人生の中でかつて一回だけ猫と一緒に暮らした事がある。



その猫は妹の職場の焼却炉の中に入れられていた。


ボイラーの係員さんが火をつける前に中を確認した時

微かに動くものを確認して、見ると

まだ目も開いていない子猫が一匹。


まだニャーと鳴けずにミィミィと小さな声しか出ていなかったと言う。


猫と解るとそのまま火をつける訳にもいかず

取り出したは良いけど

係の人が困っている と聞いた妹は

飼い主が見つかるまで

「しばらく預かるだけだから」と 家に入れた。




子供の頃から動物を飼いたいと願っていたけど

両親から許可が出ずに、

飼えなかった私達にとって

三日預ったらもう「ウチの子!」状態。



まだ目も開いていない子猫なので

哺乳瓶を買ってきてミルクをあげたり

獣医さんに連れて行って虫下しを飲ませたり

………

その猫は13歳になるまで私の生活を楽しませてくれた。




とても臆病な猫で

家族以外には心を開かず

来客があると一番奥の部屋のベッドの下に隠れてしまうほど臆病だった。

  何故にそれ程?



家族の中で一番構い倒した私だけは天敵視していたようで、

構いすぎた日は私の布団の上に仕返しをしていた。

 (私だけ…寝る時に布団の上に があった)汗うさぎ


それでもちゃんと家族認定してくれていたようで、

帰宅時には隠れることなく玄関に出迎えてくれるし

ご飯をあげたり、猫砂を取り替えたときには

「ありがとねぇ」とでも言うように

近寄って来て私の手をペロペロと舐めてくれた。




猫は腎臓が弱いから塩分は抑えるように獣医さんに注意されていた。

気を付けていたはずなのに

何故かポテトチップス、えびせんなどの塩っぱい袋菓子が大好きな猫だった。

      ワタシは与えていないよ!


晩年猫が弱ってきていた頃、

ある日

買ってきたばかりのテーブルの上に封を切っていないポテトチップスの袋を置いて寝た。

次の日の朝、

ポテトチップスの袋が食い開けられ 半分ほど中身がなくなっていた。

     あの袋を食いちぎるなんて!そんなに食べたかったの⁈


案の定 猫は数日後から体調を崩した。


どんどん食欲が落ち、最後は水しか飲まなくなった。

そんなある日、朝の出勤時にはなんともなかった車が

帰宅時に乗るとルームミラーがひび割れていた。


慌てて家に電話すると、午後1時過ぎに息をひきとったと言われた。


その日朝 母の櫛も折れてしまい

母は覚悟していたそうだが、

私が気にするといけないと思い黙って送り出してくれたらしい。



猫は家の守り神になってくれると聞く。


あの子に色々守られていたんだろうなと思う。


ポテトチップを食べなければもっと生きてくれたのかな、と思うこともあるが、

それよりも

最後に大好きなものを嫌って言う程食べてから旅立った!なら良かったな と思っている。



いろいろと不思議な子だった。



私の人生で唯一の猫。たぶん…。




その後は犬3匹