〈O〉


  ふぅ…  よしっ、こんなところかな…

時計を見ると、間もなく定時だ…

翔くんは、どんな感じかな?


「翔くん、定時で 上がれそう?」

「はい」

「どうする? 飲みに行く?」

「いいですね♪」

「ちょっと、トイレ行ってくるから、帰る準備してて?」

「はいっ」


廊下に出ると、外回りから戻ってきたらしい 岡田っちと すれ違う…


「岡田っち、お疲れ~」

「あ~、大ちゃん、もう上がり?」

「そおだけど…」

「そうか、や、お疲れさん!」


何となく 引っかかる…


トイレを済ませ、デスクに戻ると…


まだ翔くんは 終わってないようで、カタカタ入力作業をしていた…


もお… 定時は 回ったよね…


「翔くん、どんな感じ?」

「あ…大野先輩、すいません」

「ん?」

「ちょっと 岡田さんに 頼まれまして…」

「え?」

「なので、飲みに行くのは…」


やっぱりか!何か 嫌な予感したんだよ…

あいつ~…週末の こんな時間に 言いやがって…

て、仕事だから しゃ~ないんだけど…

てか、新人にじゃなくて 僕に言えっつ~の…!


「見せて」

「え…はい?」


岡田っちに 渡されたらしき資料を見る…


これなら、30…40分てとこか…だったら…


「半分、僕もやるから」

「え…でも…」

「飲みに行くんでしょ、20分で 終わらせるよっ」

「大野先輩…いいんですか?」

「口じゃなくて、手、動かすっ」

「あ…はいっ」


もう まわりは、お疲れさまです~ お先です~と疎らになっていく…


同じ部署だけど、別グループのニノは 受持っている仕事が 違うので、


「お二人さん、残業ですか、大変ですねぇ…お先に 失礼しますよ」


と、さっさと帰っていく

ニノに付いてる 新人の相葉ちゃんが 、「俺、何か手伝えますか?」なんて 言ってくれてるけど


「大丈夫だよ、ありがとね」


と、そのまま 上がってもらう


翔くんといい、この相葉ちゃんといい 今年の うちの部署に 来た新人は当たりだよね…


なんて、考えながら カタカタ 入力を続ける…


フロアに 僕と翔くんのキーボードを叩く音が カタカタ響く…


ふぅ…とりあえず こんなとこか…


チラリと 隣の翔くんを見る…


真剣な顔で PC画面を 見る その顔に 見とれる…


はぁ… やっぱり イケメンだよねぇ…/////


この顔 ずっと見れるんなら、もうちょい長めの残業でも、いいかも?(笑)

いや、やっぱり うめえ!って 頬っぺたパンパンにして モグモグしてる 翔くんも 捨てがたいっ

あ…こんな風にさ…首かしげて  僕のこと覗き込んでくる感じも…

て、えっ!?

