〈O〉
ん?不在連絡票?
再配達、大変だから留守の時は、玄関横に置いといてって言ってあるのになぁ…
あ、下の店で預かってくれてるのか…明日にでも取りに行くかな…
下…といっても、マンションの階下…とかじゃなくて、山の麓のことなんだけど…
ここは、山の中腹にある、所謂 ポツンと一軒家になる…
じいちゃんとばあちゃんが生前住んでた家で、3年前に亡くなってから放置されてたんだけど…
僕は、ずっと ここみたいな山奥に 住みたいと思ってたんで、昨年、両親が この土地 どうしようかって言ってたんで、僕が住むって言ったら、住みやすいようにリノベーションしてくれた
30代半ばになって、漸く絵で食べていけるようになり、1階を住居、2階をアトリエにしてくれた…
友達のニノが、通信環境が無いと自分が ここに来れないからと、山奥にも関わらず、Wi-Fiが飛び交うスマホもPCも使えるように設置してくれた…
といっても、都会に住んでるニノが、ここに来ることはめったに無い…
ニノと一緒に引っ越しを手伝ってくれた潤くんは、GWとか長期連休の時に遊びに来てくれる
庭も広く、自分で食べるくらいの野菜は、ここで育ててる
野菜以外の食糧は、下の店に週1くらいで買い出しに行くか、お店で働いてる相葉ちゃんが軽トラで届けてくれる
だから、車は必須…免許は持ってたけど、都会に住んでた時は 車も必要無かったからさ…ここに来る前に練習したよね…
スーパーと薬局と雑貨屋が1つになったようなお店で、麓の集落には必要不可欠な場所なんだよね…もちろん僕にとっても…
そして…
必要不可欠な恋人の翔くん…
翔くんとは、中学生から一緒で、つき合ったのは、翔くんが大学を卒業してから…
都会に住んでた頃は、実家も近かったし、家を出て独り暮らしするようになった時も、2人近いアパートを借りて、頻繁に行き来していた…
ここに住むのを決めた時、僕は 翔くんに一緒に住まない?って誘ったんだけど…
翔くんは、山奥で暮らす自信がないって…
何で?けっこう快適なんだけどな…
でも、もおずっと一緒にいるからさ、遠距離恋愛も、新鮮でいいかもね♪って…
翔くんは、本当に山ん中で住むの?ってちょっと不服そうだったけどね…
お家って、住まないと傷むんだよね…僕は、じいちゃんばあちゃんが住んでた この家が大好きだし、無くしたくなかったんだよね…
まあ、住むとしても、もう少し先かな…とは思ってたけどね…
ここは、自然豊かで、四季も感じられるし…絵を描く僕にとっても、小説家の翔くんにとってもうってつけの場所だと思うんだけどね…
翔くんは、月1くらいで、僕に会いに来てくれる…来たら1週間くらい居てくれるんだけど…
毎月来て、1週間 ここに居られるなら、ずっと居れないか?って思うんだけど…やっぱり都会がいいのかなぁ…
まあ、毎月 来てくれるから、寂しくならずには済んでるんだけど…
やっぱり、雨の日とか肌寒い時とか、雪が深くなって、翔くんが来れない時とかあるとね…
人恋しくなるんだよ…
相葉ちゃんや潤くんが来てくれて、気は紛れるけど…僕の淋しいを埋められるのは、やっぱり翔くんだけなんだよね…
あ、そうだ…相葉ちゃんに受け取れなかった荷物、明日、取りに行くって連絡入れとこ…
スマホを取り出し、相葉ちゃんの番号をタップする…
『はいは~い』
「あ、相葉ちゃん?ごめん、今日、荷物 受け取り損ねた~」
『ああ!店で預かってるよ~!』
「明日、取りに行くからさ…」
『いいよ、いいよ、俺、届けるから♪けっこうあるしさ』
けっこうある…?重いのかな?
