〈O〉

  「智君は…どこの 高校行きたいと思ってる?」

「え…?行きたいとこ…?」

「そ、偏差値とか関係なしで、ここ行きたいって思うとこ」

「あ~…えっと…星嵐高校…かな」

「えっ…」

「…あ、高望み しすぎ?」

「いや…そこ、俺も 志望校」

「えっ…?」

なんで…翔君は…もっとレベル高いとこ 行けるはずなのに… 僕が 行くには かなり 頑張らなきゃ ダメだけど…

「そっか…智君も 星嵐かぁ…」

「でも…僕は、志望してる訳じゃなくて…」

「何で?」

「偏差値 考えたら…僕は…もっと…」

「行こうよ、星嵐」

「え…」

「何で 星嵐 行きたいって 思ったの?」

「だって…電車で1本だし…男子校だし…」

「あ、俺も それ」

「え?翔君も?」

「通いやすいって 重要じゃない?」

「ああ…うん…」

「それに、レベル高いとこ行って 必死についてくより、無理なく行けるとこが いいかなって」

「でも…僕は 星嵐だと…ちょっと 高望みかもって思うけど」

「でも 行きたいんでしょ?」

「…出来れば」

「行けるよ」

「え…」

「智君、俺と 星嵐 行こう」

「翔君…」

たぶん…翔君が行くには だいぶ ランク落としてると思うけど… けど 一応 進学校では あるんだよね

僕…頑張れば 行けるかな… 高校も… 翔君と一緒に 過ごせる…?

「智君…」

「うん…僕 頑張ってみるよ…!」

「本当?」

「うん…来週の個人懇談の時 星嵐志望って 先生に言ってみるよ」

「うん…!」


放課後……


「へぇ…お前らも 星嵐なんだ」

「岡田君も?」

「うん、俺もそこ狙ってる」

「岡田っちは 共学 行くかと思った」

「何でだよ?」

「男子校で いいの?」

「男子校じゃないと、あいつ 心配するからな」

「……今回の彼女 続いてるよね」

「まあな…」

「…大事にしてんの?」

「当たり前だろ」

「でも… もお してるんでしょ?」

「え…… してね~し…」

「嘘でしょ?岡田っちが?」

翔君と 思わず 顔を 見合わせてしまう……

「お前ら、俺の事 何だと 思ってんの?」

「だって…春休みの時に 鬼畜発言してたろ?」

「あ…言ってたね」

「だから、結局 してね~んだって」

「マジか…」

「とっくに 済ませてると思ってた…」

「俺も、あの時は そのつもりで いたけどな…」

「あ、彼女に拒否られた?」

「そんなんじゃね~わ」

「じゃあ、何でよ?」

「ん~…何か お前ら 見てたら…」

「へっ?」

「何で…俺ら…?」

「え… 何でって…」

岡田っちが 僕と翔君のことを 交互に見る…何?

あ… 岡田っちには 僕の 翔君への 気持ち バレてるのかもしんないな…

翔君と 一緒に 帰れなかった時も 落ち込んでたの 分かってたぽいしなぁ…

「あ、じゃあ 俺 行くわ」

「うん、またね」

「またね」




〈S〉

  その日の夜…… 

岡田君から 着信があった…

「はい」

『よお…』

「どうしたの?」

『櫻井、 お前 まだ 言ってないの?』

「え?」

『大野に…』

「智君に…何?」

『まだ 告ってね~のか 聞いてんだよ』

「えっ?なっ… 何で…… えっ…?」

あ…… そっか… 岡田君に 智くんの 写真 貰ってるんだもんな… でも…俺 誰にも 言ってないのに…

『何で 言わね~の?』

「だって…智くん 好きな人 いるし…俺は…その人の 代わりだし…」

『は?大野に好きなやつ?お前以外にか?』

「え……?」

『あ…いや…』

「岡田君…?」

『聞いたのか?大野の口から 好きなやつが いるって…』

「え……」

そういや… 智君の 口から はっきり 岡田君が 好きって 聞いた訳じゃないな…

でもさ… 前に 岡田君と先輩が帰ってるの…凄く切なそうに 見てたんだ…… 

あの目は…絶対 恋してる人の 目だった…

『櫻井』

「何?」

『告白するかは 置いといて…』

「うん…?」

『大野に 1度 聞いてみな』

「え…?なにを…?」

『お前が 思ってる 大野の 好きなやつ…本当にそうなのか 聞いてみろよ』

「智君に…?」

『それくらい 聞けるだろ?』

「ああ…うん…」

『じゃあな』

「あ… うん、じゃあ…」


え……何… 智君に… 岡田君のこと 好きなのか 聞けってことか…

まだ… 告白する訳じゃないから… 聞いてみても いいのかな…

智君… 答えてくれるかな……



次の日……

どうやって 聞こうか、その事ばかり考えてた…

朝は 聞けなかった… 岡田君のこと 好きだよなんて 言われたら……本人の口から 聞いたら、さすがにヘコむ…

授業中も どう聞こうか考えてて 集中出来なかった…

チラリと 智君の方を 見たら…

え…目が合った… というより… 智君、俺のこと 見てた? いや… 偶々か…

ハッとしてたけど 小さく 微笑んでくれた…

俺も 笑みを返して… ゆっくり 前を向いた…



昼休憩の時も… いつもみたいに 話せない…

普通に普通にって 思えば思うほど…何か 意識してしまって…

あれ? 俺、いつも どんな感じで 話してたっけ…?

岡田君が…

「何か… 櫻井 変じゃない?」

あんたの せいだよ!と文句の 1つも 言いたいところだったけど…

「そんなこと ないよ」と 返す

智くんも 心配そうに…

「体調 崩してる訳じゃないよね?」って…

「ないない!」

「…それなら いいけど…」

あ~… 俺 智君に 心配かけてる?

岡田君に 視線を 移すと、ニヤリと笑った…

この人は~… ねぇ… 俺の背中を 押してくれてるの? それとも 楽しんでるの…?

少なくとも 昨日の電話は… 冗談とかじゃなかったと思う…

告白はムリでも… ちゃんと 智くんに 確かめてみよう…!