〈智〉


  領…  領…  僕の半身…


ねぇ… 今 どこに いるの?


領… 笑ってる?


会いたいよ…


また…会えるよね…僕たち…


〔小学生の頃〕


『領、ねぇ 遊ぼうよぉ』

『サト、ダメだよ 宿題やってからね』

『あとで いいじゃん、ねぇ 領 おねが~い』

『もお…サトは…しょうがないなぁ…』

『遊ぶっ?』

『いいよ』

『やった~!領、大好きっ』

『僕も サトが 大好きだよ』

『何して 遊ぶ~?』

『そうだなぁ…』



          ★☆



  『領、起きてる…?』

『うん』

『一緒に 寝ても いい?』

『いいよ、枕 持って 下 おいでよ』

『うんっ』

『ほら、お布団の中に 入って』

『領…あったか~い』

『サトも…あったかいよ』



          ★☆



  『領っ!』

『サト…』

『何で…? 何で 領と 離れなきゃ いけないの?』

『仕方ないよ…父さんと母さんが 離婚するんだから』

『僕…領と 離れたくないよっ』

『僕もだよ… サトと離れたくない』

『領、やだっ…一緒が いいっ…離れないよっ』

『サト…』

『領は、僕と離れて 平気なのっ?』

『平気じゃないよ…』

『だったら…!』

『サト、今は…僕達は まだ 子どもだから…仕方ないんだよ』

『やだっ!領と 一緒が いいのっ…』

『サト…聞いて?』

『… 何…?』

『大人になったら、僕、サトのこと 迎えに来るから』

『…本当?』

『うん、そしたら その時は 一緒に住もう』

『約束だよ?領』

『うん、約束しよう』



          ★☆



  『領~~~!』


居ない… 


何で… 黙って 行っちゃったの?


ちゃんと…またねって 言いたかったのに…


領… 領…!


けど… 僕たちは きっと また 会えるよね…?


領と僕は、双子だもん…


離れても…ずっと 会えなくても…


僕は領で…領は僕だから… わかるんだ…


それに 約束 したもんね…


大人になったら、迎えに来てくれるんでしょ?


一緒に また 住むんだもんね?


僕… 待ってるよ…!


領…それまで… また 会える日まで…


僕のこと 忘れないでね…!


絶対だよ… 領…



         ★☆



  「領っ…!」


ガバッ…


あ…夢か…  


小学生の頃の 夢だ…


まだ…父ちゃんと母ちゃんと領と僕…


4人で暮らしてた頃の…


懐かしい~… 何で、小さい頃の 夢なんか…


普段は… 領のこと 考えないようになってたのにな…

と 言っても 忘れた訳じゃない…


小、中学生の頃 みたいに 毎日 毎日は 考えなくなったってだけで…


僕は… いつか、領が 迎えに来てくれるって…


今も…信じてるよ…


「あ、起きなきゃっ…!」


今日は、高校の卒業式…


学校に 行く前に 母ちゃんのとこ 行かないとね


いつもは 学校帰りに 行くんだけど…


今朝は 面会時間の 前だけど、特別に 会いに 行くのを 許可してもらってる




コンコン!  ガラッ


「母ちゃん、起きてる?」


「おはよう、智…起きてるわよ」


「おはよ…あ、起き上がらなくて いいよ」


顔がよく 見えないからって、母ちゃんはベッドの背もたれを上げる


背中に 枕を挟んで、すぐ横に 椅子を出して座る


「智、卒業 おめでとう」

「んふふ…まだ 式は これからだけどね」

「卒業式、行けなくて ごめんね」

「いいよいいよ」

「領も… 卒業式なのかしらね…」

「母ちゃん…」


父ちゃんと母ちゃんが離婚して、父ちゃんは領を連れて 家を 出て行った


それから、2人には 会えてない…離婚の原因は教えてもらってない…


ただ… 父ちゃんと母ちゃんは 時々 連絡は取り合ってたみたいで、その時に 僕と 領の 近況報告をしたり 聞いたり していたらしい…


母ちゃんは、元々 体が 弱くて、僕が 高校に 入学した あたりから 入退院を繰り返すようになった…


僕は 高校を 辞めて 働くつもりでいたけど、生活費や養育費…あげくは 母ちゃんの入院費まで…


父ちゃんからは、充分過ぎる程の お金が 毎月振り込まれていたらしい…


おかげで 僕は 高校を辞めずに 済んで…今日、晴れて 卒業式を迎えれると いう訳だ…


「あ、じゃあ 僕 行くね」

「智、待って」

「え?」

「これ…智の、渡しとくわ」

「…何これ?通帳?僕の?」

「もう、貴方も 高校卒業するんだから…これは自分で管理しなさい」

「え…でも…」

「それは、智のだから…自分の為に 使いなさい」

「わ… わかった」


僕は、渡された 通帳を 鞄にしまう


「いってらっしゃい、智」

「いってきます!」


わ…時間 ギリギリかも…!


僕は、自転車に 股がり、学校まで 急いだ…



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


★しれ~っと 新しいお話 始めちゃいました…


何か この頃 少し 切ない系のお話が3本ほど浮かんでて…

切ない系って 苦手だし、途中で断念するかもって スルーしてたんだけど…

どれか 文章にしないと また 他の お話の妄想ストップしちゃうな…と 3本中、比較的 切ない度合いが 低そうな このお話を 少し 書くことにしました…


まだ継続中のお話があるのに、また悪い癖が出ちゃったな~…って 思いましたが…


下書きに 入れたまま 放置もなぁ…と 上げることにしました…


不定期で…(^^;


本当に 申し訳なく思ってます…!


ほんわかしてないですよね…


ごめんなさいm(__)m