2005年11月25日5刷と記載がある「東京奇譚集」を持っている。村上春樹の作品だ。

その本の中に収録されている最後の話が「品川猿」。

読み終わった後、言い表せない感情が残った。そして私は時おりその本を取っては読み返している。

 

21歳の頃だったと思う。

大きな駅の駅ビルに母と2人来ていた時だったと思う。何をきっかけにそういう会話になったのかはもう忘れてしまったけど、母が「〇〇なんか産むんじゃなかった」と言った。そして口癖のように言う言葉「うち子たちはみんなだめ」と心底嫌気がさしたように言った。

 

母は幸せを見つけられない人だ。いつも何かに不満を抱いている。その理由は分からない。お見合いで同郷の父と知り合い結婚し、都会に出てきて近くには頼る人もなく、お金の援助もなく、一軒家を建てて、子供3人を大学まで出した。

子育てに日々の雑務、人間関係がそうさせたのかもしれない。

 

母は冷たい人だった。

分からない風を装って、平気なふりをして、見たくないものは見ないようにして母と接してきたと思う。でも、ずっと心の奥の方でいつも私を脅かしている。たくさん傷つけられてきた。

 

 

今、子供を産んで生活を送っている私にも母親の大変さ辛さは分かる。自分を幸せと思えない人は子供のことも幸せには導けない。不幸な方へ追いやる。


母がいた世界は不幸とか不安とか悔しさとか暗い感情で出来上がってしまっていた。

鎖は断ち切れず次の囚われる者を生み出していく。