〈O〉



 ジャ~… キュッ


手を洗いながら、目の前の鏡の中の自分の顔をじっと見る…

凄いな、先輩のメイクテク…ちゃんと女の子に見えるもん…


会社の歓送迎会の余興で、同僚と女装して歌とダンスをした

先輩方がはりきって、ウィッグまで用意してたけど…僕は髪が伸びてたんで、セットするだけでいいわねって…

お化粧されて、見た目は完全に女の子に変身させられた…

早いとこ素の格好に戻りたいけど、一緒に女装した同僚は面白がって、帰るまでこのままでいるって…

まぁ、あと1時間くらいでお開きになるだろうし、二次会には行くつもりないから、このままでもいいか…


「あの…」


「え…」


「ここ…男子トイレですよ」


「えっ… あっ…/////」


この人…ここの店員さんだ…ウチの会社の宴会会場についててくれてたし、さっき、着替えするのに控え室みたいな所に案内してくれた時、女装する前に少し話したのにな…

僕の顔、覚えてないのかな…


「あの~…とりあえず、ここ出ませんか」


「あ…でもっ…」


「他の男性客が来たら驚くと思うので…すいませんが…」


そっか…このままだと、男子トイレにいる変態女になる?💦


「わかりました…」


おとなしく店員さんに従って、男子トイレから離れる


てゆーか、最初に見た時も思ったけど、この店員さん、すごいイケメンくんだよね♡

クリクリの目にぷるぷるの唇…すごくタイプの顔♪

けど、どう考えてもノーマルだと思うし、モテそうだし、恋人いるんだろうな…


「あ、じゃあ…すいませんでした」


「こちらこそ、すいませんでした」


イケメン店員さんにペコリと頭を下げ、宴会会場に戻ろうとしたら…


「あのっ…」と、その店員さんに呼び止められる


「…はい?」


「この後、二次会とか、行かれるんですか?」


「えっ…ううん…行かない…けど…」


「俺、あと1時間で上がりなんですけど…」


「うん…?」


「よ…良かったら、どこか飲みに行きませんか?」


えっ…えっ…? マジで? 嬉しいかも…


「それって…ナンパですか?」と聞くと…


「あ…はい…そうなります…/////」て、彼は照れくさそうに笑みを浮かべた


え…もしかして…彼も、こっち側の人なの?!

…と、一瞬 喜んだけど…

あ…僕の、この格好…

そうだよね…女性だと思って声かけられてるんだよね…

でも…僕、それでも彼のこと…/////


「あの…こっちも…それくらいでお開きになると思うんで…」


「ですよね…では、飲みに行ってくれますか?」


「はい…/////」


「良かった…あっ…」


「ん?」


「俺…お客様にこうやって声かけたの、初めてですから…」


「え…そうなの?」


「そうですよ…/////」


なんか…意外…あ、違うか…声かけなくても、勝手に相手から来るのか…

え…でも、自分からは初めてってことは…僕のこと…少しは気に入ってくれて…だよね…?

けど、僕が男ってわかったら、どう思うんだろ…


「では、終わったら、店の裏手でお待ちしてますので」


「はい…/////」


スマホの番号を交換して、後で、会う約束をした


ドキドキ…

良かったのかな…僕は嬉しいんだけど、なんか騙してるみたいで…

あとで、ちゃんと言わなきゃね…


宴会が終わるまでの時間…


この後、彼と会えることに、ソワソワして落ち着かなかった…



お開きとなった後、二次会組や帰宅組の人の輪から、そっと離れて、お店の裏側に移動した…

彼は、まだ来てない…

いいのかな…着替えようかと思ったけど、結局、女装したまま来ちゃった…



少しすると、裏口の扉から彼が出てきた


「お待たせしました」


「あ…お仕事、お疲れさまでした」


「あ…りがとうございます…え~と、行きましょうか」


「はい…」


彼は、エスコートするように、僕の腰辺りに手を添えて、ゆっくりと歩きだした


「この近くに、洋風居酒屋があるんですけど、そこでいいですか?」


「はい」



そのお店は、小ぢんまりとしたお洒落で落ち着く感じのお店で…席はテーブルごとに仕切られてて…

オーダーしたドリンクとお料理がテーブルに並んだら…もう2人だけの空間て感じ…

なんか…デートとかに使えそうなお店だな…よく利用してるのかな…


はっ…

余計なことは考えないっ…

プルプルっと首を横に振る


「あの…大丈夫ですか?」


「えっ…」


顔を上げると…グラスを持って、首を傾げる彼と目が合う…

あっ…カンパイだった💦


僕は、慌ててビールの入ったグラスを持ち上げる







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★こんにちはwいつも遊びに来てくださって、ありがとうございます!

『スレ違い』を読んでくださってる方、途中で別の短編を差し込んでごめんなさい…!

あのお話は…変則的に上げた理由が他にもあります…

読んだ方にだけ分かればいいんです♪


このお話は全6話です…前のお話とは全く関係ないお話です…

申し訳ないですが、6日間は、こちらのお話にお付き合いくださいませ…!m(_ _)m