〈O〉


  「翔くん、行ける?」

「はいっ」


定時になり、翔くんと2人 席を立つ…


出入り口付近で、岡田っちに声をかけられる


「大ちゃん、櫻井くん」


ま~た、この時間に 何か仕事 振られるのかと、ちょっと 不機嫌な声が出る…


「なんだよ?岡田っち…」


「いや、今日、昼間 資料 探してくれて ありがとうな!助かったよ」

「いえ、お役に立てて何よりです」

「そんだけ?」

「おお、お疲れさん!」

「お先に失礼します!」

「…お先~」


あいつ…ニヤニヤしてるし、帰ろうとしてるところに声かけてきて…絶対、わざとだろう…!


ま、残業は 大丈夫そうだな…


「翔くん、行こ」

「はいっ」


どうしようかな…

ビールは冷やしてあるけど…チューハイとかあった方が いいかなぁ…

食材は 特別 買い足すものはないけど…

あ~、でも お刺身とかは あった方が いいか…


「ちょっと、スーパー寄って いい?」

「もちろんです」


家の近所のスーパーに 着くと…

スッと翔くんが 買い物カゴを 持ってくれる


野菜コーナーは 通りすぎて、鮮魚コーナーへ…

どれが いいか聞くと、「ん~、この つぶ貝か赤貝のか…」

翔くんて、貝 好きなんだな♪


スーパーでの支払いは 翔くんがしてくれた…

外では 俺が 払うからって…え、それは ランチの時の 話じゃないの?

そんで、荷物も 俺が持ちますって…


僕ん家に到着して、リラックスして飲めるように スウェットを貸す…

やっぱ、僕のだと 翔くんには 少し小さいか…


「もうさ、翔くん用のスウェット、ここに 置いとけば?」

「え… いいの?」

「だって、これからも 来るでしょ?」

「あ…うんっ」

「今日、泊まってく?」

「…泊まって いいの?」

「いいよ、その方が 気兼ねなく飲めるでしょ」

「うん…じゃあ、お世話になります」

「んふふ…どうぞ♪あ、だったらさ、先にお風呂 入っちゃえば?」

「えっ…?」

「その間に 僕 つまみ 作っちゃうからさ、ねっ」

「あ~…じゃあ…」


やった…翔くん、泊まってくれるらしい…


てかさ…


今日の午後から…


あの資料室で 翔くんに…


『…智くん……俺……


あの時の、翔くんの 言葉が…


何、言いかけたの?って…


ずっと 気になってるんだよね…


続き、言ってくれないかなって…


もしかしたらって…


少しだけ 期待したりなんかして…


全然、見当違いかも しれないけど…


それでも、翔くんから…


続き、言ってほしいな…なんて思ってたけど…


もう、それは ちょっと 置いといて…


僕…翔くんに 告白しようかなって…


しても いいよね…?


だって… もう 日に日に 翔くんへの 気持ちが 大きくなって きててさ…


いつ 好きが 溢れて 決壊しても おかしくないんだもん…


連休に翔くんのおじいさんの家に 泊まった時…


海にドライブに行った時…


翔くんが 手を繋いでくれたの…


今日だって、資料室で あんなに密着してたのだって…


休憩所で、柔らけ~って僕の 頬っぺた つついてくるのも…


ずっと ドキドキが 止まんないんだから…/////


決めた…! 


僕…今日、翔くんに 好きだって言うよ…


飲み出すと 眠くなっちゃうかもだから… 

お疲れって 乾杯して すぐ 言おうかな…


「お風呂、お先でした」

「あ…もうすぐ 出来るから、テレビでも 見てて?」

「手伝わなくて いい?」

「うん、すぐ だからさ…」


翔くんが お風呂に入ってる間に作った、きんぴらと、だし巻き玉子…この前は たこわさに したから…今日は タコの唐揚げにして…

あとは、スーパーで買った 貝のお刺身を  テーブルに並べる


「よし、食べよっか」

「すっげ…旨そう…!」

「とりあえずビールで いいよね?」

「うん、あ、 持ってくよ」

「ありがとお…」


冷えたビールを グラスに注ぐ…


「「お疲れさま~」」


と グラスを合わせる🍻


ゴクゴクっと ビールを喉に 流しこむ 翔くんを見て…


そうだった… 告白 するんだった… と 少し 緊張して、落ち着かない…


とりあえず、1口は 飲んでも いいか…コクッとビールを飲む…


「旨いっ…」


て、翔くんが 言うけど、緊張して ビールの味が わかんない…


けど…決めたもん…!


好きだって… 言うんだから…


「いただきます」って、翔くんが 頬っぺたパンパンにして 僕の作った つまみを 食べてる…


うん… その 美味しそうな顔も 好きだよ…


僕は…翔くんが 好きなんだよ…


だから… 言うよ…


僕の気持ち… 


受け止めてくれる…?


「翔くん…」

「うん?何?」

「僕…」

「うん…」


「僕…翔くんが 好きだよ…」

「え…」


言った… 言っちゃった…!

あれ?


え… って、言ったっきり、翔くん、固まってない?


もしかして… 引いてる?困ってる?


