「あっ…じゃ、じゃあ、また…な…」


「う…うん、またね💦」


晴れた日の朝…

ホテルの前で、相手と別れ帰路に着く…


昨夜は飲み過ぎた…

バイト先の忘年会でも…ホテルに入ってからも…

部屋に設置してある冷蔵庫のアルコール類は、たぶん全部飲んだ…


はぁ…二日酔いはない…けど…


やらかしたわ…!

酔ってたからって…いや、酔って、全部 酒のせいにしたかったのかも…

でも…

でも…!

片想いしてる相手に何も行動起こせなくてイライラしてたからって…

相手も恋人と上手くいってなくてモヤモヤしてたらしいからって…


同じバイト先の…好きでもない相手と、あんなことやっちゃマズイだろ…!💦



今のバイト先に入って、調理場の大野くんに一目惚れした…

年齢も近いし、すぐ話せるようになった…何なら自宅も近いから、時々、2人で会ったりもするんだけど…

さすがに男同士だし…なかなか告白する勇気は持てなくて…

気づいたら、1年経ってた…


調理場スタッフの松本くんも、何か大野くんのこと狙ってるみたいで…実際、あの2人も仲良いみたいだし…

モヤモヤ、ムカムカするだけで、1歩も踏み出せないから、イライラだけ溜まっていって…


忘年会の日…ダメ元で大野くんに告ろうかって思ってたら、大野くんは欠席で…

風邪気味らしいって聞いたから、帰りに何か買って持っていこうか…なんて考えてたら、松本くんが、後で大野くん家に行くとか言ってて…


え…もしかして、2人…上手くいったとか?

そっからは、もうガンガン飲みだして…

隣の席で飲んでた相葉くんも浮かない顔してて…


二次会、バックレようかって…


気づいたら、ホテルの部屋であんなことに…


誰かに…

誰でもいいから、イライラをぶつけたかったんだよな…

だからってなぁ… 

はぁ… ため息、連発だ…


バイト先の…同じホールスタッフの相葉くん…

気まずいよなぁ… あ~…無かったことにしたい…(泣)



…なんて思ってたけど、シフト表見たら、遅番、早番でズレてたり、休みの日も別だから、年内は顔を合わさないで済むかも…

そういや、カラオケ店とこことバイト掛け持ちしてるって言ってたよな…

あ、だから、シフトも毎日入ってないのか…

俺は平日は毎日いれてるからなぁ…

見栄はって、クリスマスの日は休みにしたけど…



「櫻井くん」


「えっ…あ、大野くん…」


「一緒に帰れる?」


「あ、うんうん」


大野くんとは、シフトの時間が同じ時は一緒に帰ったりしてる


大野くんは…クリスマスイブはどうするんだろ?

松本くんと会ったりすんのかな…聞いてみる…?


「ねぇ、櫻井くん」


「ん?えっ、何?」


「…24日の日って何してる?」


「え…と…」


「もう予定入ってる?」


「いや…入ってない…けど…」


「本当?」


「うん…」


え…もしかして…この流れ… ドキドキ…


「だったら、その日、会える?」


「え…うん、会えるっ…」


「じゃ、約束ね」


「うん…」


マジか…イブの日…大野くんから誘ってもらえた…!




24日当日…


大野くんと待ち合わせて、駅裏の小洒落た店に入った

ディナーは予約いっぱいだったけど、クリスマスランチてのやってて、そっちはまだ予約が出来た

こういうとこは、恋人と来るもんかもしれないけど…大野くんと来たかったんだよね…


ランチを終えて…駅ビルや地下街を歩いていく…

夜まで一緒にいられるんだろうか…


「次、どこ行く?」


「え~と…カラオケは?」


前に、バイト先の飲み会の二次会のカラオケで…大野くん、めっちゃ歌上手くてさ…また聞きたいって思ってたんだよな…


「カラオケかぁ…最近の曲、知らないけどいい?」


「俺もだよ」


「じゃあ行こっか」て…


あ…ここの店って…


そういえばって思い出す


「確か、相葉くん…ここのカラオケ店でバイトしてるらしい」


「そうなの?今日、入ってるのかな?」


「どうだろ…」


「なんか…相葉くん、今日 誕生日らしいよ」


「え…マジで?」


それなら、誕生日だしイブだし、いないかもな…(まだちょっと気まずいような…)


「覗いてみる?」


もしいたら、サプライズで『おめでとう』て部屋に呼ぼうかって…


その相葉くんのバイト先のカラオケ店に入ることになった…


2回自動ドアを開けて入っていくと、受付に相葉くんがいて…


俺らを見てビックリしてる…


「い…らっしゃいませ」


俺と相葉くんのことを知らない大野くんは、「えへへ、来ちゃった♪」て、無邪気に笑っている…


相葉くんの引きつった笑顔には気づかないふりをして、大野くんの可愛い笑顔を見ながら受付を済ませ、部屋に案内される…


大野くんに先に部屋に入るように促してると、後ろから相葉くんにゲシッと軽く蹴りを入れられる…


え?何?


気まずいのを誤魔化そうと笑うと、「ごゆっくりどうぞ」と相葉くんは戻っていった…


「…大丈夫?」


「えっ何が?」


「今……蹴られてなかった?」


「えっ…」


見られてたか…


「何か…したの?蹴られるようなこと…」


「え…と…」


こんなの、冗談でやったんじゃない?って、何とでも誤魔化せるのに…


俺を真っ直ぐ見つめる大野くんの目…


大野くん…


貴方には、誤魔化したり、嘘ついたり…


したくないんだ…