★翔くんversion




〈O〉


  こいつか… マー君が フラれた相手は…


学校の裏門の近くで、女子達に 囲まれ キャーキャー言われてる 人だかり…


その中心にいる 男子生徒を じっと 見る…


な~にが ハグ彼だ! 

1分間のハグで 千円?ぼったくりだろ!


確かに イケメンかも しんないけど…


櫻井 翔…


僕は 騙されないからな…!

マー君は、良いやつなのに… 振るなんて、許さないからっ…

て、そこは しょうがないか… いくら 良いやつでも 男同士… だもんね…


でもさ… ハグしてもらうのに…並んでる人の中に… 男子生徒も いるんだ…

あ、それは 僕もか…

ううんっ!僕はっ… マー君を 振ったこと文句 言いたいだけ…

いや… それも 変か…

僕に 文句言われる 筋合い ないよね…

てか、マー君のこと 思って… 勢いで、来ちゃったけど…

告白されたからって、タイプじゃない人とつき合うのは 僕も 無理だし…


あれ…?


そう思ったら… この人、別に 悪いこと した訳じゃないんだよね…


え、どおしよ… 文句 言うつもりで ハグ 予約 しちゃったじゃん…


キャンセル…する…?


次… 僕の番だけど…


今は 僕の前に並んでた女子が このハグ彼に 抱きしめられてるんだけど…


え… 何…?


前に並んでた女子を ハグしながら… 櫻井くん、僕のこと… めっちゃ 見てない?/////


てか… つぶらな瞳の 彼から… 僕は 目が 離せなくて…


「貴方の 番だよ、大野くん」


声をかけられるまで、見とれていたのに 気づかなかった…


あれ… 僕… 名前 言ったっけ… あ、予約した時に、言ったからかな…


…どうしたら、いいんだろ…


前の人とか どうしてた? いきなり 抱きついていいの? 待ってれば いいの?


じゃなくて! キャンセル… 


少し、離れたところに立ってた 仲介者みたいな男子生徒の方を見ると…


怪訝な顔つきで、僕と 櫻井くんの方に 歩いてきた


「大野くん?どうしたの?君の番でしょ?」

「そ…なんだけど…」


キャンセルするって… 言えば いいのに…何か、言えなくて…


「あ、初めてだっけ… 一応 ルール説明したけど、もう一度 しようか?」


そういや、予約した時に、何か言ってたかも…

マー君の事で、文句言ってやる!で頭 いっぱいになってて、聞いてなかったかも…


「…お願いします」

「オッケー、翔さん、ちょっと 待っててね」

「あ~…うん…」


「一応、ルールとしては、ハグ中は 喋らないってことと、連絡先は 教えない…これくらいかな」

「あ… うん…」


そうだったんだ… 文句… 言えないじゃん…

て、もお 言うつもりも ないけど…


「じゃあ、1分間ね♪」


そう言って 仲介者の 男子生徒は また 少し離れた場所に 移動した…


結局… キャンセルしてない…


直接… 櫻井くんに… 言う?


ハグする前だから 喋っても いいのかな…


いいや、お金も払ってあるんだし…1分だけ…


「大野くん?」と 櫻井くんに 手を差し出され…思わず、握ってしまう… 

ぐいって その手を引かれたと 思ったら、僕は 櫻井くんの 腕の中に 閉じ込められていた…

なんか… 僕…すっぽり 入ってる…

てゆーか… ハグって…気持ちいい…

それに 櫻井くん…何か 良い香りがする…

これ…僕も 櫻井くんに 腕 回して いいのかな…

!?

抱きしめられる腕が… キツくない…?


「… 苦…し…」

「…あ… ごめんっ…」

「ううん…」


あれ?ハグ中 喋っちゃ ダメなんだよね…?て、今のは しょうがない…?

櫻井くんの腕が 少し緩んで…


「…これくらいなら…大丈夫?」

「…うん…」


すごく優しい感じで 話すんだな…


櫻井くんの胸に顔を埋める…


やっぱり…気持ちいいな…


「「…………………」」



てか、これ… 1分 経ってない?


時間って… 誰が 計るの?


もしかして、僕?


それとも 櫻井くんが 言ってくれるの?


前の人、どうしてたっけ?


あ、仲介者の男子生徒が 教えてくれるのかも…


もお、僕のあとは 順番 待ってる人 いないし…


初めてだから、サービスしてくれてるとか?


でも、僕、リピーターには ならないよ?


あ… ちょっと… まずいかも…


なんか… ドキドキ してる…


これは… 


僕は、櫻井くんの 胸をそっと押した…


「大野くん?」


「あ…の… 時間…過ぎてた? 僕が 計るの…?」


「え? いや…時間は… 松潤?」


そう言って、櫻井くんは 仲介者の マツジュン?の方を 見た


「あ… ごめんごめん!時間 過ぎてた(笑)」

「何してんだよ…」

「……………」

「ごめんな、大野くん」

「えっ…?」


櫻井くんは、僕の胸ポケットに 何か 入れて…

ポンポンと 軽く 撫でて…


「またね、大野くん…」

「え…あ、うん…」


そして…


2人に ペコンと 頭を下げて、僕は その場をあとにした…


そういえば…さっき 胸ポケットに何か 入れてたよね…


ポケットに指先を入れ、当たったのを引き上げてみれば…


え…何で… 千円札…!?


初回サービス?いや、でも、僕、マツジュンて人の方に 渡したよね…


何で?  返された?




どおしよう…


僕は、櫻井くんとハグしたあの日から…


櫻井くんに抱きしめられた…あの感じが 忘れられない…


でも… フラれたとはいえ… 櫻井くんは… マー君の好きな人だし…


また… 予約してみる?


ハグ彼の… お客としてなら…


櫻井くんと 抱き合っても いいかな…?


けど、なかなか 予約することは 出来ない…


前は、マー君のこと文句 言ってやる~って、何か 勢いで 予約したけれど…


今は… ただ… 櫻井くんに…


あの腕の中に 閉じ込められたいって 思ってしまってる…


そして…


僕が 予約出来ない で いるうちに、櫻井くんがハグ彼を やめたって 聞いた…


あ~…じゃあ… もお 、ダメじゃん…


もお…櫻井くんに 抱きしめてもらえることは… 

ないんだ…


落ち込んで、俯いてると…



「大ちゃ~ん!」

「…マー君!」


…と、誰?


え…手、繋いでない?


見ると、マー君と 手を繋いでたのは、僕と同じくらいの背格好で、色白な男の子…


「この子ね、二宮和也っていうの!他校の子なんだけどね」

「あ…うん?」

「ニノと つき合うことになったから、大ちゃんに紹介 しとこうと思ってさ」

「え…」


え?何で…?

マー君、もお 櫻井くんのことは いいの?

ニノくんの 手前、聞くことも出来ない…


えっと… でも、2人は つき合うってことは…恋人同士だよね…


じゃあ… 僕…


櫻井くんの こと…


好きに なっても いいの…?


え?


好き?


そっか…



僕…櫻井くんのこと…



好きになっちゃってたんだ…