〈O〉


 僕の住んでる団地の裏にある公園…

公園の奥の方は 小高い丘みたいになってて… その丘の上から、夜は星がよく見えるんだ

時々、流れ星も見える…

僕は、時々 その丘から見える 一番星に願い事をするんだ…

小さい頃に母ちゃんに聞いたんだ…流れ星じゃなくても、願いは叶うんだ…


最初にした願いは何だったかな…あ、そうだ…

小学生の時、団地の隣の部屋に引っ越してきた同い年の君…

お母さんと一緒に 僕ん家に挨拶に来た君…

その頃は まだ小さくて、目はくりくりで 食べちゃいたいくらい可愛かった…

僕は、ひと目で 君のことかが気になって…その日の夜に、丘に登って…

僕のクラスに転入してしてきますようにって願ったんだ…

翌週、君は僕のクラスに転入してきたんだ…


『櫻井翔です、よろしくお願いします』って…


翔くんは、明るくて 頭も良くて すぐクラスの人気者になった…

僕とは団地の部屋が隣同士だから、学校の行き帰りは 一緒だった…

たぶん、2回目の願い事は、翔くんと もっと仲良くなれますように…だったと思う…


クラスも同じで、家も隣同士…お互いの家を行き来するようになって、僕と翔くんは急速に仲良くなっていった…

この頃、クラスは別だった同じ団地の 幼なじみの 和、マー君、潤くんとも 翔くんは すぐに仲良くなった…


そして…


中学に上がった時…


翔くんへの気持ちが、和達とは 違う想いなんだと気づく…

翔くんが僕を見つめると嬉しくて… 僕に触れるとドキドキするんだ…

こんなの…翔くん以外の人には 感じたことがない…

きっと 僕は…翔くんがこの団地に越してきて、僕ん家に挨拶に来た あの日から…

君に恋してたんだ…

だけど…僕の この気持ちは 知られないようにしないとね…

男同士だし…気持ちを知られて、翔くんと気まずくなりたくない…

ううん、翔くんは優しいから、もし僕の気持ちを知ったとしても 変わらずいてくれるとは思う…

でも、困らせたくないからね…このまま…こっそり 好きでいさせてね… 


そんな僕の気持ちに、和が 気づいた…


「翔ちゃんに言わないんですか?」

「…言えないよ…」


マー君と潤くんも 気づいたみたい…?けど、本人には、バレないもんだね… それで いいんだけどね…


(翔くんに、気持ちが届きますように…)


この想いだけは、何となく あの丘から見える一番星には願わなかった…

僕の中で、星に願うのは…そうなれるよう頑張るんで、力を貸してくださいって願うことで…

今まで願ってきたことは、100%叶ってきている

だから、あの丘から見える一番星に願えば…

願いが叶うは、僕の中でジンクスを越えてる…

だからかな…

叶いそうにない 翔くんへの想いは、願わないようにしてるのかもしれない… 

それでも…

星じゃなくて…君に そっと願う…

いつか…僕の想いが翔くんに届きますようにと…


そして…


その願いが…ほんの少し届いたかのように思えた…中学の卒業式の日…


式のあと…


正門付近で、クラスメートや他のクラスの同級生なんかと話したり写真を撮ったりして…

その後、同じ団地の5人で一緒に帰った…

途中、別の棟の和達と別れ、翔くんと2人になる


「ちょっと…裏の公園 行かない?」

「あ…うん…」


公園の丘の手前に置いてあるベンチに並んで座る

翔くんとは、高校が別々になってしまう…

だから、和には、告白しなさいよって言われたけど、やっぱり出来ないよ…


翔くんにドキドキしてるのを悟られないように…静かに深呼吸する…

ん?

なぜか、隣に座ってる翔くんも深呼吸してる…


「智くん…」

「ん?」


「俺… 智くんが好きだよ」

「えっ!?」


今… なんて…?


「小学生の頃から ずっと好きなんだ…」

「ええっ…?/////」


嘘っ…翔くんも僕のこと…? 

