醜い後継争いをしてたので、母親は一休さんを争いに巻き込みたくないと考え、お寺に出家させることにしました。

 

 子どもの頃はお坊さんになるための修行に熱心な小僧だったと言います。ですが、お寺の中でも身分の高さが重視される価値観がはびこっていて、一休さんは絶望しました。本来仏教ではみんな平等なはずだし、身分を巡る争いから逃れてきた一休さんにとって、それは悲しいことでした。

 

 一休さんは修行をしながら、どうしたらそういう争いのない世界になるのか悩みました。

 

 そしてある時悟ります。

 人生はあの世が本番、この世ではあの世の人生を一休みしに来た。一休さんは人生をこういう風に捉えました。そして「一休」という名前を与えられ、印可状を授けられようとしましたが、一休さんは印可状を拒否しました。

 印可状とは仏教で悟りを開いた証となるものです。一休さんは、悟りとは内面的なものであって、形だけの儀式によって認められるものではないと考えました。

 

 それから一休さんはガラッと生き方を変え、遊び人になりました。

 寺に閉じこもらず、毎日町を歩き回り、肉を食べ、女遊びをして、働いて、旅して、普通はお坊さんはしちゃいけないとされることをする破戒僧となりました。一休さんは、戒律などは、人を救うという仏教本来の目的と関係ない見せかけのものであって、守る価値はないと考えました。

 

 一方、一休さんがどうしても許せないものもありました。

 当時のお坊さんの間で印可状の売買が盛んでした。お金持ちの商人からお布施を取ったり、形式的な問答に答えさせただけで悟ったと見なし、印可状を渡してたんです。それは一休さんには認められないものでした。

 

 当時仏教は莫大な権力を持っていて、小作農民(土地を借りて利子を払っている農民)を搾取していました。農民もお金がないと仕事できない時代になっていて、農民も商人に農具などを買い物依存していました。そもそも日本社会にお金を広めたのが室町時代の仏教です。それは食料をお金で買うことで確保しようという考えです。

 でも結果的に生まれたのは、農民自身が飢えに苦しむという程の格差社会でした。

 

 以前は商人は身分の低い人とされていました。日本の権力者は農業と税で成り立つ縦社会を作ろうとしていたからです。

 でも室町時代には商人の中にお金持ちが多く現れました。農民にお金を貸して利子を取りお金儲けをして、権力者はそんな商人の経済力を頼りにするようになったんです。そこでそんな商人に印可状を売り、商人に高い身分を与えて、その代わり仏教はお金を稼ぐようになりました。

 

 一休さんはお金儲けするお坊さんを厳しく批判しました。そして清貧に生きたお坊さんを高く評価しながら、都会で遊び暮らす自分の生き方も肯定しました。それは民衆のためになる生き方は何か考えて出した結論でした。

 

 身分の低い人に威張る普通のお坊さんと違って、一休さんは誰とでも仲良くしたので庶民の人気者になりました。

 

 そして何年かが過ぎた時ある問題が起こりました。応仁の乱です。

 応仁の乱とは戦国時代が始まるきっかけになった戦争で、これによって京都は焼け野原になりました。以前の京都には平安貴族の知識や宝が数多く蓄えられていたはずですが、それも失われてしまいました。一休さんが住んでいた大徳寺も焼けてしまいました。

 

 この事件をきっかけに一休さんは再び生き方を変え、大徳寺復旧のために寄付集めに尽力しました。

 一休さんは最期まで一休さんらしく、民衆のため、仏教のために生きました。

 

 一休さんが亡くなった後も一休さんの教えは受け継がれています。僕も一休さんの生き方に共感します。