★新しいお話です…短編です



〈S〉


  「…もう いいよっ!」

「…何が いいの?」

「俺が、我慢すれば いいんだろ?」

「… 我慢… させてるの?」

「………………」

「…ずっと、我慢してたの?」

「…そうだよ」


「…わかった」


くるりと回れ右をして 玄関に向かう貴方…


腕を掴んで 引き止める


「どこ 行くんだよ?」

「外だよ…」

「こんな遅い時間に?」

「…そうだよ…」

「だめだ…行かせないっ…」

「離してっ…」


振り払われた手を もう一度 掴んで…リビングまで 引き返す


「俺が 出てくから」

「えっ…」


スマホと財布を ひっつかんで家を出た


ケンカして 腹が立ってるとはいえ、恋人を こんな夜遅くに 外に放り出させてたまるか…


さて…出てきたはいいけど…どこへ行こうか…


近所の公園のベンチに座って考える


冬じゃなくて 良かったよな…


スマホを出し、連絡先を登録してる画面をスクロールする…


誰かんとこ泊めてもらうか…マン喫で 夜明かしするか…


「……………」


あいつに… 連絡するか…


今の恋人と 初めてケンカをした日に…知り合った…あいつ…


あの日も ケンカして このベンチに 座って どうしようか 考えてたら…


『お兄さん、こんな遅くに 何やってんの?』て声 かけられて…


『はっ?え… 何?』


そいつは 俺の隣に座って…


『恋人と ケンカでも したの?』って…


何だ こいつ?って思ったけど… ふにゃあ とした笑顔に トゲトゲしてた気持ちも 少し 落ち着いて… 素直に 話せたんだよな…


そいつも 嫌な顔せずに、うんうんって 聞いてくれるもんだから…

結局 一晩中 そいつと話してて…気がついたら、夜が明けてたんだ…


そして、その後 家に戻って 恋人と 仲直りすることが 出来たんだよな…


どうする… 連絡してみるか…


画面に 番号を表示させ…少し躊躇うも…そいつの番号を タップしていた


呼び出し音が鳴り、すぐに そいつは出た


『はい』


「………俺」



少し 待ってると そいつが公園に現れる


「お兄さん、こんばんわっ」

「こんばんは」

「久しぶりだね」

「…そうだな」

「もしかして…また恋人とケンカした?」

「…うん」

「そっかぁ…」

「また… 話し 聞いてくれる?」

「しょうがないなぁ… お兄さんの気が済むまで聞いてあげるよ」

「ありがとう、サトシくん」

「んふふ…」


サトシくんは ふにゃあと 可愛く笑った…


そして…


俺は また あの日と同じように サトシくんに愚痴る… 恋人のことを…


「あの人は 全然 わかってないんだ…自分が どれだけ魅力的なのか…誘ってくるやつらは、恋人がいようが 関係なく あの人を…」

「それを、あの人は そんな訳ないって… 俺が思ってる程 自分は モテないって… いいかげん、自覚しろっつ~の…」


そして、また… うんうんって…俺の話を 聞いてくれる


「俺… 心 狭いのかな…」

「その…恋人のこと 信用できないの?」

「あの人のことは 信用してるけど…まわりの奴らは 信用できない…」

「そっか… 誘われて…恋人が 行かなければ いいの?」

「出来れば…行ってほしくない…けど、縛る事なんて出来ないし…だから、俺が 我慢するしか…」

「… 行くなって、言わないの?」

「え… そんな事…言えね~よ…」

「何で?」

「何でって… そう言って…嫌われたくないし…」

「嫌われるとは 限らないんじゃない?」

「でも…」


サトシくんは、俯いた 俺の顔を 覗き込んで…


「大丈夫だよ… 僕に話したみたいに 話せば、ちゃんと 分かってくれるよ」

「…本当に?」

「うん…」


あ… ヤバい…


「… んっ…」


俺は、引き寄せられるように 目の前の サトシくんの 唇を塞いでた

ああ… また やっちまった…


初めて会った あの日も…親身になって 話を聞いてくれる サトシくんに…こうして キスしてしまったんだ…


てゆーか、このサトシくんも…恋人に負けず劣らず 可愛い顔して…俺の好み ドンピシャな訳で…

て、俺、人の事 言えね~じゃん…最低じゃん…


あの日は サトシくんが…


『もお~… ダメじゃん…』

『ごめん…』

『今のは… 2人だけのヒミツに してあげる』

『え…』

『だからね、お兄さん 帰ったら 恋人と仲直りしてね』


て、別れたんだ…

けど… 今日は…


「もお~… また したぁ…」

「ごめん…」

「嫌だ…」

「え…」

「もう1回 して…?」

「… サトシ…くん…?」

「僕… お兄さんと… もう1回… んっ…」


俺は、また サトシくんの唇を塞いだ


「… サトシくん…」

「…お兄さ…」

「翔…」

「え…」

「お兄さんじゃなくて、翔 って 呼んで…」

「… ショウ… んっ… んっ…」


その後も、俺は 何度も サトシくんにキスをした


俺のシャツの胸んとこ キュッと握る サトシくんが 可愛くてたまらなくて…


そのまま、サトシくんを腕の中に閉じこめた…


「僕の部屋に…来る?」

「え…」


俺は、サトシくんに 手を引かれるまま 歩きだした…