ビックリし過ぎて…固まってしまう…

僕もって、伝えなきゃって思うのに…泣き出しそうで 声にならない…

でもっ… 言わなきゃっ…


「あ…の… 僕…も…

「あ、返事は分かってるから、いらないよ…」

「えっ…」

「高校は別になっちゃうし、気持ち伝えたかっただけだから…」


伝えたかっただけ…?

僕の気持ちは…翔くんに伝えちゃいけないの…?


「…翔くんっ…/////」

「智くん…これからも、変わらず仲良くしてね」

「あ…うん……/////」


いや、そうじゃなくてっ…

僕も… 翔くんのこと 好きなのに…

結局、僕の気持ちは言えないまま…


じゃあ 帰ろうかって、家まで一緒に帰ってきて、玄関の前で 別れた…


そして…


春休みが終わり、高校へ…


僕は和と同じ高校へ… マー君と潤くんは僕達とは別の高校へ… 翔くんも また別の高校に進学した…


翔くんとは、学校が違うからか、朝、家を出るタイミングも、帰宅する時間帯も違うらしい…


高校生になって 間もなく…

翔くんは、女の子を家に連れ込むようになった…

翔くんの両親は、共働きで 帰ってくるのは夜 遅い…

なので、夕飯の時間くらいまでいることが多い…


「あ、翔ちゃん、また違う女、連れ込んでますよ」


双眼鏡を覗きながら、和が言う


「やめなよ、和…」


和の家は、僕と翔くんが住んでる向かいの棟で、住んでる階が同じだから、和の部屋から翔くん家のリビングが よく見えるらしい…


「だって、気になりません?」


そりゃ、気になるけどさ…


「覗き見は よくないよ…」

「見られて困るなら、カーテン閉めません?」

「…知らないよ」

「あ、キスした…」

「…っ… 和、もおっ…やめ…」

「…翔ちゃん、ひっぱたかれた」

「え…」

「あ、帰りましたね…」

「……………」

「たぶん、もう 今日の女の子は来ないでしょうね…」

「和っ!」

「あ…」


僕は、和から双眼鏡を取り上げ、ベッドに投げた


「何で、告白された時、自分もって言わなかったんです?」

「だって…」


言わせてもらえなかったんだもん…


なんで、こんな風になっちゃってるんだろ…


あの時、返事はいらないって言われても…僕の気持ちを翔くんに伝えていたら…何か違っていたんだろうか…

変わらず仲良くしてねって言ってたのに…

僕と翔くんは、家が隣同士にも関わらず、あまり顔を合わせなくなっていた…

そして、裏の公園の あの丘にも 行かなくなっていた…



高2になってから…


翔くんは 女の子を家に連れ込むことが無くなった(和調べ…)

もしかしたら、女の子の家の方に行ってるのかもしれないけど…


それ以降も、翔くんとはあまり顔を合わせないまま高校の卒業を迎える…


卒業式の後…


僕は久しぶりに 公園の丘の上に来ていた…

一番星に…勇気を貰おうと思ったんだ…

来月から 県外の大学に通う翔くん…団地を出て一人暮しをするらしいと母ちゃんから聞いた

僕も、4月から県外のデザイン学校に行くのに一人暮しを始める…

もう…本当に 翔くんと顔を合わせることも 無くなってしまう…


僕は…あの日 伝えれなかった君への想いを伝えたいと…

久しぶりに この丘に上り…


空を見上げ、一番星に 願いをかけた…








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★こんにちはw

いつも遊びに来てくたさってありがとうございます!

こちらの『negai 』と同時に、別部屋で『ねがい』てお話を上げています…

題名が同じだけど、また違うお話です…

片方は、ノートに書き上げてあって、もう片方は途中まで思いついてて、ラストどうしようかな…って、一時 放置してました…(笑)

書き上げてから、あ、この2つの短編、また前みたいに くきまるとSaori の部屋 別々に同時に上げようかなって…

どっちも片方の目線で、1話完結にしたかったんですけど…

『negai 』の方は、1話では収まらず、両目線になってしまいました…(^^;

なので、後編がまだあります…すいません…!

ではでは…

興味のある方は、また読んでみてくたさいね♪