「あの…翔くん?聞いてた?」

「あっ… 聞いてた、聞いてたよ…」

「え…と… 」


あ… やっぱり 困ってる…?


「智くんっ」

「え… はいっ?」

「俺も…」

「うん…?」

「俺も、智くんが 好きだよ」

「あ… 嘘っ…」

「嘘じゃないよ…」

「本当に?」

「うん…」


てか、なんか でも…微妙な感じに 思えるんだけど… 気のせい…?


「あ~…マジかっ! 」

「翔くん…?」

「いや、あの、すっげ~ 嬉しいんだけどさ…」

「うん…?」

「俺も…この後、好きだって 言うつもりで いたんだよ…」

「え、そおなの?」

「そうなの…!」


え~と… じゃあ…


「僕の勝ち…?(笑)」

「う~…なんか 悔しいっ…」

「んふふっ…」

「俺の負けかぁ(笑)」


勝負してた訳じゃないんだけどね…(笑)


でも…嬉しいっ…


翔くんも僕のこと…/////


告白してくれるつもりで いたんだ…


あ…そっか…


じゃあ、僕から 言わなくても、もしかしたら…あの続きを 言ってくれてたのか…


いや…あの時は 違うのかな…


そもそも なに 言おうとしてたんだろ…


「翔く…」
「智くんっ…」

「え…」
「あ、何?」

「翔くんから、どうぞ」

「あ…え~と、その…」

「うん、なぁに?」

「キス…したいなって…/////」

「…っ…/////」

「…いいかな?」


もお…好きだって伝え合ってるんだから…


「そういうのは、聞かなくても…んっ…」


翔くんの唇が 僕の唇に優しく重ねられる…


ああ…これだよね…翔くんの唇…柔らかい…


「…やっと…唇にキス できた…」

「…うん… んっ?唇… に…?」


唇以外には したことあるように 聞こえるんだけど…


「…あっ…/////」

「えっ…?」

「…智くん、ごめんなさい」

「え…なに?」

「俺… 眠ってる智くんに…/////」


「もしかして…翔くんも、寝てる時に キスしてくれてたの?」

「えっ… 翔くんも…って…?」

「ごめん…僕、連休の時…翔くんが ここに泊まった時に…」

「うん…?」

「翔くん、すぐ寝ちゃったからさ…その…眠ってる翔くんに…しちゃった…/////」

「え、マジで…/////」

「うん…/////」

「あ…でも、その時、俺も… 朝 起きた時、眠ってる智くんに キスしたよ…」

「ええっ…/////」

「いや、でも、頬っぺただよ…/////」

「う…うんっ…/////」


別に… 唇でも 良かったけど… だって、僕はあの時…翔くんの唇に キスしちゃったもん…/////


「あと…じいさんの家で…屋根裏で寝た時も した…」

「ええっ… あ…/////」


翔くんに、抱き寄せられて 頬にキスされた…


「その時も 頬っぺただったけど…んんっ…」


僕は、翔くんの背中に腕を回し…翔くんの唇にキスを落とした…


「もお…こっそり しなくて いいね♪」

「うん…いや、俺は たぶん これからも寝てる智くんにも キスするよ」

「え…あ…うん…/////」


たぶん…僕も 起きてても 寝てる時も 翔くんにキス するよね…


「はぁ… まさかだよなぁ…/////」

「ん?なに?」

「…智くんから 言ってくれるなんて、想定外だったから…」

「そおなの?」

「うん…俺…今日は3度目の正直で、告白しようって それしか考えてなかったから…智くんが好きって 言ってくれたの すぐに 理解出来なかったよ…(笑)」


ああ…そういえば、好きだって言った時、翔くん、一瞬 固まってたよね…

てゆーか、待って?えっ?


「3度目の正直って… ?」

「あ…俺、これまでに 2回 智くんに告白してるから…」

「そうなんだ…2回 僕に… ええええっ~?!」


嘘っ!いつ!?

僕、知らないよ~っ!


聞けば、連休中に 翔くんのおじいさんの家に泊まった 2日目の夜と…

この前の ドライブで海に行った帰りに、僕に告白してくれてたらしい…!


嘘でしょ~~!

なんで、僕、寝てんだよぉ~…!/////


「智くん…」

「えっ…」


ギュウ〰️と 翔くんに抱きしめられる…

僕も同じように 翔くんを抱きしめる…


「好きって 言ってくれて ありがとう」

「翔…くん…?」

「凄く 嬉しかった…」

「んふふ…負けかぁ…とか 言ってたのに…(笑)」

「あ~…うん…でも、やっぱり 嬉しかったよ」

「うん…僕も、嬉しい」


「けどさ…」

「ん?んっ…んんっ…」


翔くんは 啄むような キスを何度も落として…


「この先… 智くんと深い関係になっていって…」

「ん…」

「その時… 愛してる…は 俺から言うからね」

「~~~~~…!/////」


ドキドキが止まんないっ…

翔くんの胸に顔を埋める…


恥ずかしくて、顔が 上げられないっ…/////


翔くん、こういうとこが あるんだよっ…/////


あ~~…


たぶんさ…これ…


好きが 溢れて…


先に 言っちゃった…


僕の 負けなのかもね…/////