〈O〉


  お店の前に着いて、翔くんがドアを開けてくれて 先に入るように促してくれる

「ありがとお」

「ん」

店内に入り…

「「こんばんは~」」

「「いらっしゃいませ~」」

ニノとマー君が 笑顔で迎えてくれる

「こちらへどうぞ」

「カウンターで いいよね?」

「うんうん」

L字になってるカウンターの角の席の椅子を 翔くんが 引いてくれて そこに座る

L字の 左の方は 花が飾ってある…胡蝶蘭かな?
キレイだなぁ…

僕の右隣に 翔くんが座ると

「やっと 二人で 来てくれたね~」って、マー君がおしぼりを渡してくれる

「やっとって…まだ 智くんが越してきて半月 経ってないもんなぁ?」

「あ…うん」

そっか…まだ 半月 経ってないんだよね… 翔くんとは 同じ職場だし、毎日 ご飯一緒に食べてるし… ニノとマー君も スーパーで よく 顔を合わせるから…何か もっと経ってる気がしてた

「あ、そっか、翔ちゃんとこ泊まりに行ったのそんなもんか」

「あれから、まだ半月 経ってないんですね」

「もう…だいぶ 前のことのように感じるな…」

「うんうん」

「あ、何 飲みますか?」

ん~ やっぱり…

「「とりあえずビールで」」

翔くんと声が揃って、思わず 顔を見合わせて 笑ってしまう…

「仲良しさん♪」

マー君も くふふって 笑ってる

「はい、どうぞ」って、ニノが キレイに泡立ったビールの入ったピルスナーを前に置く

「ありがとお」

何か、BARで 出てくるビールってお洒落~…
居酒屋とかだと ジョッキだもんね

あ、4人で乾杯したいな…って思ったら、

「ニノと相葉くんも飲んでよ」って 翔くんが…

「では、1杯だけ いただきますね」

「「「「カンパ~イ!」」」」

カチンカチンと グラスを合わせる

暫し 無言のあと…

「うんめ~っ」
「うんま~い」
「生き返る~」


「マー君、お通しは?」

「あ、忘れてた!」

カウンターの奥の調理場かな?引っ込んだと思ったら すぐ出てきて…

「どうぞ」って 小鉢が置かれる

「蓮根のきんぴら?」

「そそ」

「BARで きんぴらって…」

「でも、美味しそ~」

「何でもアリだな、この店は…前はキムチ出てきたし」

「へぇ…♪」

「美味しかったでしょ?」

「まあ、旨かった」

マー君は 料理上手なんだなぁ… もっと レシピ教わって、翔くんに食べさせてあげたいなぁ…

「大野さん」

「え?」

「また レシピ教わりたいって 顔してます」

「えっ、嘘?」

僕は 両手で 頬を押さえる

「いつでも 教えるからね♪」

「作って、翔ちゃんに食べさせてあげて下さい」

「え…」

「楽しみだな、作ってくれる?智くん」

笑顔で 僕の顔を覗き込む翔くん

「うん、作るね…」


何か…頬が 熱い気がするのは…

ビールのせいだよね…?





(S〉


  「智くん、次は何にする?」

「え~と…」

ドリンクメニューを 智くんの目の前で 開いて見せる

う~ん…て、 見ながら 悩んでる顔も可愛い♪


「翔くんは、いつも 何飲んでるの?」

「俺?…何だろうな…」

「翔ちゃんは 何でもかんでも飲みますよ」

「え…」

「何でもかんでもな訳ないだろ」

「前に 日本酒 買いに行かされたけど」

「1度だけだろ?」

「買いに行かされたの、日本酒だけじゃないからね?」

「そうだっけ?(笑)」

「都合悪いこと すぐ忘れるんだからっ」

「んふふっ…」

「え?何?」

「ううん、何か 言い合いが面白くて…」

「言い合いって…」

「仲良いんだね♪」

「ええっ?」


「あ、僕 またビールで」

「じゃあ、俺も」

2杯目が 置かれる

「翔くんは お酒 強いの?」

「ん~…普通かな」

「翔ちゃんは酒豪だよ…!」

「ザルです ザル!」

「そんなことね~よっ」

「んで、飲みすぎて次の日 顔が浮腫む!」

「今日は 飲みすぎね~しっ」

「大ちゃんは?飲める方?」

「どおかな…眠たくなっちゃうかな…」

「そうなの?」

「あ、でも 今日は お昼寝したから 大丈夫だよ…たぶん…

「ま、寝たら 翔ちゃんが おぶってくんで♪」

「えっ…」

「それは、お任せください♪」

「んふふ…じゃ 寝たら お願いね」


2杯目が 空きそうな頃に…

「僕、ちょっと トイレ」

智くんが トイレに立つ

「あ、次 どうする?」

「翔くんと一緒でいいよ」

智くんが 奥のドアに入ってったところで……

「ハイボール2ね」

「畏まりました」

言いながら 、ニノが ニヤニヤ 俺を見る

「何だよ?」

「まだ… は、取れました?」

「え?」

「もう… そういう 段階でしょ?」

「何 言ってるんだよ…」

智くんのことか…

「独占欲が 態度に出てますよ」

「は?」

嘘だろ?俺 何も してね~だろ…

「え?翔ちゃん、自覚なし?」

「俺…何かした?」

「… 大野さんの座ってる椅子の背もたれに、こう手を かけて…」

「え…」

「足置きにも  片足 乗せてんじゃない?」

「マジ…?」

「こう… 大ちゃんを 誰にも 触らせないぞ!的な?」

「はたから見たら恋人同士ですよ」

「距離、近い近い♪」

「マジか…」

「でもさ、大野さんも 満更じゃない感じ?」

「え…?」


「ただいま~」

「あ、大ちゃん おかえり~」

ニノが 智くんに おしぼりを渡す

おしぼりで 手を拭きながら…

「何か…僕のこと 話してた?」

「へっ?」

「大野さんって 聞こえたよおな…?」

「あ…え~っと…」

「…大野さんも ハイボールで 良かったかなって話してたんですよ」

「あ、好き好き、ハイボール」

ホッ… ニノ 、ナイスアシスト…!


ん?ニノの ニヤニヤした目線を辿って ハッとする…

智くんの椅子の背もたれのとこに 腰を抱くように 腕を乗せ、足も 膝同士が つく程で…

隣を見れば… ふにゃんと笑う 智くんの顔が…

すぐ間近に あった…