〈S〉

  岡田君の家に 行った以来…

俺達は キスを するようになった…

あの日…岡田君の家から 腕を引かれ…いつもの公園に寄った

暫く 2人とも 何も 話さずに…ただ 手を繋いで、ベンチに 並んで 座っていた…

初めては… 好きな相手と…

俺は…… 俺は 智君と キスがしたい…

でも…智君は…俺じゃ ダメ…?やっぱり…初めては…代わりじゃ…ダメだよね…?

智君の横顔を 見つめていた…長い睫毛…キレイな鼻筋…少し 尖った 小さい唇…

ねえ…智君…俺… 智君と キスしたい…

ダメかな…?

気づいたら、智君も 俺のことを見ていて…

だんだん…顔が 近づいて…自然と 俺らは 、唇を重ねていた…

そのキスが…忘れられなくて…また したいって…思った

次の日、俺ん家に 智君が来た時も…その次の日 智君の家に 行った時も…俺達は キスをした…

どちらからともなく…触れるだけの キスを 何度も する…

智君とのキスは 甘くて柔らかくて…ずっと していたくなるんだ…

キスをする度に… 好きって気持ちが 募っていって…少しだけ 泣きそうになる…

俺…この先… こんなに 人を 好きになること ないんじゃないかな…

智君、ごめんね… 智君の大事なファーストキスを 奪ってしまって…

ねえ…岡田君のことは もう やめて…俺を 好きになってよ…

そしたら…智君のファーストキスの 相手…好きな人に なるでしょ…?

智君… 俺…好きになってもらえるように 頑張るから… いつか…キス以上の…智君の初めても…俺に くれないかな…

ねえ…いつか… 俺のこと 好きになって…!


「翔君…」

「ん?」

「3年…同じクラスに なれたら いいね」

「そうだね」

「もし、なれなくても…一緒に帰ってくれる?」

「もちろん!毎日 智君のクラスまで 迎えに行くよ」

「うん…!」


「明日も 会えるかな?」

「うん…明日は どおする? 僕ん家 来る?翔君の家?」

「どっちでも いいよ…俺ん家 来る?」

「うん…翔君の家 行く…」

こうやって…毎日 会って…話して キスをして…こうしてると… 俺と智君は 恋人同士なんじゃないかって…

そんな 錯覚に 陥ってしまう… 智君も そう 思ってくれたら いいのに…

「智君…」

「ん…」


そして 俺達は 今日も キスを 重ねる…




〈O〉

  いつもの公園で 翔君と 初めて キスをした日から…

僕たちは 会うたびに キスをしてた…

いつもの公園のベンチでも…翔君の家でも 僕の家でも…2人きりになると 僕たちは キスをする


翔君… 翔君も 僕と 同じ 気持ちなの…?

気づくと 2人の距離が 近くなってて…目を閉じると 翔君が キスを くれるんだ…

翔君との キスは ドキドキして…気持ちが良くて… 何度も何度も したくなるんだ…

翔君とキスをすると… 好きって 気持ちが 大きくなっていってる気がする…

翔君も そおだと いいな…

翔君の その大きな目に…僕しか 映らなければ  いいのに…僕だけを映して…僕だけを見てよ…

何か…だんだん 欲張りに なってるみたい…

でも…これだけ 毎日 会って… 会うたびに キスをしているのに…

翔君が 僕のこと どお思ってるのか、ちゃんと聞けないでいる… 僕も 翔君のこと 好きなんだって…言えないで いる…

はっきり させたいような… このままでも いいような…

でも…僕は 願っているんだ… 

翔君が…僕と 同じ気持ちで ありますようにって…ずっと…一緒に いられますようにって…


もうすぐ 春休みも 終わっちゃうな…

3年は、翔君と 同じクラスに なれたら いいのになぁ… そしたら、お休み終わっても 一緒にいられる時間 あるもんね…

「智君…」

「ん…」

あ…来る…

今日も 僕は 翔君との キスに 夢中になる…

翔君…もっと…ずっと キスしてたいな…

翔君… こんな風に キスするの…僕だけだよね?


そして…

幸せな 春休みが終わり、新学期が始まる…



朝、いつもの 公園で 待ち合わせて、学校へ向かう…

「同じクラスかな…」

「どうかな…」

「何か、クラス分け 見るの 怖いな…」

「そうだね…」

学校の門を くぐり、クラス分けの貼り出しがしてある 昇降口に 向かうと…

岡田っちが 僕たちの方に 歩いてきた…

もう 見たのかな…?

「おはよお、岡田っち」

「おはよう、岡田君」

「よう!1年間、よろしくな!」

えっ…どっち? 僕か 翔君… 岡田っちと 同じクラスなの?

翔君と 顔を 見合せ

「どっち?」って 聞くと

「2人に 言ったんだよ」って…

えっ えっ? もしかして…

翔君と 2人して 昇降口に 走って 貼り出されてるクラス分け を見上げる

3年A組… 僕の 名前の すぐ 横に 岡田っちの 名前… その数人 あとに 櫻井翔 って 名前もあるっ!

「翔君!」

「智君、やったね!」

「うんっ!」

「よろしくね」

「よろしくねっ」

同じ クラスに なったことを 喜んでたら…

「早く 教室 行こ~ぜ~」って 岡田っちが…

むぅ… 岡田っちも 同じクラスかぁ…

まぁ、いいか…

翔君と 同じ クラスに なれたんだもん…!

「早く~」

「もお~… 翔君、行こっ」

「うん!」

翔君と 2人で 岡田っちを 追いかけた…