〈O〉


  先輩との出会いは、僕が 1年の時…


風邪で 学校を休んで、その時のノートを友達に借りたんだけど…

学校で やってしまおうと、放課後、図書室で 借りたノートを 写してると…

隣に 誰かが 座っていて…僕のことを見ていたんだ…


それが、翔先輩だった…


「キレイだな…」

「え…?」


キレイ? なにが…?


あれ…この人…

確か… 2年の…生徒会長の…

櫻井翔先輩じゃない…?


「いや、お前… 字が キレイだな」


あ…字ね… たまに 言われるけど…


「あ… 習字…習ってたから…かな…」

「うん、いいな…」

「ん…?」

「お前、名前は?」

「大野智…ですけど…」

「智か…お前、生徒会の書記に 決定な♪」

「はい?」


その後、僕がノートを写し終わるまで 待っててくれて… そのまま 生徒会室に 連れて行かれ、他の役員の人を 紹介された

副会長の相葉先輩、会計の二宮先輩…広報の松潤は、僕と 同じ 1年だって…

もう、「こいつ 大野智、書記に任命するから」ってその場で 言われて…


その時は…なんて 強引な… なんて、思っていたけど… 生徒会のメンバーは、良い人ばかりで…


そして…僕は…


翔先輩に だんだん 惹かれていったんだ…


翔先輩は、校内で 会うと、「智~♪」って、僕の髪を クシャッと 優しく撫でるんだ…

昼休憩は お弁当 食べてると、旨そうだなって、僕のおかず 食べたりして…

でも、美味しそうに食べてくれるから、おかず多めに作って詰めてきたりしてたよ…

生徒会室で 話してる時とか、僕の肩に手を置いたり、肩を組んだり…

翔先輩は、何気なくしてたのかもしれないけど、僕は ドキドキしてたよ…

体育の時間、グラウンドにいる時に、校舎から名前を 叫ばれたことも あった…

帰る方向が、途中まで 同じだから、一緒に帰ることも 何度もあった…

半ば 強引に 入れられた生徒会だったけど…


僕は… 生徒会のメンバーと いる時間が心地よく思っていたし…


そして、翔先輩のことが 好きになっていた…



そんな翔先輩と… 生徒会の先輩達が…


今日、卒業してしまう…


答辞を読む 翔先輩を 見てるだけで 泣きそうになる…


もう…翔先輩は 明日から 学校には いないんだ…

二宮先輩も、相葉先輩も…


思い出に…翔先輩の制服のボタン 欲しいな…


卒業式が 終わる…


先輩達は、まだ 名残惜しいのか 殆んどの人が まだ 帰らないで 同級生や後輩や先生と話してる


生徒会の先輩達は、女子生徒に 囲まれてて、近づくことが 出来ない…

ボタン…たぶん、無理だよね…

みんなに 取られちゃうんだろうな…

翔先輩の第2ボタン、欲しいのにな…


翔先輩… 好き…

でも 言えないよ…



翔先輩…

卒業 おめでとうございます…


僕のこと…

忘れないでね…


僕は、その場を そっと離れ…


1人で、思い出に浸ろうと…


翔先輩や、生徒会の先輩達と 思い出の詰まった生徒会室に 向かった…




〈S〉


  高2のある日…


先輩から 指名され、生徒会長を引き継いで間もない頃…


副会長、会計、広報は 決まっていたが、書記がまだ 決まってなくて、ちょうど探してた…

出来れば、女子生徒は 入れたくない… 男子生徒で…誰か いね~かな…


放課後、生徒会室に向かう 途中に寄った 図書室にいた1人の男子生徒が 目に入って…

そのキレイな 横顔に惹かれて… なぜか そいつの声が 聞きたくなって、隣に座っていた

所謂、一目惚れ…


何をしてるんだろうと見ると、ノートを写してるみたいで…しかも、字が 凄く キレイで…


ちょうどいいじゃん…

俺は、書記にスカウトしようと、この男子生徒に声をかけた


「キレイだな…」

「え…?」


こっち見た… てか、正面から 見ると 可愛いんだな… 女の子みたいな顔してる…


「いや、お前… 字が キレイだな」


字だけじゃね~けど…


「あ… 習字…習ってたから…かな?」


声も、好きかも…


「うん、いいな…」

「ん…?」


「お前、生徒会の書記に 決定な!」

「はい?」



男子生徒の 名前は 大野智… 1年らしい


こんな可愛い子が いるの…知らなかったな…


彼が ノートを写すのを 待って、もう その日の内に、生徒会のメンバーに 智を紹介した

半ば、強引に 生徒会に誘ったけど、智は 役員を引き受けてくれた…


智を好きになったのは いいが、自分の気持ちはなかなか 言い出せなくて…

でも、智と話したい、絡みたい一心で 在学中は何かとちょっかいを かけていた…

生徒会の他のメンバーとも 気が合うようで、昼休みなんかは、生徒会室で 皆で 一緒に弁当を食べたりしていた…

俺は、いつも 智の弁当のおかずを 何かしら取って食べてた…

だって、弁当のおかず 自分で作ることもあるって… こいつが 作ったやつ、食べたいじゃん?

校内で 会えば、声をかけたし、生徒会室で皆と話してる時は、智の隣に座り 肩に手を置いたり肩を組んだりしてた…

こいつは俺のだから、手を出すなよって…他のメンバーに牽制してたんだ…


結局… 智に 気持ちを伝えられないまま 卒業式を迎えてしまった…


今日こそは… あいつに 好きだって 言わね~と…


うちの学校は、好きな人同士 男子は第2ボタン、女子は スカーフを 交換する風習がある…


それに 倣って…俺は、智と 第2ボタンを交換して、気持ちを伝えようと思っていた…


卒業式が 終わり、体育館を 退場していく…


生徒会のメンバーは俺も含め、皆、女子に取り囲まれて…ボタンをねだられたり、後輩に花束を貰ったりしてる…


第2ボタンが 欲しいって言うやつが 何人か いたけど、俺のボタンは 答辞のあとに 取って、制服のポケットの中に しまったんで 既に 付いてない…

なぜか、他のボタンや、袖口のボタンまで 取られることに…スカーフは いらないと断った…


てゆーか、智が 見当たらないんだけど…

あいつ、どこ 行った?

まさか、帰ってねぇよな?


智と 同級生の 松潤に 聞くと、校舎の方に 歩いて行ったのを 見たと 言っていた…


ニノが、もしかしたら、生徒会室じゃないかって 言うんで…


俺は、ポケットの第2ボタンを 握りしめ、生徒会室に 急いだ…


昇降口を抜け、中央階段を駆け上がっていく…


3階の 一番奥が 生徒会室だ


部屋の 前で 呼吸を整え、扉を開けると…


そこには、泣きそうな顔をした 智が いた…




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



★本文には 入れませんでしたが、翔くんが 生徒会に女子を入れたくない 理由を 少し捕捉…



ちょうど 生徒会で書記を探してた

うちの学校は 生徒会の役員は 指名制だ

クラスの女子や、後輩なんかが やりたがってるけど、正直 女子は 遠慮したい…


1年の時に…

居残りで、たまたま1人の女子と 一緒に途中まで 一緒に帰ったことが あった…

その日限りの事だと 思っていたが、次の日以降も 待ってるようになって…

勘違いさせるような ことは 何も 言ってないのに…

毎日 一緒に帰る気はない って 言うと…泣き落とし…みたいな?

うざっ… としか 思えなかったわ…





というような 経緯が 過去にありました…(笑)