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  僕は、気になる人や 好きな人に対して、何とも思ってない ふりを してしまう…


小さい頃は、素直に 好きって 言えてた


たぶん、小、中学生の時に いいなって思った相手のことで からかわれたのが 嫌で…


それが原因で 素直になれなくなってしまったのかも…


小学生の時に、隣の席に座った 女の子が 優しい感じだったから、いいな~優しいな~って思ったんだ…

好きとか そんなハッキリした気持ちは 持ってなかったのに…


『大野くんて、◯◯ちゃんのこと(もお 名前は忘れた) 好きなんでしょ~』


て 言われて、まだ 好きって訳じゃなかったから


『違うよ!好きじゃないよ!』


て、言ったら、『◯◯ちゃんと ばっかり喋ってるじゃない』って…


だって…席が隣同士だし、喋るだろ…


『◯◯ちゃんは 好きじゃないって言ってたよ』って…


何で、それを 本人以外の人から 聞かされなきゃいけないの?


数人の女子に そんな風に 言われて… 女子って、束になると 怖いな…と感じた


そして、その女子達は、僕の隣の女の子に、


『ね~!◯◯ちゃんも、大野くんと喋るの 嫌だよね~?』


優しい感じで いいな と思ってた その子の口から、


『うん…迷惑だけど…隣の席だから…』


ショックだった…

そんな風に 思われてたんだって…


僕は、その時から、その隣の女の子とも クラスの女子達とも 口をきかなくなった…


今思えば、小学生あるあるな話なのかも しれないけれど、当時の 僕は そういう女子達を受け入れることが 出来なかった…


中学生になってからも、女子とは距離を置いて男子とばかり つるんでた


女子に対して、いいな と思うような事も もう無かったし、好きとかは まだ分からなかったけど、男子といる方が気が楽だった


中2の頃、まわりに けしかけられて、好きでもない女子と つき合わされそうになった…


僕に好意を持ってくれた女子も、けしかけるその女子の友達にも 嫌悪感しか 持てなかった…


もお… 女子は 無理…


高校は 男子校に進んだ…


女子が無理だからと言って、男子が好きな訳でもなかったけど…


男子校ってこともあって、男同士でつき合ってるやつも けっこう いた…


僕は、それに対しては 嫌悪感はなかった…


でも、この先… 男でも女でも… 性別に拘りは ないけれど… 人を 好きになれるのかは 疑問に思っていた


それに…好きになって、また その人と喋ったり一緒にいたりすると…からかわれるんじゃないかって…


高校生になってから、いいな…と思う人は 何人か いた…


でも、気になってる素振りは 見せなかったし、友達のままでも 平気だった…


高校卒業後…


僕は 大学には いかずに 就職した


叔父さんが経営してる会社ではあるけど…


一応、入社試験も受けて面接もしたよ


社会人になってからは、特に いいなと思う人もいなかった…


社会人1年目に 指導してくれた先輩と 数ヶ月だけ つき合ってはみた…


男同士でつき合うことに 興味はあったんだ…


先輩のことは もちろん 恋愛感情はないけれど、良い人だったし、つき合ってみたことも 後悔はしてない


先輩は、男も女も いける人で 所謂 バイセクシャル…

僕は、数ヶ月の間に、仕事と 男同士でつき合う ノウハウを先輩に 教わった


先輩とは 数ヶ月で円満に別れた… その先輩は 僕が 社会人3年目の頃に 違う部署の同期の人と同棲を始めた


社会人5年目になった 今でも、先輩とは交流があり 相談相手でもある先輩とは 時々 その同期の人も 交えて 飲んだりしている


先輩は、つき合ってた事も あって 僕が あまり恋愛に積極的じゃないことは 知っていた


思い起こしてみれば… 僕は 今まで まともに 人を 好きに なることは なかったのかもしれない


そうなる前に 気持ちにブレーキをかけたり、少し いいなと思っても、何とも思ってないふりをしたりして…


でもね…そうして 気持ちを抑えれるってことは…たぶん 本気で 好きじゃないってことかも…


そんな 僕の前に 現れたのが、今年の春から うちの会社に 入社した…


新入社員の 櫻井 翔くん…


「新人の櫻井翔です!これから ご指導 よろしくお願いいたします!」

「大野です、よろしくお願いします…」


僕は、彼の 指導係りに なる…


仕事は、僕が指導係だけど…




僕は… この 櫻井 翔くんに…




本気の恋愛というものを教えられることとなる