面白い野郎しかいないグループ


 アメリカのメタルバンド•Toolが2001年に発表した3rdアルバム。メタルジャンルにおいては随一の芸術性を持つ作品だ。


 1990年にロサンゼルスで結成。中心人物であるボーカル Maynard James KeenanRage Against the Machineの1stアルバム収録の Know Your Enemy にも参加した経験がある。奇抜なメイク・衣装やパフォーマンスで知られ、その見た目に違わず若い頃に思いつきで陸軍に入隊したりステージに乱入したファンをブラジリアン体術でねじ伏せたりと珍妙な逸話がある人物だ。グループそのものもライブでの派手な映像表現や特殊効果に定評があり、只者ではない空気を醸し出している。彼の他にも映画の特殊メイクの経験があるギター Adam Jones、元羊飼いのベース Justin Chancellor、元レコード会社社員のドラム Danny Careyと面白い経歴のメンバー揃いだ。


 ボーカルのウィスパーボイスとともに暗澹に満ちた「静」を保ちながらもその中に激しくビートを刻む「動」を挟む、これを交互にすることで躁鬱的で無常感あふれる独特な世界観が構築されている。トラック1 The Grudge からいきなり重苦しくダークなギターリフとドラムロールによる乱高下が繰り広げられる。特に6:59あたりからの24秒にも及ぶKeenanのヒステリックなシャウトには度肝を抜かれる。Meshuggahのレビューの時にも述べたような混沌と安寧との逆転劇がこの作品でも体現されているわけだ。


 そしてこの「静」と「動」だが、それぞれで異なるアプローチをかけてただ暗い作風だけではないよう仕立てている。トラック6 Parabol ではこれまでの陰鬱な雰囲気とは違うフュージョンのような幻惑的な「静」が展開されたと思ったら、トラック7 Parabola では歪み軋むサウンドのバイオレンスな曲となる。続くトラック8 Ticks & Leeches ではこれまた打って変わってアップテンポでハイテンションな曲となる。アグレッシブながらもエスニックな印象も感じる軽快なタムタム等のパーカッションが印象的なトラック10 Disposition やトラック11 Reflection も良い。作品の随所に差し込まれる変拍子も、重くなりすぎないための清涼剤のような役割を果たしている。


 緩急に富んだ構成で過激になりすぎない工夫が施されおり、それでいて軋んだビートやシャウトがしっかり刻まれ満足度も高い。そんな鮮やかで破壊的なグラデーションが魅力な傑作である。