目の前に 翔くんの顔がっ…/////


「ど…なっ… なにっ?」

「何…って… 終わりましたって…声 かけたんですけど…」

「え…」

「大野先輩 無反応なんで…」

「あっ… そか…ごめんっ、ポ~としちゃって…あ、僕も 終わってるよ」


あ~…ビックリした…/////

少し…前に出たら…

…キス出来る 距離だったじゃん…/////


ドキドキドキドキ…


チラリと翔くんを見る


プリントアウトしたのを クリアファイルに入れて、岡田っちのデスクマットに 挟んでる


「書き置きしといた方が いいですよね?」

「あ… 僕 書いとくから」


定時間際の 作業は、僕に 言うように 書き置きして デスクに挟む


「大野先輩、ありがとうございました」

「いいのいいの、逆だったら 手伝ってくれたでしょ?」

「もちろんです!」


ふふ…やっぱりね♪

てか、岡田っちも 翔くんに頼めば 僕が 手伝うだろうって、わかってて頼んだよな…


「どこ 行こうか?」


また僕ん家でも いいけど…


「あ、俺 行ってみたい店が あって…」

「じゃあ、そこ 行こうか」

「はい」


その店は、駅から 少しだけ 離れた 飲み屋で…

初めてのお店だから、ついキョロキョロしてしまう…

店内の照明は  明るすぎない感じで


へぇ…テーブルごとに 仕切られてるんだ…


席に着くと、翔くんと二人だけの 空間みたい…


「とりあえずビールですよね」

「だね♪」


先にビールを頼んで メニューを見る

創作料理かぁ… あ、でも ちゃんと 定番の つまみも あるんだ♪


「何に します?」


メニューを 僕に 見せやすいように 向けてくれる


「ん~とね…たこわさと…だし巻き玉子と…あとは 翔くん、好きなの 頼んでよ」

「じゃあ、適当に頼んじゃいますよ?」

「うん」


毎日、お昼ご飯 一緒に 食べてて 思ったんだけど、僕と翔くん たぶん 味覚が 同じな気がするんだよね…

だから、翔くんが頼んだ 料理は きっと 美味しいはず♪


店員がビールを運んできた時に、翔くんが おつまみを 何品か 頼んでくれる


「「お疲れ~!」」


カチンとジョッキを合わす🍺✨🍺


ゴクゴク…


「うんまぁ~!」

「うめえ…!」

「今日は、残業 お疲れさま!」

「智くんも、お疲れ」


あ… ♪


仕事モードから 切り替わったかな…


前に、僕ん家で 2人で飲んだ時に、翔くんに名前で 呼ぶように 言ったんだ

その日は 智くんて 呼んでくれて、タメ口で話してくれてたんだけど…

週明け、職場では また大野先輩で、敬語になってた…


なんで?って 聞いたら、やっぱり 職場では 先輩だし、きちんと した方が いいかと思って…だってさ…真面目だよね…

まあ、そんなところも 好きだけどね♪


僕は、呼び分けとか 面倒だし、そのまま 翔くんて 呼んじゃってるけどね


でね、仕事が終わって、職場を離れて…

少しすると、智くんって… 

敬語も タメ口に変わるの…


僕、この瞬間も けっこう 好きなんだよね…

あ~…その ネクタイ 緩める感じも いいよね♪


『お待たせしました』と、テーブルに料理が並んでいく…


「「いただきま~す」」


おつまみを 少しずつ 口に運ぶ…

うん、美味しい!このお店 当たりじゃん♪

翔くんは、いつものごとく はち切れそうな頬っぺたで…


「うめぇ~!」

「んふふ…♪」

「ん?何?」

「本当、美味しそうに 食べるよね♪」

「ふふ…旨い♪」


味覚が似てるのもあるけど、翔くんと一緒だと何でも 美味しいって 思えるんだよね…(笑)


「ん!これも 美味しいっ」

「どれ?」

「これ♪」


たこわさを お箸で 摘まんで 翔くんの口に運ぶ


パクって 食べて、翔くんのクリクリの目が 更に大きくなって…


「うんま~い♪」

「ねっ♪」


ああ… 


いいなぁ…!


仕事が どんなに 忙しくても…


残業に なっちゃっても…


こうして、翔くんと一緒に飲んで 食べて…


美味しいねって 笑ってると…


仕事の疲れも 吹き飛んじゃうね♪


僕は、翔くんに 毎日 恋してる…


ドキドキして


時々 キュッとなって…


フワフワして


一緒に いるのが 心地よく感じている…


いつまで…


フワフワしていられるかな…


翔くんの…


柔らかそうな 唇に 触れてみたいって…


その 低めの声で 僕の耳元で 囁いてよって…


翔くんの、そのキレイな指先で…


僕にも 触れてよって…


そんな欲望が…


見え隠れしてるんだけど…


んふふ…


翔くん…


僕のこと…


好きに なってよ…


ビールにじゃなくて…


僕に酔えば いいのに…









★『残業』てサブタイトルを 考えてくださったpiさん、Pさん、ありがとうございます!m(__)m