「届けてくれるの?」
『うんうん、明日の…昼過ぎくらいがいいかな…?』
「えと、何時でもいいよ?」
『じゃあ、昼過ぎがいいかな♪あと、もう少ししたら、1個 大物が 届くよ』
「え?今日?」
『そうそう、残りは明日ね~♪』
「?…うん、ありがと?」
『じゃあ、またね~♪』
「あ…うん…」
そうか…大物だから、玄関付近に置けなかったのかな…?いや、大物でもスペースあるけどな…
ピンコーン(ドアチャイムの音)
あ、もお来た!
「はぁ~い!」
玄関に走って、ドアを開けると…
「あ…こんにちは」
「え…なんで…?」
来るなんて、聞いてないよ…
「えへへ…来ちゃった…」
「平日だよ…?」
「…会社員じゃないから、関係ないよ」
「そ…だけど…どうしたの?」
「え…恋人に会いに来るのに理由いる?」
「あ…どうぞ…上がって…」
「…ただいま~」
えっ?…ただいま…って言った?
「…おかえり?」
「何で、疑問系なの?(笑)」
いや…なるよね…てゆーか…荷物…いつもめちゃめちゃ持ってくるのに…今日、少なくない?
「翔くん…泊まれるの?」
「あ~…うん」
「どれくらい?てか、荷物は…?」
ここにも多少、着替え置いてあるから、無くても全然いいけどさ…
「俺の荷物…受け取り損ねたんだよね?」
「あ、翔くんのだったのか!ごめん、明日、相葉ちゃんが届けてくれるって…」
「うん…さっき、聞いた」
「で、いつまでいられるの?」
ふわっ…
え…??
僕は、翔くんに抱きしめられていた…
僕も…翔くんの背中に腕を回した…
「ずっと…!」
「え…?」
「今日から…ずっと…智くんの傍にいさせて」
「翔…くん…?」
「…やっぱさ、智くんの傍が…俺のホームだと思ったんだ…!」
「僕の…傍…?」
「うん…俺も、ここに住みたい…!」
「翔くん…あ、だから、ただいま なの?」
「うん… いいかな…?」
「ふふ…おかえり、翔くん…!」
「ただいま、智くん…!」
この日の夜は…
一緒にお風呂に入り…
夜は、激しく抱き合い…
翌日は、お昼近くまで 2人とも爆睡…
ああ…
だから、相葉ちゃん…荷物届けるの、昼過ぎくらいがいいかなって 言ってたの…?(笑)
そして…
昼過ぎに、相葉ちゃんが届けてくれた荷物は…
「え?なっ…何これ…もしかして…全部、翔くんの?」
「うん…だいぶ、減らしたんだけど…」
減らしたんだけど…って…
これ、段ボール…20個近くない?!
ああ…そりゃあ、玄関の横には 置いとけないか…
相葉ちゃんは、店番あるから、手伝えないけど、ごめんね~て帰ってしまった…
マジか…この量を…2人で…
ま…仕方ない…やらないとね…!
僕は、腕捲りをして…
「よし!翔くん!今日中に片付けるよ…!」
「えっ…今日中?!」
「片づくまで、エッチお預けだからね」
「!?…やる!やります!今日中にっ!」
⭐★⭐★⭐
「ふぅ… 何とか終わったね」
「うん…」
まさか…本当に今日中に終わらせるとは…
「智くん、汗かいたし、お風呂入ろうか…」
「あ…翔くん、先にどうぞ…わあっ!」
翔くんに抱っこされる
「一緒に入れば いいでしょ♪」
そうして…
「…あっ…あっ…ん…翔く…ん……っ…」
昨夜よりも激しいのは…
気のせいじゃないよね…
翔くんは…
「山ん中に住むの不安だったけど…メリットもあるね♪」
「メリット…?」
「気兼ね無く、智くんを啼かせれる♪」
「…………!?/////」
あのね~…💦
山、最高~♪って…
うん…まぁ…
山に住むの不安そうだったけど…
翔くんが笑ってくれるなら…
最高って言ってくれるなら…
僕の傍がホームだって言ってくれるなら…
こんな幸せなことはないね♪
END